第103話:忍者?
リアース歴3236年 12の月24日8時半。
ダークエルフの少女リンが旅に同行する事になった。
ちょっと残念な子だけど、悪い子では無さそうなので心配はなさそうだ。
リンを仮牢屋の中から出して上げた。
明るい所で見るリンの姿は、ダークエルフ特有の褐色の肌が実に映えて、活発そうな元気な女の子に見える。
髪は褐色の肌と相反した色の白色でこれが又映えて綺麗だ。
美人で胸もなかなかあるし、男は放っておかないなこりゃ。
俺はアイシャだけで良いので放っておくけどね。
「さぁ、遅くなっちゃったけど朝ご飯にしましょう!」
「朝ご飯!」
「そうよ!リンちゃんもお腹が空いたでしょ。
朝ご飯でも食べながらもう少しお互いの自己紹介でもしましょうね」
「ハイ!」
おうおう、元気の良い返事だ。
リンはアイシャに懐いた様だな。
餌付けがしっかりと効いていますね。
胃袋をガッチリと掴んだ者が常に勝者ですな・・・
今日の朝食はパンとコーンスープもどき。
パンをスープに浸してから食べると美味しいんだよ。
「ん~~~、美味しい~~~!幸せ~~~!」
リンは感激している様です。
「まずは俺から自己紹介するか。 俺は土と聖の加護持ちで・・・」
「これ凄く美味しいですね~」
「メイン武器は刀で・・・」
「でしょう!このコーンスープもどきにパンを浸すとこれ又美味しいのよ!」
「出身はルタの・・・」
「本当だ!パンに浸すとこれまた絶品です~」
「・・・」
「良かったわ!」
「ムキーーー!俺の話を聞け~。俺泣いちゃうぞ~~~!」
人の話を無視して会話しやがって~。
独り言みたいで寂しいじゃないか~。
本当にないてやるからなぁ。
ウェ~~~ン!
体育座りをして膝に顔埋め、いじけポーズを取る俺。
「あらあら、いじけちゃった!」
「ゴメンなさいです」
「フンだ!」
「あ・な・た~、いい加減にしなさいよ~!」
ビクっ!
背筋に冷たい物が走る。
「ハ・ハイ!」
立ち上がり直立不動になる俺。
キャー!アイシャからどす黒いオーラがゆらゆらと見える・・・気がする。
アイシャが夜叉に成りかけているよ~。
ゴメンなさいゴメンなさい!
「まぁ、良いわ!座んなさい!」
「ハイ!いじけてゴメンなさい・・・」
「話を聞いて上げなかった私達も悪かったわ。もう1度自己紹介を始めて」
「ハイ!」
「リンちゃんも食べる事に集中してないで、ちゃんと話を聞いてあげてね」
「ハイです!」
「では改めて・・・俺の名はルーク、土と聖の加護持ちでメイン武器は刀、ルタの村出身で15歳。
冒険者の間では『鉄壁』の二つ名で通っている。以上」
「土と聖のダブルですか~、二つ名があるってやっぱり凄い人だったんですね!」
エッヘン!
凄いだろう。
「では次は私ね。私の名はアイシャ、風と聖の加護持ちでメイン武器は弓、エターナの町の出身で15歳。ルークとは5カ月前に結婚して夫婦よ」
「ほえぇ~!と云うと新妻さんですか~、何かその・・・羨ましいです」
「ウフフフフ!」
新妻と言われてよっぽど嬉しいのねアイシャ。
又腰をクネクネさせて照れてますがな。
「最後は私ですね。私の名はリン、闇の加護持ちでメイン武器は短刀です。
一応エルフの里の外れが出身で良いのかな?14歳で、あの・・・これから宜しくお願いします」
「あぁ、よろしくな!」
「よろしくね!」
「で闇の精霊術がどう云う術なのか詳しく分からないんだけど、昨晩みたいに影を操る術が多いのか?」
「そうですね。自分の影を自由に操って物を動かしたり出来ます。
後は、暗闇の中では身を隠すことが出来ますね。
私はまだ出来ないけど、変装の術や相手に向けて幻想を見せたりとかも出来るみたいです」
「武器が短刀で影を操るか・・・これで手裏剣でも投げれたら、まるで忍者みたいだな」
「手裏剣?忍者?何ですかそれは?」
「あぁ、異文化の話だから忘れてくれ」
「そうですか・・・手裏剣と云うのはよく分かりませんが、こんな物なら戦闘中によく投げますよ」
リンは懐からある物を取り出す。
「「苦無!」」
それは忍者が投げる苦無そのものであった。
大きさは小苦無と言われる少し小さめな物だけどね。
アイシャも一目で苦無と分かったんだね。
流石、元時代劇大好き少女。
忍者の事も詳しいんだよねぇ。
それにしても影の術に短剣に苦無、これって完全に忍者スタイルだよな?
ダークエルフの先祖に忍者の転生者でも居たのかなぁ?
非常に興味深い。
この世界はやはり地球と何だかの繋がりがある事は間違いなさそうだ。
その何かがよく分からないけど・・・
「ちなみに影の術ってどんな事まで出来る?」
「自分の影を伸ばして物を動かしたり取り込んだり、取り込んだ物は私の手元に取り寄せるとか・・・くらいかですかね」
「そっか~、例えば影で物を動かせるなら逆に拘束したりとかも出来る?」
「あぁ、それならたぶん出来ると思います!」
ほう、それが本当に出来るならかなり便利じゃね?
「後、自分の手元から影の先に剣を突き刺したりとか出来そう?」
「あっ、それも出来そうですね!英雄殿は考える事が凄いのですね」
「英雄殿は止めてくれ!恥ずかしいからさ」
「では主様で!」
「「主様?」」
「ハイ!でアイシャ様は奥様でよろしいですか?」
「「奥様?」」
「従者としてなら、そうお呼びするのが相応しいかと」
「確かに・・・」
「そ・そうね・・・」
「キュキュ!」
(僕は~?)
「この魔物は何と云う名前なのですか?可愛いですねぇ」
「あ~、こいつはイナリって言うんだけど、これでも聖獣の九尾の妖狐の子だから」
「せ・聖獣?」
「うん、そうだよ!」
「聖獣ですか・・・よろしく頼みますねイナリ!」
リンがイナリの頭を撫でようと近寄る。
そこでイナリがリンの頭にジャンプして、逆にリンの頭を手で押さえる。
「「「え?」」」
俺とアイシャとリンの声が同時に上がる。
「キュキュキュ!」
(イナリ『様』と呼ぶが良い)
「イナリ様と呼べと!」
「「え?言葉が分かるの?」」
「あ~ハイ!何となくですけど」
それは凄い!
実に助かる。
「キュキュキュ!」
(ようやく僕にも手下が出来た!)
「わ・私がイナリ様の手下?」
「キュ!」
(そうだよ!)
「いやいやいや、それはいくらなんでも・・・」
「キュキュキュキュキュ!」
(これでも僕は10年近くルークの相棒として一緒にいるのだ!
新しく仲間になった奴が偉そうに言うな)
「そ・それはそうですが・・・」
「キュ!」
(分かったな!)
「ハ・ハイ!」
「キュキュ!」
(分かればよろしい!)
「ど・どうしてこんな事に・・・」
途中から何を言っているかサッパリ分からんかったが、何か変な上下関係まで出来た様だな。
これからの道中は一層騒がしくなりそうだな・・・
次回『第104話:懐かしのカレーライス』をお楽しみに~^^ノ