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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
盾の継承の章
121/187

第118話:リンの兄

 リアース歴3237年 2の月26日16時前。


 ダークエルフ3人を無事救出した俺達は、ナの兵士の追ってを警戒して走り続けた。

 30分ほど走って、安全に休めそうな場所を見つけて一休みをする。


「怪我をしているのね?治療するから傷を見せて!」


 ダークエルフの女性の腕から血が流れている事に気付いたアイシャが治療しようと近寄る。


「ノインに近寄るな!」


 先ほど舌打ちした男性がアイシャに向かって怒鳴る。


「治療をするだけです!このままでは化膿しますよ」


 怒鳴られたくらいで怯むアイシャではない。

 我が愛しき妻は肝っ玉なんですよ。


「人族が我々に触れるな!」

「頑固ですね全く!」


 アイシャの顔が段々怖くなって来る。

 ギャー!アイシャに逆らわないでよ~。

 夜叉様がご降臨しちゃうじゃないか~。


「いい加減にして下さい兄様!せっかく奥様が治療をして下さると言っているの」


 兄様?そうか、先ほどから反抗的な態度を取っているのがリンのお兄さんだったのか。


「リンよ!お前はどうして人族と一緒にいるのだ?奴隷にもされてしまったのか?」

「違います!主様や奥様は私の大事な旅の仲間です。奴隷なんかじゃありません」

「旅の仲間だと?」

「そうです!まずは奥様に謝って下さい」

「何故、我々が人族に謝らねばならんのだ!」

「兄様、助けて貰っといて何て言い草ですか!」

「我々は頼んでなどおらん!勝手に・・・」


 パシン!

 リンの右手がお兄さんの頬を打った。

 リンの目から涙が零れる。


「何て情けない・・・」

「リン・・・」

「助けて貰っておきながら感謝の言葉すら言えないなんて、父様が聞いたら・・・」

「しかし、人族は今まで我々の事を・・・」

「だから何だと言うのです!私達は確かに人族に追われ苦労してきました・・・

 だけど、この人達は違うんです。嫌、このリの国の人達は違うんです。

 ノインもノエルも聞いて!この国には奴隷なんて一人もいないのよ」

「「「奴隷が居ないだって?」」」

「そう、この国には奴隷が一人も居ないの。

 この国では、エルフもダークエルフもドワーフも獣人族も皆が笑顔で暮らしているわ。

 出会った人達皆が、私を笑顔で私を受け入れてくれたわ」

「そ・そんなまさか・・・」

「今の兄様は、あのエルフ族の長老達と同じで頭が固い頑固爺ですね!」

「リ・リン・・・」

「「リン様・・・」」

「主様、奥様、せっかく助けて頂いたのに失礼な兄でゴメンなさい。

 代わりに私が幾らでも頭を下げますので、どうか許して下さい」


リンは俺とアイシャに深々と頭を下げる。


「リンが頭を下げる事なんてないよ!」

「そうよ!」

「主様、奥様~!」

「まぁ、多少腹が立っていたがリンが代わりに怒ってくれたからね」

「有難う御座います主様!」


 それでも何回も頭を下げるリン。

 本当にリンが頭を下げる事なんてないのに。

 俺達は大事な仲間じゃないか。


「た・助けてくれて、あ・有難うな!」

「「有難う御座いました!」」

 

 なんとダークエルフの3人が頭を下げてお礼を言って来た。


「兄様!ノインにノエルも・・・」


 又、目から涙が溢れだすリン。

 良かったねリン!

 君の気持が通じたみたいだね。


「では傷の手当てをしてしまいましょう。その後は少し早いけど夕食にしましょうね。

 皆さん、お腹を空かしている様だし」

「そうしましょう奥様!」


 アイシャがクスっと笑う。

 確かに今、リンのお兄さん達からお腹が鳴る音がしたもんね。

 お兄さん達は少し恥ずかしそうな顔になる。

 これで少しはわだかまりが解けたかな?


 傷の手当てが終わった後、自己紹介や近況報告も兼ねて夕食にした。

 リンのお兄さんはフィンと言う名で20歳になるらしい。

 褐色の肌に白い髪、顔立ちはリンにソックリだ。

 アイシャに傷の手当てをして貰ったダークエルフの女性の名はノイン。

 18歳でリン達と同じく褐色の肌に白い髪。なかなかの乳神様をお持ちです。

 リンの従姉になり、フィンさんの許嫁なんだってさ。

 最後にノインさんによく似たダークエルフの男性の名はノエル。

 同じく18歳で何とノインさんの双子の弟だ。


 リン達と別れて一族を探しに出たフィンさんは、ウララ大山脈で偶然ノインさんとノエルさんに出会えたらしい。

 その後も一族を探し続けるも足取りがサッパリ掴めず、一度リン達の元へ帰るも誰も居なかった。

 それからリン達の消息を探し続けていたらしい。

 マナの大森林での捜索を諦めて、湿地帯の方まで足を延ばした先でナの国の兵士に見つかり、捕獲されそうになった所を俺達に助けられたの事だ。


 リンの方からもフィンさんにこれまでの事を話す。

 フィンさんが出掛けて行った後にブラックウルフに襲われ母親とウララ大山脈に逃げ込む。

 何時の間にかラウの大森林に迷い込んでしまい、そこで母親は傷が元で他界。

 リンも死にかけていたが、偶然にも俺達に保護される・・・オイ、ちょっと待て!

 死にかけてじゃなくて、空腹で襲い掛かって来たの間違いじゃないか?

 保護じゃなくて、拉致られて食べ物に釣られて一緒に来る事になったんだよね?

 ウソを言ってはいけないなぁリンよ!

