第150話:首都を目指す者達
明けましておめでとう御座いますm(_ _)m
リアース歴3237年10の月30日。
エターナの町の冒険者ギルドにて・・・
城塞都市バニングでバニング伯爵が首都へ向けて出発する丁度同じ日。
ここにも首都に出発する一団がいた。
「そろそろ出発する様でござるぞ!お前達はいつまで喋っているつもりでござるか?
サッサと持ち場に着くでござるよ」
ルークの二天一流の師匠であるクロード・スザルが、未成年2人を叱り飛ばす。
「ハ・ハイ、師匠!」
「ス・スイマセン剣聖様!」
頭を殴られない様慌てて逃げ出した美少女、嫌、少年の名はジーク。
ルークと同じ孤児園で育ったルークの義弟であり、二天一流ではルークの弟弟子になる。
ルークを兄と慕う、嫌、それ以上に深く慕う変人である。
もう一人慌ただしく動き出した少年の名はマシュー。
アイシャと同じ孤児園で育ったアイシャの義弟であり、ジークと違ってルークを普通に兄と慕う、ごく普通の少年である。
彼らはこれから荷商隊の護衛として首都へ向けて出発する所である。
「冒険者見習いであるお前達が、荷商隊の護衛任務を出来る様に頼み込んでくれたギルド長のためにしっかり働くでござるよ!」
「「ハイ!」」
「ウンウン、その通りだ!予定よりも出発が数日遅れているんだから、皆の邪魔にならない様に、推薦して下さったギルド長のためにしっかりと働けよ」
クロードの隣りでしたり顔で頷いている男の名はフォッカー。
B級の冒険者であり、ルークを弟の様に可愛がっている。
最近、冒険者として名が売れて来たフォッカーは、来年の初めに行われる天下一精霊武術大会に参加が決まっていた。
大会に間に合う様に、クロード達と共に荷商隊の護衛をしながら首都を目指す。
「何を言っているんだか!出発が遅れた理由は、フォッカー師匠がルタの村で女を口説いていて、なかなか帰って来なかったからじゃないか」
「マ・マシュー!デタラメを言うのは止めろ。
俺は剣聖様の下で稽古をつけて貰っていて帰って来るのが遅れただけだ」
「デタラメを言っているのはどっちなんだか!
孤児園のアンジェさんって人をしつこく口説いていたそうじゃないですか?」
「ななななっ!お前が何故それを知っているんだ?」
「ジークから聞いて何もかも知っているんだよ!
俺の稽古を放り出して女の尻を追いかけていたとは、我が師匠ながら情けないよ全く。
ルークの兄貴の爪の垢でも飲ませてやりたいよ」
「テ・テメェ、師匠に向かってその口の利き方はなんだよ!」
「だったら師匠らしくしろってんだ、この女垂らしめ!」
「グヌヌヌヌっ!」
「フォッカー殿もマシューも師弟喧嘩はその位にしておくでござる。
出発が遅れるだけでござるよ!」
「「申し訳御座いません剣聖様!」」
「バカ弟子一人の面倒を見るだけでも大変なのに、この旅は苦労しそうでござるな」
「バカ弟子はないですよ師匠~」
「だったらもう少し真面目に刀術の稽古に励むでござるよ!
このままでは、いつまで経っても免許皆伝は出来ないでござるよ」
「ハ・ハイですぅ~!」
「ハァ~、ルークは良き弟子であったの~。ルークは元気にしているでござるかな?
今度の大会で会うのが楽しみでござるなぁ」
クロードとジーク、マシューが首都を目指す本当の理由は、天下一精霊武術大会に参加するルークの応援のためである。
ついでにフォッカーの応援も・・・
「俺はついでかよ!」
リアース歴3237年 11の月14日。
城塞都市ルザクのロダン商店にて・・・
「トンカラ、申し訳ないがしばらくの間留守を頼みますね」
「任せておくでげすよズラやん。
ズラやん達が居ない間もしっかりと稼いでおくですから安心するでげす。
ズラやんこそ、お嬢の子守りしっかりと頼むでげすよ」
「ハァ~、それを言われるのが一番辛いですね。気が重いです」
「が・頑張るでげすよ!それとオラの代わりにしっかりと鉄壁殿の応援を頼むでげすよ」
「それは任せて下さい!トンカラの分もしっかりと応援して来ますから」
ダリアとズラビスは、ルークに頼まれたいろいろな荷物を届けるために首都に向かう。
ついでに天下一精霊武術大会に出場するルークの応援も兼ねてであるが。
「お前達、子守りとは随分失礼じゃないかい?これでも私はれっきとした大人だよ」
「「精神年齢はお子様のままです!」でげすよ!」
「ムキ~~~!2人してなんだい」
「まぁまぁ、ダリア嬢もスラビス殿もトンカラ殿もその辺で・・・」
慌てて口喧嘩の止めに入るフィン。
最近では、この3バカトリオの仲裁役がスッカリ板に着いて来たフィンである。
「ノエルも申し訳ないけど、しばらくの間頼むな!」
「お任せ下さいフィン様!こちらの事は気にしないで、折角の新婚旅行なんだから楽しんで来て下さいよ。姉さんを頼みます」
先日、フィンとノインは教会で結婚式を挙げて来たばかりの新婚さんである。
新婚旅行も兼ねて天下一精霊武術大会に出場するルークの応援に向かうのだ。
「分かっているさ!」
「有難うねノエル!」
「折角だから赤ちゃんでも仕込んで貰うと良いさ。皆もそう思うだろ?」
「もうバカ!」
「「「「「ハハハハハっ!」」」」」
ダークエルフ達の間で笑いが起こる。
離散していた者達が少しずつフィンの下に集まって来たのだ。
ズラビスのお陰で、ナの国で奴隷として捕まっていた者、エルフの里に逃げ込んだ者、他のダークエルフの村に身を寄せていた者、ネの国に隠れ住んでいた者など9割方消息が分かり、その内の20人ほどがフィン達と合流したのだ。
歳を取っている者の多数は新たな環境を嫌って他のダークエルフの村に残った。
その代わりに他の村の若い者がリの国の状況を聞いて、フィンの下に身を寄せようと云う者が増えて来ている。
ダークエルフ達に新しい風が吹き始め出したのだ。
ダリア一家とダークエルフ達は良い関係を気付き上げている。
トンカラを中心としたミスリル鉱石の発掘組と、ズラビスを中心とした裏の情報屋を商う情報組、そしてダリアが中心とした店での商品の仕入れや販売を行う店舗組とダークエルフ達が適材適所でそれぞれの手伝いをしているのだ。
ルークを通じて知り合った2組だが、今ではシッカリとした信頼関係が出来上がっている。
今はお互いに協力しあって、ロダン商会の発展のために頑張っている最中なのである。
「では行って来ますね。後を頼みます!」
「頼んだよ!」
「済まないが行って来る!」
「後の事お願いね!」
ズラビス、ダリア、フィン、ノインが店の扉を開けた。
店の前には積荷を沢山積んだ1台の馬車が停まっている。
ズラビス達は、これからルザク伯爵率いる朱雀騎士団と合流して首都へ向かうのだ。
ズラビスは遠く北西の空を見上げる。
これから向かう先で、久しぶりに友と再会するのだ。
彼の心は高揚感で満ち溢れていた・・・
第6章は1月末か2月初めになる予定で~す^^ノ