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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
盾の継承の章
120/187

第117話:救出

 リアース歴3237年 2の月26日15時頃


 マナの洞窟を出発して7日目。

 俺達は城塞都市ルザクを目指して森林の中を進んでいる。

 マナの洞窟に来る時はオドの村まで街道を使い、後はウララ大山脈に沿う様に南下して来たが、帰り道は北東に位置するルザク目指してほぼ一直線に向かっているのだ。

 この道を知る者は朱雀騎士団関係者と極一部の人達だけらしい。

 ナの国を警戒して、哨戒活動のために作られた道だそうだ。

 そう言えば、この辺はリの国とナの国の国境付近だっけ。


 太陽が少し西に傾きかけて来た頃、長かった森林地帯をようやく抜けて、大分見通しが良い湿地地帯へと入った。


「我々の後をしっかりと着いて来て下さいね!

 道から外れたら沼地に足を取られる場合もあるので気を付けて下さい」

「分かりました!」


 アインさんが操る馬車の後ろを2体の馬型鉄人君が続く。

 鉄人君1号には俺とアイシャ。

 殿を走る鉄人君2号にはリンとイナリである。


「主様~!」


 後ろから俺を呼ぶリンの声がする。

 俺は振り返りる。


「どうした~?」

「イナリ殿が人の気配がするとおっしゃっております!」

「人の気配?」

「ハイ!」

「分かった!」


 俺は鉄人君1号にスピードアップの指示を出し、馬車と並走する様に走らせる。


「アインさん、一度止まって~!」

「どうしたんですか英雄殿?」

「俺の相棒が人の気配がすると言っています!警戒のために一度止まって下さい」

「了解しました!」


 馬車のスピードがようやく落ち始め、そして完全に止まる。

 鉄人君1号2号もそれに合わせて止まる。


「イナリ、どの辺から人の気配がするんだ?」

「キュっキュ、キュキュキュ~!」

(右前の方からする!結構大勢の人がいるみたい。血の臭いもする)

「右前方に大勢の人が居て、血の臭いもすると言っておられます!」

「血の臭いか!」

「ハイ!」

「ん~・・・アインさん、ここで待機していて下さい。様子を見て来ます」

「分かりました!お任せ致します」

「主様、ならば私とイナリ殿で見て参ります!」

「大丈夫か?」

「ハイ!私の目の良さとイナリ殿の嗅覚と聴覚があれば大丈夫です」

「分かった!済まないが頼む」

「ハイ!では行って来ます」


 リンとイナリは2号君から降りて、東の方へ駆けて行った。

 10分ぐらい経ったであろうか。

 リンが息を切らせ姿を現した。


「主様!ここからしばらく行った所に、ナの国らしき兵士50人ほどとダークエルフ数名とが・・・兄様が戦っております。どうか兄をお助け下さい!」

「え!お兄さんが?」

「ハイ!お願いします、早く!」

「分かった!アインさん達はこのまま先に行って下さい。俺達はダークエルフ達を助けに行きます」

「し・しかし君達だけでは!」

「俺達の事は大丈夫です!なんとかします」

「しかし!」

「アインさん急いで!ナの兵士が此処まで来ているのですよ。

 彼方はこの事をルザクに一早く知らせなければならないでしょう」

「分かった!済まない英雄殿」

「ルザクで又会いましょう!」

「あぁ、気を付けてな英雄殿!」

「ハイ!では」


 リンとイナリは鉄人君2号に乗り待っている。


「リン行くぞ!案内してくれ」

「ハイ、主様!」


 俺達はアインさん達と別れて、道なき湿地帯を進む。

 沼地に足を取られないか心配だったが、リンが一度通って来た場所だから大丈夫と信じて進む。

 程なくして人だかりが見えて来る。

 ナの兵士はリンの報告通り50人ほどか・・・ダークエルフは、1・2・3人か。

 その内の一人がリンのお兄さんなんだな。

 ダークエルフ3人が背中合わせで固まって360度警戒している。

 ナの兵士は50人ほどが円になってダークエルフ達を囲んでいるのか。

 馬型鉄人君の上から見ているので陣形が丸わかりだ。

 距離はここから80mほどだ。

 さて、どうするか?


「リン、イナリ、こっちに飛び乗れ!」

「え!ハ・ハイ」

「キュ!」


 リンとイナリは、2号からジャンプしてこっちの1号に飛び乗る。


「2号はそのままダークエルフの元まで突っ込め!

 アイシャとイナリは遠距離で援護を」

「分かったわ!」

「キュ!」

「リンは、1号の手綱を頼む!そして、2号が囲いを破ってダークエルフ達の元に辿り着いたら、大声で2号君に乗る様に言ってくれ!」

「分かりました!」

「俺はナの兵士の攻撃を土の精霊術で何とか食い止める!」


 アイシャの矢とイナリの狐火がナの兵士を襲う。

 突然襲われたナの兵士は動揺する。

 そこに大型の馬型鉄人君2号が、ナの兵士を吹き飛ばしながらダークエルフの元に近付く。

 突然の大型ゴーレム馬の乱入で混乱するナの兵士とダークエルフ。


「兄様~、ノイン、ノエル、そのゴーレム馬に早く乗って~!」


 リンが大声で叫ぶ。


「リ・リンなのか?」

「「リン様?」」

「早く~!」


 ダークエルフの3人は訳が分からない様であったが、リンの存在で助けに来たとだけは辛うじて分かったらしく、2号に飛び乗る。


「に・逃がすな~!」

「「「「おぅ!」」」」


 ナの兵士達が、慌てて2号を押さえ様と駆け出す。

 そうはさせないよ!


「出でよ壁!『ウォール!』」


 2号とナの兵士の間にコの字の土壁が立ち上がる。

 壁がないのは俺達の方だけだ。

 この間にもアイシャの矢とイナリの狐火の攻撃は続く。


「2号来い!」


 ダークエルフを乗せた2号は一気に駆け出す。

 3方を壁で塞がれたナの兵士達は手出しが出来ず、こちら側の1方の兵士だけが2号を押さえようとするが、逆に2号の勢いに吹き飛ばされる。

 2号はあっという間に囲いを抜け出す。

 よしここまで離せば後もう少しだ。


「出でよ壁!『ウォール!』」


 俺は再度土壁を立ち上げる。

 2号とナの兵士の間に立ち上げた土壁で壁の向こう側のナの兵士達が見えなくなった。

 これで救出はほぼ成功だ。

 最初はどうなるかと思ったけど、何とかなったな。

 壁の向こう側から矢が飛んで来るが、当てずっぽうに放つ矢など大して怖くない。

 後はこのままトンズラさせて頂きましょう。


「リン、脱出だ!」

「ハイです!」


 1号が北東を目指して駆け出す。

 2号が追い着いて来て並走する。


「ちっ、又人族か!」


 あっ、舌打ちしやがった!

 2号に乗っているダークエルフの一人が声を発した。

 俺達を見つめるその目は、怒りに満ちている目であった。

 何だよ!せっかく救出してやったのにさ。

 重々しい空気が俺達の間に流れていた・・・


次回『第118話:リンの兄』をお楽しみに~^^ノ

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