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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
幕間
133/187

第129話:呼び出し

 リアース歴3237年 4の月28日。

 城塞都市ルザクの商店街の一角にて・・・


 本日、ルザク市内のメインストリートにある商店街に新しい小さなお店が開店した。

 その名は「ロダン商会」。

 ダリアの無き父が営んでいたお店と同じ名である。


「お・お嬢!つ・ついにこの日が・・・」

「まるで夢の様でげすよ!」

「お・お前達!」

「「お嬢!」」


 店先で三文芝居の様な会話をしているのはダリア一家の3人である。

 彼女らはついに悲願だったお店再興を成したのである。


「ズラビス殿、早く荷物を運んでしまいましょうよ!」

「おっ、そうでしたな!つい感激のあまり。フィン殿、すぐ手伝います」

「早く片付けて、又一儲けしに行きましょう」

「そうですな!」


 ダークエルフの3人、フィン、ノイン、ノエルがこの三文芝居に苦笑しながら荷物をお店の中に運び込んで行く。

 フィン達は人族の生活にすっかりと溶け込んでいた。


 ダリア一家とダークエルフ達は、ルーク達が去った後、速やかにマナの洞窟のミスリル鉱石発掘に動いた。

 ルークの懸念していたルザク家の邪魔は入らず、ミスリル鉱石の独占に成功した彼らは、2カ月近くで莫大な利益を上げていた。

 利益の1割は情報料としてルークの冒険者ギルド口座に振り込み、残りをダリア一家とフィン達で折半した。

 ダリア一家は、それを元手に店を構えたのである。

 お店自体はまだ小さいが、ルザク市内のメイン通りの一等地。

 彼女らは、ここでお店を更に大きくする事を新たに夢見るのである。


 先日、ズラビスの下に離散したダークエルフ達の情報の一報が届いた。

 ナの国に奴隷として捕まった者が3名。

 エルフの里に逃げ込んだ者が数名。

 フィンは、稼いだお金を使って奴隷となった2名を買い戻す事にした。

 ダークエルフの自分達がナの国に訪れる訳には行かないので、ズラビスに頼んだ。

 エルフの里に逃げ込んだ者には手紙を出した。

 リの国の内情を書き、合流してこっちで新たな村を作ろうと。

 彼らとは2~3カ月したら、再会出来るであろう。

 村を再建するならば、もっと稼がなければならない。

 フィン達も悲願である村の再興に向けて、着々と近付いているのであった。



 お店に荷物を運び込み終わり、一息を入れている所に一人の来客が現れた。

 燕尾服に蝶ネクタイ、何処かの貴族の執事の様である。


「済まないが、ここがダリア様のお店であろうか?」

「ハイ、そうで御座います!ですが、生憎と主人は用事で出掛けております」


 これはウソだ。

 ダリアは荷物運びが嫌で、先ほど居酒屋に逃げ込んで行った。

 たぶん、昼間から一杯ひっかけているのであろう。


「そうで御座いましたか。あっ、申し遅れましたが私はルザク家の執事で御座います。

 主人であるルザク伯爵から、『ダリア様とお会いしてお話をしたい事が御座いますので、至急に御出で頂きたい』と託って参った次第なのです」

「そうで御座いましたか、伯爵様が・・・ならば、私が行った方がよろしいでしょう」

「彼方様が?失礼で御座いますが彼方様は何方様で?」

「あぁ、これは申し遅れました!私はズラビスと申します。

 主人に代わってこのロダン商会を預かる者です。

 伯爵様からのお話となると、たぶん我が友の鉄壁殿に関するお話と予想されますが、であれば返って私の方が好都合で御座いましょう」

「彼方様があの情報屋のズラビス様で御座いましたか。

 分かりました。では是非ともご同行頂きたい!」

「承りました!」


 斯くして、ズラビスはルザク伯爵の下へ急きょ赴く事になった。



 ルザク城内、伯爵の執務室にて。


「急にお呼び出して済まなかったな!」

「お初にお目に掛かります伯爵様。

 私はズラビスと申しまして、主人ダリアに仕える者で御座います」

「其方が情報屋のズラビスであったか。英雄殿から聞いておるぞ」

「有難う御座います。以後、お見知りおき下さいませ!」

「こちらこそな!」


 伯爵とズラビスは、お互いに相手を値踏みする。

 伯爵は、物腰は柔らかいが、目が鋭く頭の回りが良さそうなズラビスを気に入る。

 ズラビスは、偉ぶらず腰が低い伯爵に好感を持つ。

 2人共お互いに対する第一印象は良好の様である。


「伯爵様、今回のご用向きは?」

「ズラビス殿は、英雄殿が貴族に推薦されると云う話を知っておるか?」

「勿論で御座います!」

「流石、情報屋だな。耳が早い!」

「有難う御座います!で、鉄壁殿がそれを避けて身を隠している事が何か問題なので御座いましょうか?」

「ほう、そこまで知っておるか!」

「友の事となれば多少は・・・」

「ふむ。実は私も父上からある程度の話は聞いておるが、英雄殿は堅苦しい貴族社会が苦手で身を隠している様だのう」

「おっしゃる通りで御座います!

 世界を自由気ままに旅して回りたいと言っている御仁ですから」

「羨ましい限りだな!」

「同感で御座います!」


 2人共、ルークの顔を思い出してクスリと笑う。

 そして、伯爵すぐに真顔に戻り、ある一通の書簡をズラビスの前に出す。


「これを読んでみてくれ!」

「これは?」

「エターナのご老公様から送られて来た書簡だ」

「エターナのご老公様からの・・・」


 書簡を受け取り、内容を読み始めるズラビス。

 書いてある内容を見てズラビスの顔は綻ぶ。


『貴族たる義務、公務などは国王からある程度免除で良いお許しを頂いた。

 どうしてもの時は全てワシが代わりに受け持つ。

 お主は今まで通りで構わんから、爵位を受けろ!』


「ご老公様もご苦労様で御座いますな!」

「国王陛下と英雄殿の板挟みだからの!」

「左様ですな!しかし、よくここまでの事がまかり通りましたなぁ」

「私もそう思う!」


『来年の3238年、大母神テーラ感謝祭の間に行われる4年に一度の天下一精霊武術大会の表彰式と共に爵位の叙勲式を行うので必ず出席する事。

 ちなみに天下一精霊武術大会には、ルークはすでに参加が決定しているので逃げる事は許されない!

 英雄が逃げたと後ろ指を刺されたくなければ必ず参加する事』


「鉄壁殿は退路を断たれましたな!これでは受けるしか御座いませんなぁ」

「その通りだ!これではもう受けるしかないのだよ」

「お可哀想に・・・」

「それで其方に頼みがあるだ!」

「私にこの事を鉄壁殿に知らせろと云うのですね!」

「その通りだ。其方しか英雄殿の居場所は分からないと英雄殿から聞いておるからの」

「ハァー!分かりました。そのお役目お受けいたします」


 ルークの居ない所で、本人の意思とは別に何かが動き始めようとしていた。

 この先、ルークの身に大きな転機が訪れようとしていた・・・


次回から新章のスタートで~す^^

次回『第130話:歌一座』をお楽しみに~^^ノ

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