第107話:休日の感謝祭
リアース歴3237年 大母神テーラ感謝祭4日。
俺達は大母神テーラ感謝祭の期間を、冒険者稼業はお休みにして目一杯楽しんでいる。
リンを人族の生活に慣れさせるためでもあるんだけどね。
感謝祭1日目は教会へ初詣に行った。
この世界のテーラ信教はキリスト教と仏教がごっちゃになっていて、感謝祭の時に教会へ初詣に出掛けるのが当たり前なのだ。
銅貨1枚をお布施としてシースターに払い、テーラ像を拝んでお祈り事をお願いする。
本当にごっちゃごちゃで訳分からん。
初詣の帰り道は感謝祭用に出店している店を一つ一つ見て行き、露店巡りをした。
リンゴ飴もどきやチョコバナナもどき、わた飴やクレープ何かもあって、皆でいろいろな物を食べ歩きしました。
普段は俺達の影に隠れているリンであったが、食べ物を扱っているお店に行くと愛想良く挨拶をする・・・お前は美味しい食べ物を売っている人だけに懐くんかい。
全くどうしようもない子だよ!
そう言えば、この町にも一族で肉の串焼きを商売している露店のおっちゃんの店を見つけました。
ここでのおっちゃんはエターナの町のおっちゃんの従弟になるらしい。
ほ・本当に顔も声も皆ソックリです。
ポケ〇ンの女医さんと同じなんです。
これはリアース世界の七不思議の1つと言っても過言ではないと思います・・・
2日目はリンの生活雑貨を揃えるために商業ギルドへ行った。
女性物の下着などはアイシャにお任せてして、必要な物はドンドンと買いました。
買わない物でもリンの勉強のために一つ一つ説明しながら教えて行ったために、商業ギルドで丸1日潰れました。
まぁ、楽しかったから良いんだけどね。
3日目は冒険者ギルドに行って、リンの冒険者見習いの登録をして来ました。
誕生日が4月10日と言っていたので、本登録まではすぐですね。
冒険者見習い登録が終わった後は武器屋と防具屋巡りをしました。
リンの武器や外套に防具を買うためです。
短刀は自分が今まで使っていた短刀と母親の形見の短刀があるので特にいらないと言われたので、投げ用の小苦無を探しました。
この町には武器屋は3軒あったのですが、結局扱っている店はなかった。
流石、レアな武器。
苦無なんて扱う人はそういないよなぁ。
仕方がないのでナイフを苦無の代用として買いました。
全部で12本です。
リンは3本ずつ束ねて身体の至る所に忍ばせて行きます。
本当に忍者みたいだわ。
武器屋の後は防具屋です。
身を護るためなので皮系の防具を薦めたのだけど、動き辛さが問題みたいで、最終的には胸と心臓の部分だけを護るパーツ的な皮防具に決めた。
後は鉄で出来た手甲と俺達と同じ様な外套とロングブーツを買った。
全部が黒色で俺達夫婦以上に真っ黒です。
この3日間で出費が金貨2枚を越えました。
ラウの滝で摘み取った魔薬草をマジックポーションにして売った金額とほぼ同じです。
臨時収入はあっという間に消えて行きました。
まぁ、リンのため、仲間のために使ったお金だから良しと云う事にしよう・・・
懐が減って寂しくなると、急に次の仕事を考えてしまうの冒険者としての性分なのでしょうか?
