第148話:大喜び
5章のラストです
リアース歴3237年 10の月20日19時。
海洋都市シーラとウラの町の中間付近にて・・・
「夕食を食べる前に皆に報告したい事があるの!」
ナポリタン風うどんをフォークに絡ませ、いざ口へ!と云う瞬間にアイシャからのストップが掛かる。
お腹が悲鳴を上げているのに、このお預けは非常~に厳しい~~~!
リンはフォークを口へ入れる寸前の状態で固まり、お預けの食らった犬みたいに涙目になって、フォークを持つ手ががプルプルしているよ。
「ど・どうしたんだいアイシャ?」
「お・奥様、何か御座いましたか?・・・」
「母様どうしたの~?」
「キュキュ~!」
(お腹空いたよ~!)
皆の視線がアイシャに集中する。
リンは相変わらずフォークを持ったままプルプルしています。
リンよ、一旦諦めてフォークを置きなさいってば。
「あ・あのね!じ・実は・・・#$%&#&$・・・」
顔を真っ赤にしながら話し出すアイシャ。
だけど、声が段々小さくなって行き、最後の方は何を言っているのかサッパリ分からないです。
「えっ、何だって?最後の方は何をいっているのか分からないよ」
「だ・だから~・・・#$%&#&$・・・」
ダメだこりゃ!
何を照れているの分からないけど、全然聞こえましぇ~ん。
「全然聞こえないよ!」
「#&%&が、出来たの!」
「えっ!何が?」
「赤ちゃんが出来たの!」
アイシャの突然の大声に場がシーンとなる。
へっ!今、何とおっしゃいましたアイシャさん?
赤ちゃんが出来たとか聞こえたのですが?
・・・・・
な・ななな・何ですとぉ~~~!
「ほ・本当なのアイシャ?」
「うん!赤ちゃんが出来ちゃったの・・・う・嬉しい?」
「う・ううう・嬉しいに決まっているじゃないか~~~!
おめでとうアイシャ。嫌、おめでとうは変か、有難うアイシャ」
「よ・良かった~!喜んでくれるか心配だったのよ」
「喜ぶに決まっているじゃないか~」
アイシャは薄っすらと涙を浮かべている。
どうして俺が喜ばないと思ったのかな?
そんな訳ないじゃないか。
『奥方は、赤ちゃんが出来たら旅はしばらく出来なくなるから、主が喜ばないんじゃないかって心配で悩んでおったのじゃよ』
えっ!そんな事を心配していたのか。
「アイシャ、旅は別に急ぐ必要もないだろ?
子供達が自立した後だってゆっくり出来るんだからさ!」
『だから言ったじゃろ!主は絶対に喜ぶから心配ないって』
「その通りだったわね。フフフフフっ、本当に良かった!」
何だよもう。
俺に言う前に鉄人君に相談していたのかよ~。
ちょっとだけ嫉妬しちゃったぞ。
「おめでとう御座います奥様!」
「母様に赤ちゃん?」
「そうだぞバーン!お前に弟か妹が出来たんだ。お前はお兄ちゃんになったんだぞ!」
「僕がお兄ちゃんに?」
「そうだお兄ちゃんだ!喜べバーン、家族が増えるんだぞ」
「や・やったー!僕はお兄ちゃんになるんだ~」
「これからはお兄ちゃんとしてしっかりして貰わないと困るぞバーン。
もう母様に甘えてばかりじゃいられないぞ~」
「う・うん、分かった!僕、頑張る・・・」
「良いのよバーン!彼方はまだ小さいのだから無理をしないで甘えて来なさい。
母様はお腹の子もバーンも平等に甘えさせて上げるわよ」
「母様・・・」
バーンはアイシャにすがり付く。
相変わらずバーンは甘えっ子だなぁ。
お兄ちゃんとしてしっかりするのは、かなり先になりそうだな。
「こうなると、貴族に叙勲される事になって正解だったかもなぁ。
