第114話:ゴーレム対ゴーレム
リアース歴3237年 2の月19日15時頃。
青白く輝く巨体のボディに両手だけ血で真っ赤に染めたゴーレムが、俺達の目の前で見下ろす様に立っていた。
「う・うわ!て・鉄人君、奴を頼む。アイシャとリンは援護を頼む」
「「ハイ!」」
俺は慌てて指示を出し、辛うじて一人だけ助け出すことが出来た騎士を引きずりながらゴーレムから引き離す。
くっ、騎士の鎧が重てぇ!
俺はヒーヒー言いながら騎士をこの広い空洞の出口付近まで運ぶ。
そこには先ほどのドワーフのおっさんが岩の影から俺達の様子を見ていた。
「おっさん、俺は仲間を援護しに戻るから、この騎士を頼む!」
「分かった!気をつけろよ」
「あぁ、分かっている!」
俺は騎士をドワーフのおっさんに預け、青白いゴーレムの所に戻ろうと振り返る。
視界に入ったのは鉄人君の右腕のパンチとゴーレムの左腕パンチがぶつかり合う瞬間だった。
ガン!っと鈍い低音が響く。
鉄人君の右腕が粉砕された。
「なっ!」
俺の自慢の鉄人君が競り負けただと!
鉄人君は、今度は左手でパンチを繰り出す。
ゴーレムは鉄人君に合わせる様に右手のパンチを出す。
再びガン!っと鈍い低音が響く。
右腕に引き続き左腕までもが粉砕される。
「クソっ!何て硬い奴なんだ」
俺は太刀の柄に手を添える。
「土の精霊達よ!土なる力を我に与え給え!うなれ地を這う刀『地列斬!』」
少し詠唱を短くする事に成功している地列斬をゴーレムに向かって放つ。
地面から突き出た刃がゴーレムの右足を襲う。
地列斬がゴレームの足にぶつかると奴の右足が一部だけ砕ける。
ゴーレムは体勢を崩し、右ひざを地に着ける。
よし今だ!
「飛燕!」
俺のとっておきの技を繰り出す。
俺の飛燕はゴーレムの頭目がけて飛んで行く。
飛燕がゴレームの頭を襲う。
「何っ!」
ゴーレムの頭は何も無かったかの様にそのままであった。
地列斬は効いたのに飛燕が効かないなんて・・・
俺は太刀を両手で握りしめゴレームに突っ込む。
突っ込む俺を援護しようとアイシャの矢とリンの苦無が飛んで行くがはじき返される。
俺は膝が着いている右太もも辺りを狙って右上から左下に斜めに斬りつける。
キン!
甲高い音がして、俺の両手は痺れる様な衝撃を受ける。
「あっ!」
お・折れちゃったー!
俺の太刀が半分くらいからポッキリと折れてしまったのだ。
俺の大事な太刀が・・・
師匠から貰った大事な大事な太刀が・・・
チクショー!
「貴方!」
アイシャが声を上げる。
俺はアイシャの声で我に返る。
ゴーレムの右パンチが目の前まで来ていた。
俺は身体を左にずらし辛うじて直撃を避ける。
直撃は避けたが右の肩をかすめたので、身体が2mほど吹っ飛ぶ。
危ねぇ、今は嘆いている暇じゃない!
俺はゴーレムから少し距離を取る。
こいつをどうやって倒せば良いんだ?
どうすれば?
「チクショー!どうすれば奴を倒せるんだ?」
「奴の身体はミスリルで出来ておるんじゃ!
物理攻撃ではなく、何か別の方法が良いはずじゃ」
俺の悲鳴の様な絶叫に誰かが答える。
振り向くとあのドワーフのおっさんだった。
「ミスリル?」
「そうじゃ、奴はミスリルで出来たこの空洞を護るミスリルボディの守護神!・・・のはずじゃ?」
コケっ!
俺はこけそうになる。
最後は疑問形かよ。
でも、ミスリルで出来た空洞か。
俺は周りを見渡す。
空洞の中はゴーレムの身体と同じ様に確かに青白っぽい。
ミスリル鉱石と云うのは本当なのかもしれない。
ハっ!そうか・・・だからか。
俺はある事に気付く。
地列斬が奴に効いたのにそれより強力であるはずの飛燕が効かなかった訳が。
であればきっとこれなら・・・
「新しき従者よ出でよ!『ゴーレム!』」
俺は新たに鉄人君を生成する。
その鉄人君は目の前のゴーレムの様に青白くに輝いていた。
「やれ、鉄人君!」
鉄人君はゴーレムに向かって走り出す。
そのまま左腕を大きく振りかぶりゴレームに向かってパンチを繰り出す。
ゴーレムの方も又もやこれに合わせる様に右腕のパンチを出して来る。
ガン!3回目の激突だ。
今度は両者の腕が粉砕する。
よし!
俺の考えは正解だった様だな。
鉱石の硬さについては詳しく分からないけど、同物資同士がぶつかり合ったら、何も起こらないか両方とも砕けるかのどっちかじゃないと思ったんだよね。
しかも、地列斬で1度ミスリル同士がぶつかって砕けた所を見ていたから、ある程度の自信はあったけどさ。
後はゴーレムの魔石が何処にあるかと云う事だ。
魔石を破壊すれば、たぶんこの戦いは終わるはずだ。
俺はゴレームを観察する。
普通の魔物なら心臓の位置か身体の中心にあるはずなんだけど・・・
ん~、分からん!
取りあえず身体に中心辺りを狙って行くか。
俺はトンカラが作ってくれたミニボウガンを左手で構え、ミスリルで作った特殊弾を装填する。
身体の中心中心と!
狙いが定まりミスリル弾を2射連続で放つ。
ガキっ!と云う音がしてゴレームの胸にミスリル弾が命中して、奴の胸に小さなヒビを入れる。
「鉄人君、あの傷目がけて、もう1度パンチだ!」
鉄人君はは残った右腕を大きく振りかぶりパンチを放つ。
ゴーレムをこれを阻止しようと左腕で迎え受ける。
鉄人君のパンチは僅かに軌道を逸らし、パンチ同士はぶつからず交差してクロスカウンターの様な形でお互いの胸に当たる。
一瞬、時が止まったかの様に両者の動きが止まる。
ピキっ!ピキピキピキピキ!
ゴレームの胸を中心にヒビが広がって行く。
そして、ガラガラと身体が崩れ出した。
鉄人君の方は僅かなヒビが入った程度で済む。
「ふぅ~、先に楔を入れておいて正解だったな!」
俺は疲れがドッと出てその場に座り込む。
冷や冷やしたけど、何とか生き延びたな。
「あ・貴方~!」
アイシャが泣きながら俺に抱き着いて来てキスをして来る。
心配をかけてゴメンね。
だけど、人前でこれは恥ずかしいじゃないかアイシャ!
そう思いながらもアイシャを受け入れ抱きしめ返す。
あぁ~生きている実感がするわ。
俺達は何とか強敵のミスリルゴーレムを倒すことが出来たのであった・・・
次回『第115話:衝撃の一言』をお楽しみに~^^ノ