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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
転生の章
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第13話:母の形見

 形見。

 それは、母がいつも身に着けていた物。

 それは、父が大切に使っていた物。

 それは、愛してくれた人が残してくれた物。

 それは、別れた人が置いて行った大事な物。

 それは、人から人へ渡る思い出の詰まった大切な物。


 形見!人の思いはリアースも地球も同じである・・・




 リアース歴3231年 4の月16日。


 今年も本格的な狩りのシーズンがやって来た。

 狩りのシーズンが来ると新鮮なお肉が食べられるようになって嬉しい。

 俺は豚肉の様に軟らかいオークや鳥肉の様に臭みがない一角ウサギが大好きだ。

 父さんは何を狩って来てくれるかなぁ?


「ルーク!もう少しでお前も10歳になる。

 まだ少し早いが、そろそろお前も狩りに連れて行こうと思う」


 父が突然そんな事を言い出した。

 いつも突然だな、父よ。


「え!いいの?去年はもう無謀な事はしないでくれって言っていたのに」


 確かに言っていたよね?

 言っていましたよね?

 お互いに盛大に泣き合って約束したじゃないか。

(恥ずかしい黒歴史だわ)


「別にお前に狩りをさせる訳じゃない。お前は見ているだけだ」

「見ているだけ?それでも危険じゃないの?」

「お前の身を守るだけならお前自身とお前のゴーレムが居れば問題ないだろ。

 イナリもいるんだしな」

「キュキュ!」


 イナリが任せておけ!みたいな顔をしている。

 生意気な奴め!

 あ!痛い。噛まないで。

 ゴメンなさい。

 お願いだから許して!

(心を読まないで~!)


「シルバーウルフ対策もしてあるし、ルークに危険な事が起こる事はないだろうから、まぁ、安心しろ!」

「シルバーウルフ対策?」


 シルバーウルフって、オークやレッドベアより下級だったよな?

 シルバーウルフだけ対策するの?


「この辺で一番厄介なのがシルバーウルフなんだよ。

 オークやレッドベアの方が強い魔物だが、群れでいる事は稀だ。

 単体なら俺一人でも全く問題ないし、2~3体居ても逃げれば余裕で逃げ切れる。

 土の精霊術はそう云うのが得意だしな。

 しかし、シルバーウルフはそうはいかない。群れで行動するし足も速い。

 囲まれた終わりだ!」


 なるほどなるほど。

 勉強になります。


「それでシルバーウルフ対策?」

「そうだ!グフフフフ!この小袋がその対策なのさ」


 不気味な笑いをしながら右手に持った小袋を俺に見せる。

 うわ~っ、顔がきもいわ~!

 ゲスの顔っすよ。


「その小袋がその対策なの?」

「この小袋の中には、シルバーウルフの様な鼻の利く魔物の嫌いな臭いが入っているのさ。

 村の外れで薬剤師をしているハンナ婆さん特製の臭い袋さ。効くんだぞ~!

 その内、お前にも紹介してやる。

 群れを見つけたらこいつを辺り一面に撒くのさ。

 そうすれば、シルバーウルフは近寄って来れない。その間に逃げるって寸法さ」

「うわ~!せこい対策~。それってイナリもまずいんじゃないの?」

「あっ!」


 父は固まってしまった。

 イナリの事を忘れてたな馬鹿父。

 俺が許す。

 父を噛んであげなさい。

(や~~~っておしまい!byドロンジョ様)



 後日、改めて俺も狩りに参加させて貰う事になった。

 やっぱり見ているだけらしいけどね。

 つまらん!


 5の月 21日。

 俺の10歳の誕生日の前夜。

 狩りに行く前夜である。


「これをお前にやろう」


 父はそう言って、父の腰に付けていた鞘に入ったままの脇差を俺に手渡して来た。


「父さん、良いの?これって父さんが大事して来た脇差じゃん」

「あぁ、これは俺の師匠から貰った大事な脇差だ。

 前々から、お前が10歳になったら俺の脇差をやろうと決めていた。

 もしかしたら去年の様な事だってあり得るかもしれないからな。

 刃物を持たすにはまだ早い気もするが、お前なら大丈夫だろう。

 後は俺のお古になるが、皮の小手、ブーツ、肘と膝あて、そして外套だ。

 胸あての部分は損傷が酷くて無理だったが、他は寸法を直して貰った。

 ちょっと着て合わせてみてくれ」

「ハーイ!」


 おぉ、俺専用の防具だ。

 サイズはピッタリだ。

 俺ってかっこいい。

 一丁前の冒険者に見えるぜ。


「うむ。サイズは良さそうだな。それらしく見えるな。

 あぁ、ついでにあれもお前に渡しておくか」


 父は寝室に行って、大事にしていた母さんの化粧箱を持って来た。

 そして、化粧箱を開けて何かを取り出した。

 銀のネックレス?

 綺麗な紐で編んだ首掛けの部分。

 銀みたいな物で出来た楕円状の玉。

 何かの紋章みたいな絵が彫ってあるぞ。

 裏には・・・あっ!?


「これって?」

「母さんの形見のネックレスだ。裏に母さんの名前の『ラティーナ』って書いてあるだろ」


 裏には『愛する娘ラティーナへ!父ロイより愛をこめて』と書かれていた。


「う・うん!」

「母さんに頼まれていた。大きくなったら渡してやってくれってな。大切にするんだぞ!」

「分かった!大切にする」


 俺はそのネックレスを父にかけて貰う。

 首掛けの部分が少し長いかな。

 玉の部分を右手で持って、じっくりと眺める。


「もし、父さんに何かあって一人になってしまった時、もしくは何か困ってどうしようもない時は、この 紋章と同じバニング家を訪ねてみなさい。

 たぶん、お前を助けてくれるだろう・・・」


 え!?何それ?


「バニング家?」

「母さんの遠い親戚だ!」

「そうなんだ・・・」


 父はそれ以上何も言わなかった。

 俺もペンダントを見つめたまま黙ってしまう。

 静かな夜が更けて行く。

 明日はいよいよ初めての狩りだ・・・


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