ご老公様に頼んで首都に家を用意して貰おうか?」
「首都に家を?」
「そうさ、出産、子育てを考えたら治安の良い所の方が良いだろ?」
「確かにそうだけど・・・貴方、首都で何か公務の仕事でもする気なの?」
「まさか!公務の仕事なんて絶対しないよ。
一度公務の仕事に着いたら自由が無くなるからね」
公務の仕事なんて頼まれてもしないもんねぇ。
肩苦しいのは絶対嫌じゃ。
「そうよね!良かったわ」
「貯金は沢山あるんだし、無理しないでのんびりポーションでも売って暮らそうよ。
あっ、聖の術と薬学を活かして、首都で治療院を開くなんてどうかなぁ?」
「それは良いわねぇ。聖の術なら私が手伝えるし、薬学とかはリンちゃんが手伝えるし、病気の人を助ける仕事なんて素晴らしいわ」
「怪我人をしたイケメンに一目惚れをする私・・・私の熱心な看病で彼も又私に恋をするの・・・そして2人は燃える様な恋をして・・・ジュルリ!」
お~い、壮大な妄想が駄々漏れだぞ~。
そう云う事は声に出さない様にしましょうねぇ。
俺もアイシャも引いちゃったぞ~。
「まぁ、仕事の事は後でゆっくりと考えるとして、今はアイシャが元気な赤ちゃんを無事に産める様に話し合おう」
「そうですね主様!」
「うん、僕も頑張る!」
「キュキュ~!」
(僕も~)
『吾輩も微力ながら協力させて貰うぞい!』
「み・皆、本当に有難う!」
俺達は一致団結してアイシャの出産へのサポートを誓うのであった。
首都へは年内中に着けば良いのだし、アイシャとお腹の子の負担にならない様に皆で協力して旅を続けて行こう。
歌一座をしながらの旅は、たぶんこれが最後になるであろうから。
夜空を見上げると、綺麗な満月と満天に輝く星々が見える。
あぁ~、とても綺麗だ!
まるで俺達を祝福してくれているかの様だな。
夜空を見上げ続けていると亡くなった両親の事がフっと頭に浮かんで来た。
(父さん!俺、父親なったんだぜ。
手の掛かる3歳児と妻のお腹の中に居る子と2人もいるんだ。
父さんは爺ちゃんになった訳さ。
父さんに子供達を抱かせてやりたっかな・・・
俺さ、父親になって初めて親の苦労が分かったよ。
父さんは、母さんを無くしてから1人で俺を育ててくれたよね。
本当に有難う!
父さんからの愛情が今なら本当に良く分かるんだよ。
俺も父さんの様に子供達に愛情をいっぱい注いでやるんだ。
俺達の事を見守っていてくれよな。
母さん!俺を産んでくれて有難う。
俺のために母さんの命を縮めてしまってゴメンね。
母さんとの思い出は少ないけど、俺は母さんの顔を今でもハッキリと覚えているよ。
俺の顔は母さん似だよね。
こればかりは父さん似でなくて良かったと思っていますよ。
母さんの遺伝子の勝利だよね!
母さん、どうか無事に出産出来る様にアイシャと生まれて来る子を護って上げて下さいね。
貴女の嫁と孫です。
どうか、どうかお願いします!)
俺は両親の事を思い、そしてお願いをした。
その時、夜空から一筋の流れ星が落ちた。
それと同時に俺の瞳からは一滴の涙が零れ落ちた・・・
先日、活動報告の方でもお知らせしましたが、仕事の都合のため来年の1月末くらいまで活動を休止させて頂きます。
誠に、誠に申し訳御座いませんm(_ _)m
私と致しましては、最後まで書き上げるつもりでおりますので、引き続きご愛顧頂けるのであれば、続きをどうかお待ちになっていて下さいね。
では、活動を再開するまで、しばしのお別れを^^ノ