第131話:再会
リアース歴3237年 7の月8日。
海洋都市エドナ裏門にて・・・
「うほ~、人が大勢いるなぁ!」
「本当ねぇ~、活気があって凄いわねぇ」
「あっ、あそこでイカ焼きが売っていますよ~」
「キュキュ!」
(イカ焼き食べた~い!)
俺達は海洋都市エドナに到着した。
海洋都市エドナは、あのレミオンの父親であるエドナ子爵が治める都市だ。
漁業が中心の都市ではあるが、都市の傍を流れる大河が首都ザーンと繋がっているため、この大河を利用しての船での交易が盛んであり、交易都市ルーラの様にいろいろな物があってとても活気がある街なのだ。
(レミオンは元気かなぁ?ニコルにセンバさん、ベレットはどうしているかなぁ?
皆、ここにいるのだろうか?)
俺達はメイン通りをフラフラと歩く。
イカ焼きやたこ焼き、海の幸の露店が多い。
あっ、露店のおっちゃん一族の肉の串焼き屋も発見。
本当にどの街にもいるなぁ。
皆同じ顔だよ・・・
まずは、道中で狩った魔物の素材を冒険者ギルドで売ってから宿を決めるか。
あぁ~、でも宿を決める前に、先にレミオンの実家にでも顔を出してみようかな。
「アイシャ、冒険者ギルドで素材を売ってからレミオンの実家に顔を出そうと思うけど良いかなあぁ?」
「そうねぇ、そうしましょう!ニコルは元気にしているかしら?」
「レミオンの実家?ニコル?その方達は何方様なのですか?」
「俺とアイシャの大事な友達さ!」
「そうなの。私達にとって大事な、本当に大事な友達なのよ」
「主様と奥様にとって大事なお方達なのですね」
「そうさ!大事な友なのさ・・・」
「貴方・・・」
ケビンの顔が俺の頭の中をよぎる。
陽気に大笑いしている顔だ。
ケビンは俺達の中心で何時も笑っている奴だったっけ。
おっと、一人でケビンの事を思い出すのは止めておこう。
皆、揃った時に一緒にって約束したもんなぁ。
冒険者ギルドに寄った後、エドナ子爵家に行ってみました。
デケェ~!
なんてデカイお屋敷なんだ。
ルザク伯爵の所はお城だったけど、ここはお屋敷の様だ・・・ビックリ仰天のデカさだけど。
お屋敷の正門の前に門番がいる。
まずはここで話をしないとアカンのね。
「あの~、スイマセ~ン!」
「何か用か?」
「私はルークと云う者なのですが、レミオン・様はいらっしゃるので御座いましょうか?」
「レミオン様の知り合いか?」
「ハイ、冒険者仲間と言いましょうか・・・」
「フンっ、冒険者時代の知り合いか!どうせエドナ家に取り立てて貰おうとやって来たのであろうが、生憎とレミオン様は今、首都へ行っていらっしゃっているから不在だ」
ウワァ~、凄ぇ感じ悪ぅ~!
何だこの門番。
「あの~、ではニコルやセンバさんはいらっしゃいますか?」
「いないいない。サッサと帰れ!」
なんだよこの対応は!
もう怒ったぞ~。
「あれ!もしかしてルークとアイシャかい?」
俺達の背後から俺とアイシャの名を呼ぶ声がする。
振り返ってみると・・・
「「ベレット!」さん!」
袋一杯の荷物を両手で持っているベレットが立っていた。
「やっぱり、ルークとアイシャか!髪の色が違うからすぐ分からなかったっすよ」
「元気そうだなベレット!」
「ルークも元気そうだね。アイシャは又一段と綺麗になったんじゃないか?」
「もう、ベレットさんはすぐそうやって~」
「アハハハハ!あれ、そちらは・・・ダークエルフさんか?こりゃ珍しい」
「俺達の新しい仲間だよ!」
「オイラはベレット、よろしく頼むっすよ、綺麗なダークエルフちゃん!」
「リ・リンです!どうかよろしく」
「ベレット、リンを口説くなよ!リンには怖~いお兄さんがいるぞ~」
「げっ、マジっすか!」
俺とアイシャ、ベレットは大笑いをする。
3人共あの時の懐かしさが蘇ったんだろうな。
「あの~、ベレットさん。この方達は本当に若様のお知り合いなんですか?」
先ほどまで、俺達に失礼な態度を取っていた門番がオロオロとベレットに聞いて来る。
「当たり前だ!この人はあの英雄の鉄壁ルークだ。
そして、こちらの女性はエターナの元聖女アイシャだ」
「え!誠で御座いますか?」
「ウソを言ってどうするっす!失礼な態度を取ったんじゃないだろうな?
2人共、若様の大事な親友なんだからな。まぁ、俺もだけどな」
門番は叱り飛ばした後、俺達の方を見てニカっと笑うベレット。
俺も大事な親友だと言ってくれた事がとても嬉しかった。
この後、俺達は屋敷の中へ案内された。
応接間でお茶をご馳走して貰いながら、ベレットから詳しい事を聞いてみると、レミオンはエドナ家の後継者手続きのために伯爵夫妻と共に首都ザーンに行っているそうだ。
3男であるレミオンがどうして後継者になったのかと云うと、長男が事故死、次男が病死と相次いでお亡くなりなったため、急きょ跡継ぎに決まったらしい。
お家のために他家へ出されるだろうと言っていたのに、何が起こるか分からないもんだなぁ。
ニコルは何とレミオンの婚約者として首都に同行している。
ニコルは、レミオンの母親に大いに気に入られ、養子となって他家に嫁がせるよりは、跡継ぎとなったレミオンに嫁がせて義娘にしたいと母親が言い出して決まったそうだ。
センバさんは護衛の中の一人として同行しているらしい。
ベレットは、護衛としては役立たずと言われ、お屋敷で父親のコック長を継ぐべく修行中との事だ。
「まさかレミオンとニコルがねぇ~」
「本当に驚いちゃったわ!」
「若もニコルちゃんも最初は戸惑っていましたけど、今ではすっかり仲の良い婚約者同士っすよ。
誰かさん達みたいに熱々で困ったもんだ!」
「誰かさん達見たいって俺達の事か?」
「他に誰がいるっっすか?」
「何を~!」
「ギャハハハハ!」
楽しい会話は2時間ほど続いた。
レミオン達に会えなくて残念だったけど、ベレットから他の3人の話を聞けて本当に良かった。
ニコルちゃんは、幸せな未来を手に入れた様で本当に良かった。
これでケビンも一安心だろう。
おめでとうレミオン、ニコル!
良かったなケビン!
俺はベレットの話に耳を傾けながら、心の中で祝福の言葉を掛けていた・・・
次回『第132話:ズラビスからの手紙』をお楽しみに~^^ノ