第14話:狩りへ
ルタの村は西にラウラ大山脈がある。
南には森、北と東には草原が広がっている。
狩りをするには都合の良い村だ。
額に1本の角が生えた一角ウサギ。
出っ歯が特徴でネズミより一回り大きいビッグラッド。
綺麗な銀色の毛並みのシルバーウルフ。
大きな嘴が特徴のヘルコンドル。
赤黒い毛並みで熊よりも大きいレッドベア。
口の両端に大きな牙があるワイルドボア。
豚の様な顔をして熊並みに大きいオーク。
どの魔物も肉が美味しくて人気の獲物だ。
リアースはこんな魔物がいる世界・・・
リアース歴3231年 5の月22日。
ルークと父ロデリックはラウラ大山脈の麓で狩りをしていた。
「父さん!イナリが北の方角だってさ、あそこの茂みの奥みたい」
「分かった!お前達はそこで待機。イナリは周りの警戒を怠るなよ」
「分かった!」
「キュ!」
父は身を屈めながら忍び足で北の方へと向かって行く。
俺はその場にしゃがみ込み父の成り行きを見届けている。
イナリは鼻をヒクヒクさせながら、周りを警戒している様だ。
この辺の木は広葉樹だろうか?
地面には桜みたいな花びらが散った後がある。
木の葉や枝の隙間から差し込む木漏れ日が綺麗だ。
今日は快晴だ。
遠くで鳥の鳴く声が聞こえる。
静かだ~。
今日は日が昇る前に家を出発し、俺の4足歩行馬タイプの鉄人君に乗ってラウラ大山脈までやって来た。
鉄人君の速い事速い事。
10時くらいまでには山の中腹くらいまで到着して、午前中の2時間で一角ウサギ3羽とヘルコンドル1羽を仕留めている。
イナリの鼻と耳は凄いね。
イナリに頭が上がりません。
昼食を食べて一息ついた後、狩場を少しずらして今に至っている。
父の姿が茂みの中に消えた。
ズンっ!
軽い地響きだ。
「「「チチチチチ!」」」
小鳥が何羽か飛び立った。
父さん、何かの土の精霊術を使ったな。
あ!父さんの姿が見えた。
右手に一角ウサギを持っているのかな?
ん?物凄い勢いでこちらに走って来る!
「逃げろ~!て・撤退だぁ~!」
父が叫んだ。
「シルバーウルフが来るぞー!」
「え?え?え~~っ!」
「ルーク!ゴーレムを2体召喚しろ。俺のゴーレムと一緒に時間稼ぎさせるぞ」
父の慌てっぷりが凄い。
「わ・わ・わ・分かった!」
俺も凄い慌てっぷりだ。
「「土なる力を我に与え給え!新しき従者!出でよ!『ゴーーレム!』」」
俺と父の詠唱が重なった。
俺の右手と左手から2本脚の2体のゴーレムが生成される。
鉄人君1号と鉄人君2号だ。
俺は短時間でなら2体同時のゴーレム生成が出来る様になっていた。
長時間維持するには魔力量がまだ足りない。
「シルバーウルフが来るから、ここで僕達が逃げる時間を稼いでくれ!」
俺は鉄人君1号2号に命令を出すと、狩猟道具や獲物の入った鞄を両手で持って山を下り出す。
父さんが数メートルまで追い付いて来た。
「ウオーン!」
シルバーウルフの遠吠えが聞こえる。
かなり近いのか?
「臭い袋を使う!」
父はそう言うと一度止まって後ろを振り返った。
そして、何個か盛大に投げまくる。
「キュキュキュキュ~!」
イナリが何か文句を言っている。
イナリは両手で鼻を抑えて、俺の首元から服に中に避難した。
4足歩行の動物のくせに器用に両手で鼻を抑えやがって。
お前、最近何でもでもアリアリだな・・・
父は臭い袋を投げ終わると、再度猛ダッシュで走り出す。
俺に追いつく。
「なっ!」
父は左肩に俺を担ぎ出した。
「え?え!?え~~っ!」
困惑する俺。
「黙っていろ!舌をかむぞ!荷物はしっかり持っていろよ!」
父は俺を担ぎながら走り続ける。
速っ!
小さな岩場や障害物があると、俺を担いだままピョーンと飛び越える。
次々と飛び越える。
ジェットコースター気分っすよ。
何かのギャグマンガの様な逃走劇だ。
父の体力が半端ねぇ~。
1kmくらいは走ったかな?
少し平たい所まで降りて来た。
「ルーク!シルバーウルフの姿は見えるか?」
俺は逃げて来た方を目を凝らして見る。
シルバーウルフの姿は見当たらないな。
「見えないよ!」
「ゴーレムとの繋がりは消えているな。ルーク、馬タイプのゴーレムを頼む。
もう少し離れるぞ!」
「分かった!」
俺達は、こうして命からがら逃げ帰って来たのだった。
日は西の方に大分傾いて来ている。
俺達は、麓の草原の所でもう少しだけ狩りをした。
父は大きなワイルドボアを仕留めた。
危ない目にはあったけど、狩りの仕方を目の前で見えて実りのある1日であった。
俺も早く自分の手で狩りをしたいと思うのであった・・・
あ!1つ重要の事が分かりました。
刀術と土の精霊術・・・空に対する攻撃手段がないでござる・・・
明日から弓の鍛錬が加わりそうです・・・