表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
盾の継承の章
128/187

第125話:密談

 リアース歴3237年 3の月1日22時過ぎ。


 ルザク城入口前の正門広場で名将エルリックと出会った後、俺達は伯爵から晩餐会の誘いを受けて出席し、そのまま城内に一泊する事になった。

 晩餐会は19時から始まり、ルザク家の人達やノリン団長、他にも有力貴族の人達が参加して、優雅な晩餐会となった。

 こう云う場に馴れていない俺達、特にフィンさん達ダークエルフはかなり戸惑いを見せたが、伯爵の配慮のお陰もあって何とか楽しい時間を過ごす事が出来た。

 料理はとても美味しく、リンは脇目も触れず一心不乱で食べていたのが印象的でした。

 本当にブレない奴だよ・・・

 フィンさん達は人族皆が親切に接してくれる事に大いに驚き、感激していた様です。

 これで人族へのわだかまりはもう大丈夫そうかな?


 晩餐会は21時でお開きとなり、俺達には来客用の2人部屋が3室用意され、俺とアイシャとイナリ、リンとフィンさん、ノインさんとノエルさんとにそれぞれ分かれた。

 部屋はかなり豪華です。

 豪華なシャンデリア、派手なカーテン、革製で出来たお洒落なソファ、天蓋付きベッド、バスタブも完備されていて、至れり尽くせりである。

 ようやくアイシャと2人きりになれたよ。

 何時以来かな?

 2人の間に甘い雰囲気が流れる。

 身体が密着し、お互いに見つめ合う。

 顔が自然と近付き、唇が触れ合う瞬間・・・


 コンコンコン!


 ドアをノックする音がする。

 そうだよね!

 そうなるよね!

 たぶんこうなると思っていたよ!

 絶対に邪魔が入ると思ったよ!

 ウェ~ン!何処のどいつだ~?


「英雄様、ご老公様がお呼びで御座います。

 よろしければご一緒にご同行して頂けますでしょうか?」


 エルリック様、彼方でしたか。

 俺も会ってゆっくりと話したい事はありますが、ここは自重して欲しかったです。

 妻と愛を確かめ合いたかったのに~!


 メイドは申し訳なさそうに俺達を案内する。

 俺達がどう云う状況であったか、たぶん勘付いたのであろう。

 俺とアイシャは渋々そのメイドの後を着いて行く。

 案内された部屋はエルリック様の寝室だった。

 部屋に入るとエルリック様がベッドで横たわっていた。


「急に呼び出して済まなかったな、若き英雄殿よ!」

「いいえ!」


 本当だよ全く!


「奥方も申し訳なかった!」

「そんな事は御座いませんわご老公様!」

「まぁ、適当に座ってくれ!」

「「ハイ!」」


 適当と言われてもソファが2人分しかないけどね。

 メイドが俺達に紅茶を淹れてから部屋を出て行った。


「さて、これでゆっくりと話が出来るな!」

「「ハイ!」」

「若き英雄殿、奥方、レントラから聞いたが、其方達は地球の前世の記憶を持っておられるのだな?」

「ハイ、仰せのの通りです!私は稲葉京佑、我が妻は三田村愛子と云う人物の記憶が御座います」

「イナバ、ミタムラ・・・其方達は日本人か?」

「その通りで御座いますご老公様!」

「私はアメリカ人のトーマス・ジャクソンの記憶がある」

「アメリカ人ですか・・・トーマス・ジャクソン・・・ジャクソンか・・・何処かで聞いた様な・・・」

「貴方、知っているの?」

「ん!私の事を知っておるのか?私は南部連合軍の軍人をしておったぞ」

「南部連合軍!まさか南軍の勇将、ストーンウォール・ジャクソン!」


 アメリカ南北戦争の第一次ブルランの戦いで、数に勝る北軍の攻勢の前に南軍の戦線は破られそうになる中、頑強に抵抗を続け、直立不動で指揮にあたっていたトーマス・ジャクソン。

 これに勇気付けられた同軍が『石の壁のようにジャクソンが頑張っているぞ。あのバージニア人たちに続け!』と叫び、南軍は反撃に移り、北軍は総崩れとなった。

 この出来事で、ジャクソンはストーンウォール・ジャクソンというあだ名で呼ばれる事にになったのだ。


「おぉ、そのあだ名を知っているのか?」

「ハイ!アメリカ南北戦争の戦記を読んで覚えていました」

「流石、貴方ね!戦記物の大好きだったもんね」

「南北戦争の戦記物か・・・と云う事は、其方達は私の生きた後の者なのか?」

「その通りで御座います!私と妻は西暦2000年以後を生きた者です」

「何と!西暦2000年以後か」

「ハイ・・・」


 会話は一旦ここで途切れ僅かな沈黙が流れる。

 俺はこの世界と地球との繋がりを考える。

 俺達の様に地球の記憶を持っている者いるが居るのだから、何かで繋がっているのは間違いなんだ。

 だけどその何かが分からない?

