第136話:吾輩は英雄である
リアース歴3237年 8の月7日17時過ぎ。
『吾輩は偉大な竜族の戦士である!お前は何者だ?』
何だ?頭の中に声が響いて来る。
『吾輩は偉大な竜族の戦士である!お前は何者だ?応えろ!』
(この声は目の前の竜からなのか?)
『その通りである!答えろ!お前は何者だ?』
ほう、テレパシーみたいなもんか。
それにしても『吾輩は偉大な竜族載の戦士である』だなんて夏目漱石でもあるまいし。
だったら、こう答えて上げようか。
(吾輩は人族の英雄である!)とね。
『なんと!貴様は人族の英雄であったか』
(その通りだ!)
『フハハハハハ!そうか英雄か、これは面白い!』
(俺は別に面白くも何ともないけどな)
『久しぶりに血がたぎるぞ!勝負だ、人族の英雄よ!』
ハァー、失敗したな。
まさか竜の奴をやる気満々にさせてしまうとは。
しかし、これは困った。
甚だ面倒な事になってしまった。
非常に不味い事態と言っても良い。
竜の奴・・・
俺しか狙っていねぇ!
ターゲットロックオンされてしまった~。
誰か変わってくれよ~。
ヘルプミー!
あれ?
俺と一緒に突撃したはずの近接さん達が、一人また一人と戦列から離れて行くぞ。
何でだ?
「鉄壁殿、後を頼みます!」
「頑張って下さい鉄壁殿!」
「応援していますぜ!」
何時の間にか遠距離攻撃も止んじゃったぞ。
どうしてだ?
「貴方、しっかりね!」
「主様なら大丈夫です・・・たぶん」
「鉄壁殿、ご武運を!」
「「「頑張れ鉄壁~!」」」
え!えぇぇ~!何何何~?
どう云う事~?
「み・皆、急にいったいどうしたんだ?」
「竜から、『1対1の邪魔をするな!』と言われましたので・・・」
「ハァ~~~?」
「『1対1を邪魔しなければ、勝っても負けてもここから出て行ってやる!』とも言われました」
「な・何て勝手な事を!」
「鉄壁殿頑に全てをお任せします!どうか頑張って下さい!」
「マ・マジかよオイ・・・」
ムムムムム!竜の奴め~、何が1対1だよ。
竜相手に俺一人で戦えって言うのかよ~。
無茶言うなよなぁ~。
「例え負けたとしても犠牲者が1人で済みますしね・・・」
オイ!今、ボソっと何て言った?
しっかり俺には聞こえていたからね。
俺に人柱になれってか!
ふざけろよ~。
「キュキュキュキュキュ!」
(その勝負ちょっと待て!)
「その勝負ちょっと待てと言っています」
「キュキュキュ、キュっキュ、キュキュキュ。キュキュキュキュキュ、キュキュ~」
(ルークが英雄と言われる切っ掛けになった戦いでは僕もルークの傍で一緒に戦ったんだ。
竜が英雄と戦いたいと言うのなら、僕も一緒でないとおかしいはずだ。
ルークと僕は一心同体!ルークと僕でエターナの英雄なのだから)
「主様が英雄と言われる切っ掛けになった戦いではイナリ殿も主様の傍で一緒に戦ったんだから、竜が英雄と戦いたいと言うのなら、イナリ殿も一緒でないと変だと。
主様とイナリ殿は一心同体!主様とイナリ殿でエターナの英雄なのだからと!」
「イナリお前・・・」
「イナリちゃん・・・」
何て泣かすセリフを言ってくれんだ。
俺とアイシャはイナリの男気にスッカリ感動してしまった。
そうだよな相棒!
どちらが欠けてもダメだよな。
俺達は二人(?)で一つ。
俺達は揃って英雄なんだ!
「聞こえていただろ竜!俺とイナリは二人で一つだ。
英雄と戦いたいんだろ?だったら、一緒でないと力が出ないぞ!」
『フンっ、良かろう!好きにするが良い。どうせ勝つのは吾輩だからな』
「言ってくれるぜ・・・イナリ、やるぞ!」
「キュキュキュ~!」
(了解~!)
さぁ、ここからが本番だ。
竜の奴を絶対ギャフンと言わせてやる。
行くぞイナリ!
次回『第137話:吾輩は聖獣である』をお楽しみに~^^ノ