第126話:風と共に去りぬ
4章の最終話で~す^^
リアース歴3237年 3の月2日18時。
城塞都市ルザク市内某酒場にて・・・
「お、居た居た!久しぶりだな、ダリア、ズラビス、トンカラ!」
「何だいお前達かい!」
「久し振りですね、鉄壁殿、聖女殿、リン殿!今晩にでも来ると思っていましたよ」
「皆、久し振りでげす!」
「ダリアは相変わらず素気ないわね!」
「そうですね奥様!」
ズラビスは俺達がが来る事を予想していたか、流石だな。
俺はマナの洞窟に出発する前に彼女達の行きつけのこの店の事を聞いていた。
戻ってから、又一緒に飲もうと約束していたからね。
「おや?後ろに見知らぬ顔もある様ですが、新しいお仲間ですか?」
「新しい仲間とはちょっと違うかもしれないな。この人達はリンのお兄さんと従姉弟だよ」
「リン殿のご家族の方々でしたか。私の名はズラビス、こっちのドワーフがトンカラで、この素気ないのが主人のダリアです。以後、良しなに!」
「「「よ・よろしく・・・」」」
「ズラビス、誰が素気ない主人だって?」
「貴女しか私の主人はいないではないですか」
「フンっ!」
「アンタ等は相変わらずだなぁ!」
「フンっ、鉄壁には言われたくないね。
そうだ!アンタのお陰でこっちは儲けそこなったんだよ。
いったいどうしてくれるんだよ」
あぁ、戦争を早く終結させちゃったから鍛冶で儲けられなかったのか。
これは申し訳ない事しちゃったなぁ。
俺は懐からある大きな石を出す。
「だったら、お詫びにこれを上げるよ。これで許してくれ!」
「何だい?ちっ、ただの石ころじゃないか。
こんなんじゃここの酒代にもならないじゃないか」
「いらないならそれでも構わないけどね!」
「待つでげす!こ・これはまさか・・・」
おっ、流石だねぇトンカラ!
ドワーフは鉱石とか詳しいとか言うもんなぁ。
「これは何なのですトンカラ?」
ズラビスがトンカラに聞く。
「鉄壁殿、これはまさかミスリル鉱石でげすか?」
「正解!流石、トンカラ」
「「ミ・ミスリル鉱石だって!」」
「オイオイ、あまり大きな声を出さないでくれよ!」
「あっ、ゴメン!」
「申し訳ない鉄壁殿!」
ダリアとズラビスが揃って口を押える。
トンカラは相変わらず石を眺めている。
「頼み事を聞いてくれたもう一つ上げるぞ!」
「それは本当かい鉄壁!」
「「本当ですか?」でげすか?」
ウケケケケ!食付く食付く。
「でも何か裏がありそうですねぇ。鉄壁殿が何やら悪い顔をしていらっしゃる」
「でげすな!」
げっ、鋭い!
流石、ズラビス。
トンカラまで疑う様な目で見ないでぇ~。
「そ・そんな事はないぞ!それに儲け話も持って来てやったんだ。俺を信じてくれよ~」
「本当ですかねぇ?どうも怪しい・・・」
「でげすなぁ・・・」
「どうでも良いじゃないか!鉄壁、ホラ話してご覧よ」
「おっ、ダリアは話せる~、そんなダリアは好きだぜ!」
「バ・バカ!」
おっ、照れてる照れてる。
可愛い所もあるじゃないか。
「あ~な~た~~~!」
「ヒッ!」
ギャーーー!夜叉様のご降臨だ。
ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさい!
「さ・さぁ、話の続きをしようじゃないか!」
「だ・大丈夫かい鉄壁?」
「も・問題ない!」
俺の顔はお多福の様に膨らんでいた。
アイシャのビンタの応酬を食らったのである。
誤解だと説明して何とか許してくれたが、まだ少しお冠の様です。
「まずは先に二つほど頼み事を!」
俺は懐からミスリル鉱石を二つ取り出す。
そしてその内の一つをズラビスの前に差し出す。
「ズラビス!これでダークエルフ達の居所を調べて欲しいんだ」
「ダークエルフの居所?」
俺はフィンさん達一族が魔物に襲われてバラバラに離散した事を話した。
途中からフィンさんと話を代わって、詳しい状況を説明して貰う。
「と云う事でお願い出来ないかな?このミスリル鉱石で十分お釣りは来るだろ?」
「分かりました、お引き受けしましょう!
しかし、2~3カ月お待ちして頂く事になりますけど構わないですか?」
「フィンさん良いよね?」
「我々はそれでも構わないが、ただ、その2~3カ月待つ間に私達はどうしていたら良いんだ?
