第144話:海洋都市シーラにて
海洋都市シーラはシーラ侯爵が治める都市で、リの国の北で1番栄えている都市である。
北の経済の中心となっているシーラは、北方海域を中心した漁業が盛んな都市であり、脂の乗りが良い魚やカニもどきが良く獲れる事で有名である。
都市の傍には大河が流れ、川の水を引き込んでの大規模農業も盛んで、地球で云う芋に似た種類を主に沢山の野菜が取れ、漁業だけでなく農業としても有名な都市である。
大河の北側にはシーラ森林が広がっているため、多くの冒険者がこの都市にやって来ており、漁業や農業に携わる者以外にもいろいろな者が集まっているのだ。
冬の寒さに厳しい事でも有名なシーラ。
ルーク達はこのシーラに足を踏み入れたのであった・・・
リアース歴3237年 9の月17日。
海洋都市シーラのメイン通りにて・・・
「うわ~、大きい街~!僕、こんな大きな町見た事ないや~」
バーンが俺の頭の上でキョロキョロと見渡しながら無邪気に喜んでいる。
俺達は先ほど海洋都市シーラに到着したばかりだ。
まず、道中に狩った魔物の素材を冒険者ギルドで売り飛ばし、今晩から泊まる宿屋を決めた。
そして今、バーンを肩車しながら、皆で街中を散策中であります。
「リン姉ちゃんの大好きな食べ物屋さんのお店がいっぱいだね!」
「そうだな。おっ、あのお店は焼き芋屋さんかな?」
「そうかもしれないわね!」
「焼き芋屋さんですか。何やら良い匂いがしてきます~・・・ジュルリ!」
「キュキュキュ~!」
(焼き芋食べた~い!)
「よし、皆で焼き芋を食べてみようか!」
「わ~い、やったー!」
『ぬ~~~、この身体になってから食べる事を必要としなくなって便利で良かったと思っておったが、食の楽しみがなくなってしまったのは誠に残念じゃのう~』
「それは可哀想だね鉄爺、南無!」
「「「南無!」」」
「キュ!」
(南無南無!)
『坊、それは止めい~!』
「キャハハハ!」
バーンの南無の後に、皆が鉄人君に手を合わせて合掌する。
最近、この「南無!」が俺達のマイブームとなってしまった。
バーンが何気に気に入ってしまったので、皆仕方なくバーンに合わせてやって上げているのだ。
困ったもんである・・・
「甘~い!」
「あ・熱いです!でも、本当に甘くて美味しいです~」
「キュキュ~!」
(甘くて美味しい~!)
「ホクホクして美味しいわ!」
「そうだな!何だか懐かしいな・・・学校帰りによく2人して食べたっけ」
「そうね・・・」
バーンとリン、イナリは口いっぱいに焼き芋を頬張る。
俺とアイシャはそれを見て微笑みながら焼き芋を食べる。
焼き芋は、昔2人で食べた味と同じ味がした。
懐かしさがこみ上げて来て、ちょっと涙が出そうになる。
「焼き芋って、確か食べた後にオナラがしたくなるんだよなぁ。
皆、くっさいオナラしない様に気を付けるんだぞ~」
「もう、貴方ったら!」
「父様、それ本当~?」
「主様、本当なんですか?」
「本当だぞ~、くっさいオナラしたらこうだからな!コチョコチョコチョ~」
俺はバーンの両脇腹を手でくすぐってやる。
「キャハハハ!父様、止めて~~~!」
バーンの笑い声が周囲に広がる。
その笑い声を聞いて、通りすがりの人達が俺達を見て微笑む。
俺とバーンは仲の良い父子に見えるであろうか?
この子を引き取ってから1カ月とちょっとが経った。
俺には、もうこの子は完全に我が子同然である。
この子も俺の事を本当に父様と思ってくれているであろうか?
そうであって欲しいな!
俺はバーンをくすぐりながらそんな事を思っていた・・・
「ふぅ~、やっと寝たわ!」
「ご苦労様アイシャ!」
「奥様、ご苦労様です!」
隣りの部屋でバーンを寝かしつけたアイシャが、俺とリンが居た部屋に戻って来る。
「奥様、果実酒でもお入れ致しましょうか?」
「有難う、お願い出来るかしら?」
「ハイ、直ちにご用意致しますね!」
「貴方、ポーション作りの方は終わったの?」
「薬草が少なかったからね、今日はもう終わったよ」
「そっか、今晩は少しゆっくり出来そうね」
「そうだね!」
「奥様、果実酒のご用意が出来ましたよ!」
「リンちゃん、有難う!」
「では、私は隣りの部屋へ戻りますね」
「リンちゃん、申し訳ないけど後はお願いね!」
「ハイ、奥様!後の事はお任せ下さい。主様、奥様、お休みなさいませ!」
「「お休み!」」
「あっ、そうだわ!バーンが寝ている隙にバーンのオチンチンを覗いちゃダメよ。
良いわねリンちゃん」
「も・勿論でございましゅ、奥様!」
あっ、噛んだ!
目も泳いでいるし。
これは完全に覗いているな。
「触るなよ!」
「さ・触りませんよ!何て事を言うんですか主様は」
「咥えるなよ!」
「な・な・な・な!キャーーー、そんな事絶対しませんよ~」
顔が真っ赤だなリンよ!
すでに頭の中は妄想でいっぱいな様だな。
リンは頭を下げて、バーンが眠っている隣りの部屋へといそいそと去って行く。
「もう、貴方からかい過ぎよ!」
「え!だってアイシャが先にからかったんじゃないか~」
「貴方はやり過ぎなのよ。咥えるだなんて・・・もうバカ!」
あらら、アイシャまで妄想で真っ赤になるの?
別に照れる事じゃないよね?
いつも俺にやってくれる事だしさ。
俺達の最近の夜の日常は、いつもこんな感じである。
酒屋で晩御飯を兼ねての歌一座を披露し、夜の楽しい一時を皆で過ごす。
22時になる頃には宿屋に戻り、アイシャがバーンを寝かせつけている間に、俺とリンはポーション作りをする。
アイシャが1時間掛けてバーンを寝かしつけると、アイシャとリンは交代して、リンはバーンと一緒に寝に入る。
ちなみに鉄人君は部屋の前で見張りをしてくれていますよ。
後は、俺とアイシャだけの甘い夫婦の時間がやって来る。
「こんな大きな街は初めてだったから、きっと興奮していたのねあの子。
今日は寝かすのに苦労したわ。」
「そうだね!いつも以上にはしゃいでいたもんね」
「しばらくはこの街に滞在する事になるのかしら?」
「9の月いっぱいは此処に居ようと思う。30日には祭りがあるって言っていたからね。
バーンに祭りを見せて上げようと思ってさ」
「そうね!きっとあの子大喜びすると思うわ」
「楽しい事をいっぱい教えて上げないとね」
「そうね、いっぱい楽しい事を教えて上げなくちゃね。
貴方・・・私達もいっぱい楽しい事を・・・ね!」
アイシャが俺の隣りに座り身体を密着させて来る。
「そうだね・・・」
俺はアイシャの肩を抱き、頭を斜めに傾けて、自分の唇をアイシャの唇に重ねる。
「あぁ~~~♡」
アイシャから熱い吐息が漏れる。
熱い吐息のせいで俺達の身体も熱く燃え上がり、今宵も激しい夫婦の営みが始まるのであった・・・
次回『第145話:大収穫祭』をお楽しみに~^^ノ