第133話:一時の別れ
リアース歴3237年 7の月15日。
俺達はエドナを出発する前に、ベレットに別れの挨拶を言いにエドナ邸に立ち寄った。
毎回の事だけど、別れの時は辛いです。
「世話になったなベレット!」
「オイラは特に何もしていないよ」
「そんな事はないだろう。俺達に内緒で酒場に客を呼び集めてくれたんだろ?」
「バレていたか!」
「当たり前だ・・・サンキューな!」
「それぐらい普通だって!だって友達だろ」
「そうだな!」
友達と言って貰える事が非常に嬉しい。
俺にとって親しい友達が出来た事は、この世界に転生してアイシャと再び出会えた事と同じ位にとても嬉しい事なのだ。
「ルーク達はこれから首都に向かうのかい?」
「嫌、天下一精霊武術大会が始まるテーラ感謝祭まではまだ時間があるから、もう少し旅を続けるつもりだよ」
「と云う事はこれから北西へ?」
「あぁ、まずはキドの町へ行って、時間に余裕があるならシーラまで足を延ばしたいところだけどね」
「キドの町は『食の町』と言われている所だから是非行ってみると良いっすよ。
特に『麺』と云う変わった物を使った料理は有名だから、一度食べてみると良いっす」
「「「麺?」」」
「そうっす!オイラもあの麺を始めて食べた時は感動したなぁ。
病みつきになりそうなほど美味しいっすよ!」
「病みつきになるほどで御座いますか・・・ジュルリ!
主様、奥様、次は絶対にキドの町へ行きましょう」
ま~た始まった。
流石にもうこの展開は馴れたけどね。
それにしても麺か~。
転生者の誰かが再現したのかなぁ?
実に興味深い。
「次に会えるのは天下一精霊武術大会の時っすね!」
「え!ベレットも首都に来るのかい?」
「若様も大会にお出になるので、若様とルークを応援するために絶対行くっすよ」
「レミオンも出るのか?」
「エドナ伯爵の命令で仕方なくですけどね」
「そっか~、だったら首都で皆に会えるな!」
「そうっすね!その時は又皆で飲みましょう・・・ケビンのために!」
「そうだな!」
「そうね!」
「あっ、そうだった。これを手渡そうとしたんだった」
ベレットは手に持っていた包の袋を俺に手渡す。
「これは?」
「オイラが作ったお弁当だよ。道中食べてくれよ」
「ベレットが!ちゃんと食べられるのか?」
「酷いなぁ!これでも一応コック見習いなんだぜ」
「そうだったっけな!」
「味は保証出来ないけどね!」
「オイ、それはダメだろう!」
「ニャハハハハ!」
「有難うな!後で皆で頂くよ」
「残さないでくれよ!」
「分かったよ!」
俺は右手、ベレットは左手を上げて、軽く拳をぶつけ合う。
「じゃあ、そろそろ行くよ!元気でなベレット」
「ベレットさん元気でね!」
「お世話になりましたです!」
「ルークもアイシャもリンちゃんも元気で!道中の無事を祈っているっすよ」
「キュキュキュ!」
(僕を忘れるな!エロベレット)
「僕を忘れるな、エロベレットと言っておられます!」
ガクっ!
「イ・イナリも元気でな!早く大きく成れよ!」
「キュキュキュ!」
(余計なこと言うな!)
「余計な事を言うなと・・・」
「アハハハハ!皆、元気でなぁ~。又首都で~」
「有難う!また首都で~」
俺達はお互いに手を振り合う。
これは一時の別れだ。
又すぐに首都で出会う約束をしたのだから。
ベレット何時までも飛び跳ねながら両手で手を振っている。
ベレットは陽気な奴だから、こう云う時は本当に助かる。
涙の別れは苦手だから・・・
リンから念を押されて、俺達の次の目的地はキドの町へと決まった。
ここからだと、2週間くらいの距離になるかな。
キドの町は海があって近くにキド森林がある。
海の幸と森林から獲れる豊富な食材で、食の町として有名な様である。
冒険者が集まる町としてそこそこ有名なので、久しぶりに森林に入って狩りをするのも良いかもな。
麺料理がある町キドか~、楽しみだな。
こうして俺達は次の町へ向かって出発したのであった・・・
次回『第134話:煙が上がる町』をお楽しみに~^^ノ