感謝祭4日目の今日は足がついつい冒険者ギルドに向かってしまった。
感謝祭が終わったら次の町へ行こうと皆で決めていたので、又荷商隊の護衛の仕事でもあると助かるんだけど。
このラウの町から次に大きめな町を目指すとなると、北方面の首都ザーン行きか東方面の城塞都市ルザク行きかのどちらかとなる。
俺達は依頼掲示板に張られている依頼書を眺める。
リンは依頼掲示板を見るのは初めてなので、ここでも勉強がてらいろいろな依頼について教えて行く俺達。
依頼内容について順々に教えて行くと一つの依頼に目が留まった。
『急募!城塞都市ルザクまでの乗り合わせ馬車の護衛依頼求む!』
お!グ~ッドな依頼があるではあ~りませんか。
人員に欠員が出たため3名ほど追加募集か・・・ふむふむ、こっちも3人だし丁度よろしくてよ~。
出発は1の月1日か・・・おぉ、これも好都合で丁度良い。
「貴方、これ!」
「あぁ、俺も今丁度見ていたよ!」
「これに決まりね!」
「そうだね!早速手続きをするとしよう!」
俺はその依頼書を掲示板から引っぺがして受付カウンターに持って行く。
感謝祭中で、休みの冒険者が多いので受付はガラガラだ。
「すいませ~ん!この依頼お願いしたいんですけど」
「あ~、ハイハイ!依頼書の確認をしますので少しお待ち下さいね」
「ハイ!」
受付カウンターのお姉さんが笑顔で対応してくれる。
依頼書を渡すと、お姉さんは依頼書を見ながら一人でブツブツと独り言を言いながら内容を確認して行く。
「貴方お一人で受けられるのですか?」
「嫌、後ろにいる妻と仲間と合わせて3人です!ただ、その内1人は見習いなんですけど・・・」
「1人は見習いですか・・・では、先方に直に聞きに行って頂いてもよろしいでしょうか?
私達には判断がつきませんので!」
「了解です!」
「取りあえず、こちらでの依頼の受付はOKにしておきますので、後はこの受付受理票を持って、先方に尋ねて下さいね。もしダメだったら又持って帰って来て下さい」
「分かりました!いろいろと面倒でスイマセンでした」
「いえいえ、承認して頂けると良いですね!」
「有難う御座います!」
さて、次は依頼者の所へ行かねば。
依頼者は商人ギルドか。
まぁ、乗り合い馬車は各町の商人ギルドが担当だから当たり前か。
俺達は慌ただしく商人ギルドへ向かい、担当者と会って事情を説明した。
リンは見習いだけど冒険者としての能力はすでに一人前だと強く主張して、無事に依頼を引き受ける事が出来た。
フゥ~、良かった良かった!
これで後は出発当日の朝8時に商人ギルドに行くだけだ。
ん~、次の仕事も決まってホッとしたよ。
この町でのんびり出来るのも今日と明日の2日だけか。
明後日からは護衛依頼の旅で大変な日々が始まる。
残りの休日を旅支度の買い物でもしながら楽しまななくちゃな。
そんな事を考えていると、ある重大な事に気が付く俺。
「あっ!そう言えばこの町に来てから、いや、それ以前にリンと出会ってからアイシャとエッチをしていない!」
ヤバイ!つい思っている事をそのまま口に出してしまった。
俺は慌てて自分の口を押える・・・口を押えても今更だけどね。
俺達夫婦はリンと出会ってからエッチをしていないのだ。
この町に来て部屋を取った時も、リン1人を別の部屋にするのは可哀想だったので、結局同じ部屋で寝泊まりしたのだ。
一緒に居れば当然エッチな事など出来るはずもない。
後ろを振り向くとアイシャが赤い顔をしてプルプルと震えている。
ちなみにアイシャの横に居るリンも、俺の言葉を妄想してか顔が真っ赤です。
もう、おませさんなんだから!
再びアイシャに視線を戻すとアイシャのプルプル感が大きくなって来た。
あっ、これはアカン!
アイシャが爆発寸前ですがな・・・
「あ・貴方のバカーーー!どうして貴方の頭はエッチな事ばかりなの~。
リンちゃんの前で恥ずかしい事を言わないで頂戴!」
「ヒィーーー!」
ハイ、アイシャ山が噴火しましたよ~。
盛大に噴火中であります。
噴火と共に思いっ切り頬にビンタを食らいました。
10mは吹っ飛びましたよ・・・
結果から言うと残りの2日間もアイシャとエッチな事は全く出来ませんでした。
俺のムスコが泣いていたのは言うまでもありません。
俺のお預けは何時まで続くでしょうか?・・・
次回『第108話:乗り合い馬車の護衛』をお楽しみに~^^ノ