寝泊まりやら食べるにもお金は掛かるのであろう?」
「あっ、それは儲け話の件でフィンさん達にも手伝って貰いたいと思うから心配ないと思うよ!」
「そうか!それなら構わないぞ」
「と云う事で、まず一つの頼み事は終わり!続いて二つ目だけど・・・」
残ったもう一つのミスリル鉱石とミニボウガンを一緒にトンカラの前に差し出す。
「トンカラには、このミニボウガンをミスリル製に改造して欲しいんだよ!」
「何だそんな事でげすか!お安い御用でげすよ」
「有難い!で、何時出来る?」
「一晩あれば充分でげすよ!」
「それは助かるぜ!出来れば明後日にはここを出たいと思っていたんだ」
レントラさんに頼んであった太刀も明日には出来上がると言っていたから丁度良い。
明日、太刀とミニボーガンを受け取って、明後日には次の町に出発出来る。
エルリック様が早く出た方が良いって言っていたからね。
「随分と急なんですねぇ!」
「まぁ、いろいろとあってな!それで最後に儲け話の件なんだけど・・・」
俺は右手の人差し指をクイクイっと曲げて、皆に顔を寄せろと合図する。
他で飲んでいる奴らが聞き耳を立てている様だからね。
この話を他人に聞かせる訳にはいかないのさ。
「マナの洞窟の底にはミスリル鉱石が手付かずで眠っている」
「ほほう!でも、洞窟の底にはかなり強い魔物が居ると聞いていますよ」
「洞窟の底にはミスリルゴーレムが居た。しかし、それは俺が倒した!」
「流石、鉄壁殿ですな!」
「世辞は要らんよ!」
「スイマセン!では、今はミスリル鉱石の取り放題だと言いたいのですか?」
「流石、ズラビス!察しが良い」
「鉄壁殿もお世辞は要りませんよ」
「そうだな!ただ、少しだけ問題があってな。
この事を知っているのは俺達の外に2人居るんだ」
「早い物勝ちと言いたいのですね?」
「その通り!知っている1人はこの街の有名な鍛冶職人レントラさん。
もう1人は朱雀騎士団のアインさんだ」
「鍛冶職人と朱雀騎士団ですか~」
「鍛冶職人のレントラさんは、儲け話とかには興味無さそうな人だったからそんなには心配していないんだが、問題があるは朱雀騎士団のアインさんだ
もし、上官を通して伯爵の耳にでもその事がバレれば・・・」
「ルザク家、嫌、もしくは国の邪魔が入ると言いたいのですね?」
「正解、だから急いだ方が良いんだよ!ただ、この仕事はダリア一家だけじゃ無理だ。
マナの洞窟に行くにはマナの大森林を通って行かなきゃならない。
戦う事に向いていないアンタ達じゃ無理だろ?」
「なるほど!それで先ほど話していたフィンさん達に繋がるのですね?」
「その通りだ!察しが良くて本当に助かる。
フィンさん達にはダリア一家の護衛を頼みたいのさ」
「了解した!それでしたら我々も頼みたいくらいだ」
「商談成立だね!情報料として取り分の1割が俺ね」
「えっ!鉄壁殿も取り分を?」
「当たり前だ!俺が教えて上げたんだから当然の権利だ」
「鉄壁せこっ!」
「鉄壁殿せこいですよ!」
「でげすな!」
「我々もそう思う!」
「貴方・・・」
「主様・・・」
皆してなんだよ~。
良いじゃないか~。
そんな蔑む様な目で見ないで~
嫌~~~~~!
「残りの取り分は、ズラビスとフィンさんで話し合ってくれ」
「分かりましたよ鉄壁殿!後の事はお任せ下さい」
「鉄壁殿、我々の事まで考えて貰って本当に申し訳ない!」
「気にしないでよフィンさん。早く皆見つかると良いね」
「そうだな・・・」
「あっ、そう言えば一つ大事な事を話すのを忘れていた!
もし、又戦争の気配があったら、何としても俺にその情報を届けて貰いたいんだ」
「名将エルリック様との約束で御座いますか?」
「そうだ!エルリック様からこの国を守ってくれとお願いされっちゃったからさぁ。
俺達がどの辺を回っているとかは随時手紙で知らせるから、ナの国がきな臭くなったらすぐに知らせて欲しいんだ」
「心得ました!私に全てお任せください」
「助かるズラビス!それとダリア一家の事は伯爵にも話をしてある。
何か良い情報があったら伯爵にも教えてあげてくれ。報酬は弾むと言っていたぞ!」
「それは有り難い!持つべきものは友ですな」
「友!俺の事を友と言ってくれるのかい?」
「当たり前じゃないですか!」
「そうでげすよ!」
「と云う事は我々も友だな!」
「「そうですねフィン様!」」
ズラビス、トンカラ、フィンさん、ノインさん、ノエルさんまで・・・
あれ?ダリアだけ知らぬ顔だな。
まぁ、君には期待していませんよ、あっかんべぇ~だ!
この後、俺達は大いに飲んで食べて歌ってはしゃぎました。
一緒の酒場に居た人達も巻き込んでの大騒ぎだ。
翌日、春一番の大風がルザクに訪れる。
大風は市内を駆け抜け、街中のゴミやチリ、色々なものを沢山吹き飛ばした。
俺達の姿も一緒に!
その日から、俺達の姿は忽然と消えた。
俺達は風と共にこの街を去ったのだ・・・
次回は4章までの登場人物紹介です。お楽しみに~^^ノ