 その後も話を続けるも自分の都合の悪い所だけは隠して話すリン。

 君って子は・・・


「ねぇ、リン!」

「ハイ、何ですか主様?」

「お兄さんも見つかった事だし、これからリンはフィンさんと共に行動するのかな?」

「え!そ・それは・・・」

「違うのかい?お兄さんを探すためにも一緒に旅をする気になったんじゃないのかい?」

「それはそうなんですけど・・・」

「リンよ、私達と一緒に来ておくれ。そして仲間を探そう!」

「兄様・・・」

「家族と一緒に居た方が良いと思うよリン!」

「そうなんですけど、まだ海鮮料理と云う物を食べてないし・・・あっ!」


 ボロを出しましたねリン。

 食い意地の張る君なら必ずこうなると思っていましたよ。

 ウソを言った罰として少し怒られるが良いさ。


「リン、お前は俺達よりも食べ物を取ると云うのか?」

「ち・違うの兄様!これは・・・」

「クレープ!」


 ピクっ!

 リンがクレープと言う言葉に反応する。


「一角ウサギの照り焼き!」


 ピクピクっ!

 もう一声か。


「アイシャのカレーライス!」


 ピクピクピクっ!


「兄様、ゴメンなさい!私やっぱり主様達と一緒に行きます」

「お・お前と云うやつは!」

「エルフ族の味気ない料理なんてもう嫌なの。

 わ・私は・・・主様によってもう戻れない身体にされてしまったの」


 ちょっと待て~!誤解を招く言い方はやめい。


「貴様ぁ~、妹に何をした~!」


 フィンさんが、俺の胸倉を掴む。

 

「何もしていないってば!ア・アイシャ助けて~」

「あ・貴方まさか?」


 ギャー!アイシャから負のオーラが~。


「そんな訳ないじゃないかアイシャ!俺が愛しているの君だけだって」

「そ・そうよね!私だけだもんね。安心して下さいフィンさん」

「ほ・本当か?」

「えぇ!リンちゃんも誤解を招く言い方はダメよ!」

「申し訳御座いません奥様!」


 アイシャでなく俺に謝れ~。

 リンを懲らしめるつもりが、とんだしっぺ返しを食らってしまったよ。


「リンよ、本当に俺達の所に戻らないつもりなのか?」

「ゴメンなさい兄様!美味しい食べ物だけが動機じゃないの・・・私は今、主様から薬学を学んでいるの!」

「薬学だって?」

「そう、一族に役立たせるために薬学を習っているのよ。

 だから、それを完全に学び終えるまでは主様達から離れる事が出来ないのです」


 必死だなリンよ!

 そして、これまたウソをついてしまいましたね。

 薬学を学んでいるのは一人立ちしても良い様にであって、一族のためにとは一言も言っていなかったよね?

 都合の良い様に言いよってからに!

 でもまぁ、俺達と一緒に行きたいと言ってくれるのは正直嬉しい。

 ここは少しだけ手を貸して上げようかな。


「あぁ、俺から一つ提案があるんだが良いかな?」

「「「「「提案?」」」」」


 皆が一斉に俺を見る。


「フィンさん達もルザクまで一緒に行かない?」

「私達も一緒に?」

「えぇ、そうです。フィンさん達は一族探をしているんでしょ?」

「勿論そうだ!」

「フィンさん達はウララ大山脈の中では、まぁ自由に探せるだろうけど、例えばすでに奴隷として捕まっちゃている人とか、何処かに身を寄せているとかの情報は得られる?」

「嫌、そう云うのはちょっと・・・」

「実はさ。俺達がこれから向かう城塞都市ルザクには、凄腕の情報屋の知り合いがいるんだよ」

「凄腕の情報屋?」

「そう云う事を調べるのに長けた奴だから、相談してみる価値はあるよ思うよ」

「なるほど~」

「それにフィンさん達も一度リの国の町を見学してみるのも良いと思うんだよね。

 フィンさん達は、一族が見つかったら又山のの中で隠れながら暮らすの?」

「そ・それは・・・」

「先ほどリンも言っていたけどこのリの国は奴隷が居ない。

 王族や貴族はいるけど、まぁ大半が平民だから、ある意味皆が平等で自由なんだ。

 皆でリの国に来ると云う選択肢もあって良いんじゃないかなぁ?」

「我々がリの国に?」

「まぁ、それはかなり先の話だろうから今はそう深く考える事もないか。

 兎に角、街に行けばその情報屋に頼む事も出来るだろうし、リンの言う事や考え事が少しは分かって上げられるんじゃないかと思う」

「確かにそうだが、我々が人族の町に・・・」

「ねぇ、フィン様!私は良い提案だと思います」

「ノイン、急にどういたんだ?」


 今まで黙って話を聞いていたノインさんがフィンさんに意見をする。


「リン様の今の生き生きとする姿を見て、私思ったんです。

 我々もリン様の様に変わらなければ行けないのではないでしょうか?

 私達は今まで他者との交わりを避け、隠れる様に暮らして来ました。

 このまま皆が見つかって元の様に戻ったとしても、又何者かに襲われて同じ事を繰り返すのではないでしょうか?

 このままでは一族は滅んでしまうと思うのです。

 もし、我々皆がリン様の様に生き生きと生きて行けるのなら、それは一族の未来にとって良い事だと思うのです・・・」

「フィン様、私も姉上と同じくそう思います」

「ノイン、ノエル・・・分かった!ルザクと云う町まで一緒に行ってみよう」

「「フィン様!」」


 こうして、フィンさん達はルザクまで一緒に行く事になったのであった・・・


次回『第119話:戦争孤児』をお楽しみに~^^ノ

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