 エルリック様は1800年代、師匠は1600年代、俺とアイシャは2000年代、転生者の前世の時代はバラバラだ。

 転生するにあたり、時間軸はあまり関係ない様な気がする。

 他に何か俺達に分からない法則とかでもあるのであろうか?

 ん~、サッパリ分かんないや。


「若き英雄殿よ、其方はこの世界と地球との繋がりをどう考える?」

「フフフフフっ!エルリック様も私と同じ事を考えておられたのですね」

「其方もか?」

「ハイ!」

「思いは同じの様だな!」

「その様ですね!」

「して、其方はどう考えておる?」

「最初、この世界の地図を見て地球の未来かと考えました!」

「この世界の地図?」

「ハイ!このリアース大陸は地球の2億年後を予想した大陸に形とソックリなんです」

「ほう、それは初耳だわい!」

「だけど、地球の未来としたら、過去の文明とかそう云ったものの情報が全くないんですよ!」

「その通りじゃ!私が若い頃、其方と同じ様に遺跡の様なものを探す旅をしたが、全く見つからなかった」

「や・やはりそうなのですか・・・」

「あぁ、全くと言って良いほど見つからなかったよ・・・」

「と云う事は、次に考えられるのは地球との並行世界、つまりパラレルワールドです」

「私の考えもそれと同じじゃよ」

「この世界には地球の化学がお伽噺の様に語られ、地球では精霊術やエルフ、ドワーフなどが同じくお伽噺の様に語られています。

 私達がこの世界で地球の記憶がある様に、たぶん地球でもこの世界の記憶を持った人が居ると考えられるんです」

「確かにその通りじゃ!」

「時間軸の繋がりはよく分かりませんが、この世界は転生輪廻で地球と確実に繋がっていると考えられます。

 どちらかが表でどちらかが裏、もしくはどちらも表なのかもしれませんが・・・」

「転生輪廻か、確か仏教、ヒンズー教でも似たような考えがあったはずじゃな」

「えぇ、そうです!」

「死んであの世に還った霊魂(魂)が、この世に何度も生まれ変わって来るじゃったか?」

「ハイ!まぁ、死んでリアースに還る。もしくはその逆かもしれませんけどね」

「ふむ、なるほどの!それが正しいかどうかは、結局、神様のみが知ると言ったところであろうが、良い意見を聞かせて貰った。

 お陰で少しスッキリしたわい。若き英雄よ有難う!」

「こちらこそ有難う御座いました!」

「若き英雄よ、これからも旅を続けて行くつもりか?」

「ハイ、そのつもりです!」

「今回の手柄で、たぶん其方は貴族の仲間入りをするであろうがそれでもか?」

「え!私が貴族に?」

「そうじゃ!実はエターナの奇跡の時もその話は出たらしいが、まだ未成年と云う事で結局は保留になったと聞いておる。今回の件で再びその話が浮上するのは間違いないわい」

「参ったなぁ~、堅苦しいのは勘弁して欲しいんだけどなぁ~」

「ワハハハハ!身分や出世よりも自由を選ぶか?」

「ハイ!」

「そうかそうか!それも良いであろう。国に縛られる事なく自由に生きると良い。

 おっと、ただし国の一大事な時はよろしく頼むぞ。

 まぁ、そう簡単に国の一大事が起こるものでもないがな」

「ハイ、心得ました!」

「そうなると、早々と身を隠した方が得策じゃのう。

 其方達と繋がりを持ちたい者達がこぞって押し寄せて来るぞ~」

「「え~~~!」」


 俺とアイシャは心底嫌そうな声を上げる。

 ご老公はそれが可笑しかったのか大笑いをする。

 こうして俺達夫婦とエルリック様の密談は終わったのであった・・・


次回で4章の最終話となります^^

次回『第126話:風と共に去りぬ』をお楽しみに~^^ノ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