第145話:大収穫祭
海洋都市シーラで古くかある大収穫祭。
この大収穫祭を楽しみにワザワザ遠方より来る人も多いほどの人気の祭りだ。
祭りの始まりは、冬になると港が流氷で閉ざされてしまうので、今年の漁の締めくくりとして獲れた魚を皆で味わいながら楽しもうじゃないかと云う事から始まったらしい。
よって祭りが始まった当初は大収穫祭ではなく、漁獲祭と言われていた。
それがいつの間にか、農作物の収穫祭も併せる様になったので、何時からか大収穫祭と言われる様になったのだ。
9の月30日に行われるシーラの大収穫祭。
ルーク達はこの祭りを見るために長らくこのシーラに滞在していた・・・
リアース歴3237年 9の月30日11時半頃。
「ウワァ~、凄い沢山の人だなぁ!」
バーンが目をまん丸にして驚いている。
確かに驚くのも無理はない。
かく言う俺もあまりもの人の多さに驚いているのだ。
「酒場のおじさんに聞いた話では、皆さん、この祭りを目当てに遠くから見に来ているそうですよ」
「へぇ~、リン姉ちゃんは物知りだねぇ~」
「そうでしょ~!」
リンがドヤ顔でバーンに説明をする。
子供にドヤ顔しても空しいだけだぞリンよ。
「あ・貴方、あれってもしかしてカニ汁じゃない?」
アイシャは俺の左腕の袖を引っ張り、露店で売られている商品を指さして俺に聞いて来る。
「カニ汁だって?・・・デ・デカっ!何だあのカニの足のデカさは?」
「そうね・・・お椀からはみ出ていると云うより、お椀の上に乗っている感じだものね・・・」
普通のカニの足の2倍くらいの大きさであろうか?
デッカイお椀に入り切らずに箸の様にお椀の上に乗っている。
列を作って並んでいるなぁ。
今日は寒いからカニ汁の様な温かい物が売れるのかな?
「主様、奥様、あ・あれを是非食べてみたいです!
さぁ、行きましょう。並びましょう。カニ汁とやらが私を待っているのです!
あぁ、何て響きの良い名なのかしら。カ・二・じ・る♡」
「お・おぉ、分かった!」
「し・仕方がないわねぇ~」
「カニ汁カニ汁~!」
「キュキュ~!」
(カニ汁カニ汁~!)
『吾輩も味わってみたかったのう~。今となってはこの身体が恨めしいわい』
「鉄人殿には原稿用紙に200字以内に感想を書いて教えてあげますからね」
『そんなもんいらんわい!何の嫌がらせじゃ』
「ムフフフフ!同じ従者として仲良くしませんとね」
『余計なお世話じゃい!』
テンション高ぇな、リンよ!
毎度の事ながら、本当にブレないキャラだよ君は。
もう突っ込む気も起きません。
俺達は鉄人君以外皆でカニ汁を食べました。
地球のカニと同じ味がして美味しかったです。
ただ、汁の方が若干薄味だったような気がします。
こっちの世界は全体的に薄味だから仕方がないのですが・・・
その後もいろいろな物を食べ歩きました。
甘醤油のタレが付いた芋団子、いろいろな野菜の具が入った野菜スープ。
串に刺さった秋刀魚もどきの塩焼きは脂がのっていて、特に美味しかったなぁ。
バーンは秋刀魚もどきをお代わりして食べていました。
あっ、バーンって虎の獣人で一応猫科だから、もしかして魚が好物とかなのかな?
これからは魚料理を多く食べさせて上げようかな。
露店の食べ歩きでお腹がパンパンになった頃、メイン通りには更に多くの人が集まって来た。
何だか昔懐かしの法被姿の人がチラホラといるなぁ。
これから何かあるのかな?
そんな事を思っているとメイン通りの両脇にお神輿らしき物が現れた。
「あ・あれってお神輿か?」
「そうみたいだわね!」
「主様、お神輿って何で御座いますか?」
「父様、お神輿ってな~に~?」
確か神輿って、神霊が本社から他社にお渡りになる時の乗り物って意味だったよなぁ。
こっちの世界って確か神社とかなかったはずだから、たぶん協会の大母神テーラの魂か何かが移動するための乗り物みたいな解釈で良いのかなぁ?
ん~、キリスト教や仏教なんかがごちゃ混ぜになっている世界だから、本当に訳分かんねぇわ。
『神輿とは、あの人達が担いでいる小さな教会の様な物の事を言うてな。
あの小さな教会の中には、大母神テーラ様が遣わした使徒の魂が祭られていると言われておるのじゃよ』
「「「「使徒の魂?」」」」
「キュキュ?」
(使徒の魂?)
『そうじゃ。かつて大母神テーラが遣わした使徒達は、このリアースの世界で数々の不思議な力を使って、世を良き方向に導いて来たと言われておるじゃよ?』
「確かにそう言われているわね!」
マジか~、それ全然知らねぇよ。
アイシャは、流石、元聖女だな。教会絡みの事に詳しいぜ。
『その使徒達は、亡くなった後も魂となってこの世界を良き方向に導こうしていると言われておってな。
こうやって神輿に魂を降ろして、今年の豊作と大漁の感謝と来年の豊作と大漁を願うんじゃよ』
「なりほど~!」
「使徒伝説ってウソだと云う人もいるから、曖昧で分かり難いのよねぇ。
でも、祭りの神輿と使徒がそんな風に絡んでいたなんて知らなかったわ!」
「へぇ~、鉄爺詳しいね!」
「鉄人殿、感服致しました!それに引き換え主様は・・・」
皆の視線が俺に集中する。
い~や~~~~~!そんな目で見ないで~~~。
俺だって知らない事ぐらいあるもん。
バーンもそんな目で見ないでぇ~。
お・親の威厳が~~~。
それにしても使徒伝説か~、そんな話があるの何て知らなかったなぁ。
不思議な力を使う使徒か・・・気になるなぁ。
「いよいよ喧嘩神輿が始まるぞ~!」
「「「待ってました~!」」」
「今回も派手に頼むぞ~!」
「「「やったれやったれ~!」」」
へぇ~、ここの祭りは喧嘩神輿なんだぁ。
そりゃ盛り上がるよな。
「大漁の使徒をやっつけろ~!」
「「「「おぉ~!」」」」
「何を~、豊作の使徒をやっつけるぞ~!」
「「「「おぉ~!」」」」
ハァ~?やっつけろだって?
もしかして、本当に戦うんかいな?
あ・ありえねぇ~!
地球の喧嘩神輿は、神輿同士がぶつかり合って戦っている様に見えるからそう言っているだけで、実際に戦っているのと違うんだからなぁ!
それに使徒をやっつけて罰当たらんのかぁ?
この祭りって、豊作と大漁の感謝と祈りの祭りなんだろ?
か~、もう訳分からんわ。
誰か教えて~~~!
次回『第146話:喧嘩神輿』をお楽しみに~^^ノ