第102話:新しき仲間
サブヒロイン登場^^
リアース歴3236年 12の月24日8時。
ダークエルフのリンは、お腹がいっぱいになると急に欠伸をし始めた。
そのまま寝かせると風邪を引いてしまうので、予備様に取っておいた昔使っていた外套をリンに渡し、取りあえず朝まで包まって寝ていろと命じた。
俺達も急に疲れがドッと出て来たので、今晩はエッチなしでそのまま寝た・・・当たり前か。
翌朝、朝ご飯の支度を終えたアイシャと一緒に仮牢屋に行く。
リンはまだ外套に包まったまま気持ち良さそうに眠っている。
ムニャムニャと言って随分余裕じゃねぇかこいつ。
それにしても、これからこいつをどうするべきか?
「リンちゃん朝よ、起きて!」
取りあえず交渉役のアイシャが仮牢屋の窓からリンに声を掛ける。
もそもそと起き上がったリンは頭を左右に振り仮牢屋の中を見渡す。
ね・寝ぼけてやがる!・・・熟睡していたとは良い度胸だなオイ。
「リンちゃん目が覚めた?今の状況が分かる?」
「あっ!」
急に険しい目つきになる。
ようやく自分が捕まっている事を思い出した様だな。
「わ・私を奴隷として売るつもりか?」
「「奴隷?」」
俺とアイシャは顔を見合って驚きの声を上げる。
「え?人族は私達ダークエルフを追い回して奴隷として売るんでしょ?」
「そ・そんな酷い事しないわよ!私達は冒険者。奴隷商人何かじゃないわよ」
「え?冒険者?奴隷商人?」
ん~、話が噛み合わないなぁ。
もしかしてこの子、人族は皆奴隷商人か何かと思っているのかねぇ?
「ここはリの国で奴隷廃止を宣言している国だ。君はそれを知っているかな?」
「リの国?」
「そう、ここはリの国のラウの大森林だ。それは分かる?」
「ラウの大森林?・・・マナの大森林じゃない?・・」
あっちゃ~、マジでこの子分かってない様だわ。
「ここはリの国のラウの大森林だよ。マナの大森林はこのウララ山脈を越えて向こう側のナの国だ」
「向こう側・・・」
「向こう側のナの国は奴隷制度が残っているけど、こっち側のリの国は奴隷廃止令によって奴隷は一人もいないよ。だから、奴隷として売られる事はないから安心して良いんだよ」
「奴隷が居ない国・・・」
「そう、ここは奴隷が居ない国だ!」
「君はここに迷いこんで来たのかな?」
「私は・・・」
俺達が奴隷商人でない事が分かってホッと一安心したリンは、自分のこれまでの事を少しずつ話し始めた。
彼女達一族はナの国の先にあるエルフの里から少し離れたウララ大山脈の中で生まれたそうだ。
エルフ族から迫害を受けていたダークエルフ達は誰からも助けて貰う事は出来ず、人族やエルフ族からも隠れて住んで来たらしい。
エルフを奴隷として売るために奴隷狩りをしていたナの国の奴隷商人達は、昨今は希少価値で高く売れるダークエルフをこぞって狩り出した。
奴隷商人の追ってを避け、次第に大山脈の奥へ奥へと移り住んで行くダークエルフ達。
大山脈の奥へ行くにしたがって危険な魔物も増えて来た。
1年前に住んでいた村が上級の魔物である一つ目のサイクロプスに襲われた。
村の長だった彼女の父は、皆を逃がすために盾となって死んだ。
彼女達一族は四散して逃げた。
彼女は母親と兄と共に大山脈の中を逃げた。
彼女達3人が逃げた先はマナの大森林であった。
そこでしばらくの間身を隠す事にしていた3人であったが、兄が一族の皆を探しに出掛けて行った。
兄が出掛けて行って間もなく、残されたリンと母親はブラックウルフの群れに襲われた。
命辛々逃げ出した二人は、再び大山脈を彷徨い、いつの間にか大山脈を抜けてこのラウの大森林まで来てしまったらしい。
逃げる道中で母親は深い傷を負い、それが元で2週間前に亡くなったらしい。
それからリンは一人でこの大森林で生きて来た。
頼る者などおらず、寒くて厳しい冬を危険なこの大森林を一人で・・・
リンが話終えると、アイシャが俺の目を見て何かを訴えかけて来た。
アイシャの言いたい事は言わなくても分かる。
アイシャの気持ちは分かるんだけど、本当にそれで良いの?
確かに可哀想だと俺も思うけどさぁ。
その場の感情で決めてしまって良いのかなぁ?
何だか凄い面倒事に巻き込まれそうな気がするなぁ。
アイシャが強い目で再び訴えかけて来る。
ハァー、分かったよ!
「ねぇ、リン!もし良かったらだけど俺達と一緒に来るか?」
「え?」
「まぁ、無理にとは言わないけど、このまま一人でここに隠れ住んでいても、たぶん遠くない未来に君は干からびちゃうと思うよ。
ここで出会ったのも何かの縁だ!まぁ、ず~っとと云う訳じゃなくてさ・・・お兄さんや一族の皆を探すために一緒に旅をすると考えたらどうだろうか?」
「兄や皆を探す・・・」
「俺達夫婦は今、珍しい物を見たり、いろいろな美味しい物を食べながら、世界を旅して回っているんだ。俺は貴族ではないけどそれなりに偉い人の後ろ盾があるし、それに多少の発言力もあるから君くらいなら護って上げる事は出来ると思う。
俺達夫婦の従者と云う形でも構わないなら一緒にどうだい?」
「いろいろな美味しい物?」
こいつ、お兄さんより食べ物で食付きやがったよ。
あぁ~あ、お兄さん可哀想に。
「これでも一応英雄様の端くれだもんね!」
「アイシャ!」
「ゴメ~ン!」
「英雄なのですか?」
「そうよ!エターナの小さな英雄。知らない?」
「知らない・・・」
まぁ、山奥や森で生きて来たのなら分かんないじゃないかな?
俺も英雄何て目で見られるのは嫌だし、その事は知らなくていいさ。
「アイシャの作る料理は珍しい物が多いし、とても美味しいぞ~」
「えっ、とても美味しい・・・ジュルリ!」
涎が出ていますよ~。
もしかしてアイシャの餌付けが効いている?
「あぁ、とっても美味しいぞ~!」
「い・一緒に行きます!」
釣れちゃった!
ちょっと残念なダークエルフの少女が釣れちゃったよ。
わ~、目がキラキラと輝いていらっしゃる。
こうして俺達は新しい仲間を得たのであった・・・
サブヒロインのリンちゃん登場回でした~^^
次回『第103話:忍者?』をお楽しみに~^^ノ