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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
歌一座放浪記の章
151/187

第147話:懐妊

アイシャ視点

 リアース歴3237年 10の月20日10時過ぎ。


 海洋都市シーラを出発して20日、私達は首都ザーンに向けて旅をしています。

 冒険者であるならば護衛任務などをして稼ぎながらと言いたいところなのですが、幼子がいるために護衛依頼の任務などは受けられないので、私達家族だけの気楽な旅です。

 まぁ、ミスリル鉱石で莫大なお金を稼ぎましたので、無理して働く必要はないのですけど。

 私達親子3人が乗る鉄人君1号の前には、偵察役も兼ねた鉄人君2号に乗るリンちゃんとイナリちゃんがいます。

 全員が1号に乗るには手狭になったので、2体に分けました。

 10月の後半に差し掛かり、景色は秋ならではの色鮮やかな風景と変わり、遠くに見える山々の赤や黄色の葉がとても綺麗です。


母様カカサマ!この前の栗ご飯美味しかったね」

「そうね!とても美味しかったわね」

「僕、又食べたいなぁ~」

「フフフフフっ!だったら一生懸命探してね」

「分かったぁ~、僕一生懸命探すよ~」


 そうそう、先日、道端に栗のが落ちていたんですよ。

 皆でそれを拾い集めて、栗ご飯にして美味しく頂きました。

 前世の母が作ってくれた栗ご飯と同じ味がして、ちょっと泣きそうになったのは内緒です。

 私達は、この様に秋の景色、味を楽しみながらのんびりと旅をしています。

 本当にのんびりと・・・



 眠い・・・凄く眠い。

 お昼ご飯を食べた後だからかしら?

 嫌、それだけではないはずです。

 ここ最近やたらと眠い私なのです。

 走る鉄人君は振動が少なく、私を眠りの世界へ誘う様です。

 この眠たさは、もしかしたらあれが原因なのかなぁ?


 私、妊娠したかもしれないのです!


 計算上ならば、10の月2日が生理予定日だったんです。

 今までは、ほぼ周期通りに生理が来ていました。

 遅れています・・・遅れ過ぎです。

 この世界には残念ながら妊娠検査薬なる物はありませんので、何処かの町か村のシスターに見て貰うしかありません。

 不安です・・・物凄く不安なんです。


 考えてみれば、海洋都市シーラで思い当たる節があります。

 何時もなら避妊のためにエスナの術をしっかりとするのですが、お酒に酔った状態でエッチをしてしまい、途中から記憶が無かった事もしばしば・・・

 妊娠の時の症状ってどうだったっけなぁ?

 妊娠していたとしたら悪阻はもう少し先でしょうし、確か、眠気?

 ヤバっ!不味いじゃない。

 後は、怠さが出て来るんだったかしら?

 これはまだなさそうね。

 ん~、前世の時にもう少し詳しく調べておけば良かったわ。

 まぁ、次の生理も来なければ確定でしょうね。

 あぁ~、眠いわ!


『眠そうだの奥方!』

「鉄人君?」


 私は心の中で鉄人君に返事をする。


『そうじゃ!吾輩である』

「急にいったいどうしたの?」

『あまりにでも眠そうなので心配になっての』

「有難う!でも、大丈夫よ。次の休憩まで頑張れるから」

『あまり無理しない方が良いぞ!お腹の子に触るでの』

「え!・・・お腹の子?」

『そうじゃぞ。もしかして気付いておらんかったのか?』

「や・やっぱりそうだったんだぁ・・・もしかしてと思っていたのよ」

『人族は魔力察知が苦手だから仕方がないのかのう』

「そっか~、魔力察知で分かるのねぇ。もしかしてイナリちゃんも分かっているのかな?」

『ちっこいのもたぶん気配察知で分かっていると思うぞい』

「そうなのか・・・あっ、もしかしてここ最近、鉄人君が振動を少なくして走ってくれているのは、お腹の子のため?」

『その通りじゃわい!お腹の子のなにかあったら大変だからの』

「有難うね、鉄人君!」

『当たり前の事じゃて!奥方は元気な子を産む事だけ考えていれば良い』

「う・うん・・・」

『おや!どうしたんじゃ?あまり嬉しくなさそうじゃのう』


 私は、私を後ろから包み込む様に支えながら手綱を握る夫の顔をチラっと見る。

 そして今度は、私の前に座っている我が子の頭を優しく撫でる。


「嬉しいわよ!だけど不安なのよ。

 私達夫婦が、世界を旅して回りたいって云うのは知っているでしょ?」

『勿論である!』

「子供が出来たら旅はしばらくお預けになるわ。夫にはそれが申し訳なくて。

 子供は旅が終わってからと話していたから・・・」

『旅は何時だって出来るではないか!そんな事を気にする事はないと思うぞい』

「確かにそうなんだけどね・・・それにバーンの事も心配なの?」

『坊が?』

「バーンがどうとかじゃなくて私や夫の問題かな。

 血を分けた子が生まれたら、バーンを・・・バーンを疎ましくなってしまわないか怖いのよ。

 血は繋がっていなくてもバーンは私達夫婦の愛しい子供だわ。

 でも・・・もしかしたら、その想いが変わってしまうのではないかと・・・」

『なるほどの・・・でも、その心配は無用だと吾輩は思うぞい』

「ほ・本当に?」

「主や奥方が今まで坊に接して来た事を見ておれば、心配なんて思う方が可笑しいわい。

 主達は他の血の繋がっている親子以上に本当の親子である。

 心配する事なんて何もないぞい!

 お腹の子が生まれて、もしも奥方が気にする様な事にでもなったら吾輩が説教してやるから安心せい。

 だから、今は不安など持たずに元気な子を産む事だけ考えておればよいのじゃよ』

「有難う鉄人君!彼方が居てくれて本当に良かったわ。

 彼方は私達夫婦にとって、本当に頼りになる存在よ」

『そう言われると、何だかくすぐったいのう。

 そうだ!主にはお腹の子の事を何時話すのじゃ?』

「そうねぇ・・・今晩の晩御飯の時にでも話そうかしらね」

『喜ぶと思うぞい、きっとな!』

「フフフフフっ!きっとそうね」


 私は鉄人君のお陰で気持ちが凄く楽になりました。

 相談を出来る人(?)が居ると云うのは本当に有り難いです。

 これからはお腹の子のためにも身体に気を付けなければいけないわね。

 元気な子を産んで見せるわよ~!


次回、5章最終『第148話:大喜び』をお楽しみに~^^ノ

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