第101話:リン(挿絵あり)
今回そこ本当にサブヒロインの登場で~す^^
声だけではないので安心して下さいw
リアース歴3236年 12の月24日0時過ぎ。
日付が変わる頃の深夜に食料を盗みに来たと思われる犯人を仮牢屋に閉じ込める事に成功した俺達。
仮牢屋に窓を作り、その中の様子を見てみるとなんとダークエルフらしき女性が大泣きしているのであった。
「ウェ~ン!誇り高きダークエルフの戦士たる者が人族なんかに捕まるなんて、私のバカバカバカっ!
人族には気を付けなさいって、あれほど母様に言われていたのに~。
ヒック!・・・あぁ、私はいずれ奴隷として売られてしまうのね・・・ウェ~ン、嫌だよ~。
きっと豚の様に太った貴族に買われて、グルグル巻きにされた帯をクルクルクル~と取られて、『あ~れ~、お助けを~!』なんて言って処女を奪われるんだわ
そして『良いではないか良いではないか!』なんて言われて、あんな事をこんな事、恥ずかしい事もいっぱいさせられて『もう許して~、私壊れちゃう~!』なんて泣き叫ぶんだわきっと。
キャー、考えるだけでも顔が真っ赤になってしまうわ。
あぁ、なんて可哀想な私なのかしら・・・ウェ~ン!」
独り言を言いながら泣いているダークエルフの少女を見て絶句する俺達。
な・何だこの残念そうな妄想っ子は?
帯をクルクル~って悪代官と町娘じゃあるまいし、この世界にもそんなのあるんかね?
やけに濃いキャラが出て来たなぁ。
流石エルフ族だけあって見た目は綺麗だ・・・若干幼さがあるけど。
胸はCカップだと俺の『目ジャー』が言っている・・・これからの成長に期待大だな。
ん~、見た目や発言内容から考えてもまだ未成年っぽいけど、エルフ族はその見た目が当てにならないからなぁ。
実際に聞いてみないと分かんないか。
ん~、でもあまり関りたくないなぁ・・・
ダークエルフの少女が俺達の視線に気付いてこっちを見る。
カチン!
あっ、今俺達に見られていたと気付いて完全に固まったでしょ?
カチンと音がするくらい見事な固まりっぷりだね。
あぁ~、段々と顔が赤くなって来たねぇ。
そりゃあ、恥ずかしいよねぇ。
見事な自爆っぷりだもんねぇ。
あっ、プルプルと震えて来た。
そろそろ噴火するかな?
俺は両耳を手で塞ぐ。
「キャっ・キャっ・キャっ・キャーーーーーーーーーーーーー!」
セーフ!ハイ、見事に噴火しましたねぇ。
耳を押さえて正解でしたわ。
手で押さえているのに少しビリビリするよ。
あっ、イナリが気絶した!
聴覚が良すぎるのも考えもんだなぁ。
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏~♪
叫び声が収まって来たところで手を耳から話す。
「え~と、そろそろ落ち着いて話をしたいんだけど良いかな?」
我ながら落ち着いているなぁと自分で感心する俺。
「ハ・ハ・ハ・ハヒっ!」
あっ、今噛んだね。
噛んで恥ずかしそうにしている顔が可愛いじゃないか。
もう少し冷静になろうね・・・なれないか。
「君はダークエルフだね?」
「そ・そうだ・・・」
「やっぱりそうか。で、どうして俺達を襲ったの?」
「そ・それは・・・」
「食べ物?」
「ハ・ハイ・・・もう3日も食べていなくてつい・・・」
「幾らお腹が空いているからって、人を襲っちゃいけないなぁ」
「人族風情に言われたくはない!」
「人族だろうがエルフ族だろうが、他人の物を盗むのは良くないんじゃないかなぁ?」
「ゴ・ゴメンなさい・・・はぅぅ!」
あっ、やべっ!泣かしちゃった。
「もう、貴方ったらダメじゃない!」
「ゴメンちゃい!」
「私が変わるわ!」
「ハーイ!」
テヘペロ!
そんなつもりじゃなかったんよ。
「怖がらないで良いのよ!私の名前はアイシャ。貴女のお名前は?」
「リ・リン・・・」
「そう、リンさんね。リンさんは幾つ?」
「14歳・・・」
「14歳か、やっぱり年下だったのね。ではリンさん、いや、リンちゃんはこんな所に一人でいるのかしら?」
「リ・リンちゃん!」
「そう呼んではダメかしら?」
「嫌、別に構わないが・・・」
「では改めて聞くわね。リンちゃんはこんな所に一人でいるのかしら?」
「そ・そうだ!・・・母様が死んじゃったから・・・うぅぅ!」
あっ、又泣き出しそう。
アイシャだって泣かせたじゃんか~。
「あぁ、泣かないで!嫌な事を聞いてしまってゴメンなさいね」
「ヒック!・・・」
「お腹が空いているのよね?」
「そ・そうだ・・・」
「貴方、鍋に残っている雑炊を持って来て!」
「あぁ、分かった!」
俺は慌てて簡易型竪穴式住居の中に取りに走る。
お椀とスプーン、ついでに水の入った水筒も持って行こう。
左脇に水筒を挟み、手にスプーンを乗せたお椀と鍋を持って急いで仮牢屋へと戻る俺。
「暴れたりしないと誓えるならこの食べ物をリンちゃんに上げる。約束出来る?」
「い・良いのか?」
リンは目をまん丸にして驚く。
「約束出来るなら食べて良いよ!」
「分かった・・・暴れない・・・」
「この窓から渡すから、こっちに来て!」
「ハイ・・・」
リンはアイシャの手から鍋と水筒、お椀とスプーンを受け取る。
「食べる前にヒールの術を掛けさせてね。
弱った胃のまま食べると胃が受けつかないからね」
「わ・分かった・・・」
「我の願いを聞き届け、聖なる力を与え給え!傷つけられし指に癒す力を~!『ヒール!』」
アイシャはリンにヒールを掛ける。
アイシャの手から僅かな輝きが起こり、リンが驚く。
もしかしてヒールの術を始めて見たのかな?
「さぁ、これで良いわよ!」
「有難う・・・」
リンは仮牢屋の奥へ行って座る。
お椀に雑炊を注いでから、恐る恐る雑炊を口に運ぶ。
毒なんて入れてないぞ~!
「お・美味しい!」
リンの顔が雑炊の美味しさで蕩ける様な顔になる。
そこからは脇目も触れずにひたすら雑炊を食べまくる。
必死になって食べるリンの顔は涙で濡れていた・・・
次回『第102話:新しき仲間』をお楽しみ~^^ノ