第134話:煙が上がる町
リアース歴3237年 8の月7日16時過ぎ。
キドの町から南東5km辺り街道沿いにて・・・
「主様~、今日中にはキドの町に着きますかねぇ?」
「う~ん、もうすぐだと思うんだけどなぁ」
俺は馬型鉄人君の上で地図と睨めっこをしている最中です。
「あぁ、早く麺と云う物を食べてみたいですぅ~。麺が私を呼んでいる~!」
「まぁ、リンちゃんたら食べる事ばっかし!」
「それが私の生き甲斐なのですよ奥様~」
「うら若き乙女が何を言っているのよ!」
「私も恋の一つでもしてみたいのですが、行く先々碌な男が居ません。
主様の様に残念な男ばかりです!」
オイ、今何て言った?
リンにだけはそのセリフは言われたくありません。
「確かにねぇ・・・」
えっ、アイシャまでそんな事言うの!
俺泣いちゃうからねぇ~。
「でもね、リンちゃん!完璧な男何て存在しないのよ」
「あぁ、確かにそうかもですね!」
「妥協が肝心なのよ、妥協が!」
「なるほど~」
妥協!
ひ・酷いざます!
あんまりだわ、あんまりよ~~~。
「あれ?何か前方で煙が上がっていませんか?」
「「煙?」」
リンの言葉に俺とアイシャが同時に反応する。
煙か~、ん~~よく分かんないなぁ。
「間違いないです!あれは煙ですね」
「キュキュキュ~!」
(リンの言う通り何か燃える臭いがしてくるよ~!)
「イナリ殿も燃える臭いがすると言っておられます」
「分かった!取りあえずその煙に向かって急ごう」
「そうね!」
「ハイです!」
馬型鉄人君をかっ飛ばす。
煙が見えるのは前方と云う事なので、取りあえず街道沿いに進む。
しばらくすると、俺の目にも煙だと云う事がハッキリと分かって来た。
「もしかして、あの煙はキドの町から上がっているんじゃないのか?」
「そうかもしれないわね!だったら尚更急がなきゃ」
「そうだな!」
「町から煙が?・・・わ・わ・私の麺が~~~!」
お前の麺じゃな~い!
そこは食い気を忘れろよ~。
煙に近付いて行くと、町らしきものが見えて来た。
やはり町から煙が上がっているのだ。
それも煙は一つではなく、数本の煙が空に向かって伸びている。
いったい何が起こっている?
大きな火事でも起こっているのであろうか?
もしかしてスタンピード?
俺の頭は嫌な予想でいっぱいになる。
「主様!どうやら人が町から逃げ出している様です」
「あぁ、その様だな!クソっ、町の中では何が起こっているんだ?」
「我先にと逃げ出している様に見えるわね!」
アイシャの言う通りだ。
大勢の住人が何かから必死に逃げている様に見える。
「オイ、いったい何があったんだ?」
町から逃げて来た一人の男を見つけて何事が起きたか聞いてみる。
「りゅ・竜だ!竜が突然町中に現れて火を吐きながら人を襲っているんだ」
「竜が人を襲っているって?」
「あぁ、そうだ! 冒険者達が皆を逃がそうと戦ってくれているが、あれじゃたぶん無理だ。
お前達もここから早く逃げた方が良いぞ!」
男はそう言って町とは逆の方向へ走って行ってしまった。
「クソっ、よりによって竜かよ!」
「まだ、逃げ遅れている人も居る様ね!」
「その様だな!」
「貴方、助けに行かなきゃ!」
「分かっているさ!」
馬型鉄人君を町の中へと走らせる。
悲鳴を上げながら走って逃げる人達とすれ違う。
俺達に助けを求めて来る人もいる。
俺は本心から言えば逃げ出してしまいたい。
竜と戦うなんて真っ平御免だよ。
だけど、ここは戦わなきゃいけないんだと思う。
嫌、戦わないといけないんだ!
ビルギット様にお願いされたじゃないか。
国の民を護ってやってくれってさ。
ハァー、何で英雄なんかになっちゃったんだろうなぁ・・・
町中を進んで行くと、竜の姿が見えて来た。
うわ~、翼もあれば尻尾もある。
まさに物語に出て来る竜そのまんまや!
その竜は、全身が真っ黒で体長3~4メートルくらいの大きさだ。
うん、思っていたほどデカくはないな。
周りを見渡すと、まだかなりの数の冒険者がいる。
よし、これなら何とかやれそうかな。
「皆、戦闘準備だ!」
「分かったわ!」
「ハイです!」
「キュ!」
俺の指示で皆一斉に馬型鉄人君から降りる。
俺は一度鉄人君との繋がりを切り、改めて詠唱を始める。
「新しき従者よ出でよ!『ゴーレム!』」
バラバラ崩れたミスリル鉱石は、俺の詠唱で又新たに人型の鉄人君として生まれ変わる。
体長2m超えのミスリルゴーレムの完成じゃ~。
そして、更にもう1回詠唱を始める。
「新しき従者よ出でよ!『ゴーレム!』」
今度は普通の土で出来た鉄人君が生成される。
同じく2m超えの普通のゴーレムじゃ~、何か文句あるか~。
今回はゴーレム2体で行く。
竜相手に出し惜しみなんてしていられないからね。
さて、竜退治の始まりじゃ~!
こうして俺は竜と戦う事になったのであった・・・
次回『第135話:吾輩は竜である』をお楽しみに~^^ノ