第98話:旅の空
リアース歴3236年 11の月25日。
俺達は今ラドの町を出発して、次の町を目指して旅をしている。
当初、ラドの町に1週間ほど滞在する予定だった俺達であったが、滞在4日目にラドの町中であのお笑い盗賊団ダリア一家と遭遇したのだ。
イナリを狙っていたダリア一家は、何と俺達を追いかけてこの町までやって来ていたのだ。
根性あるねぇ~、執念だねぇ~、何だかやけくそだねぇ~。
連中の見た目はボロボロとなっており、苦労した感がありありと分かってしまう。
うぅ、思わず泣いてしまいそうだよ。
「や・やっと見つけわよ~!ここで会ったが100年目・・・」
ダリアが何かを叫んで近寄って来たけど、俺は土の精霊術で落とし穴を掘って連中を穴に落とす。
そして、その上から更に土を盛ってやり、首だけを出したまま生き埋めにしてあげる。
まるでドリフのコントを見ている様だよ。
君達は本当にお笑い盗賊団だねぇ。
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏~♪」
俺は連中に手を合わせる。
ん~、俺ってナイスな外道っぷりだなぁ。
フフフフフっ、これでも一応は手加減をしているんだけどね。
「ま・まだ死んでいないわよ!」
「しぶといねぇ~」
死んでいないのは分かっているよ。
手を合わせて唱えたのは冗談さ。
未だ特に君達に何かをされた訳ではないから、今はまだ殺さない様に手加減しているからね。
甘いと自分でも思う。
出来れば人は殺したくはないんだよ。
だけど、もし俺達に危害を加えようとしたら容赦はしない。
その時は本当に死んで貰う事になる。
アイシャには絶対手を出させやしない。
「ここから出しなさいよ~!」
「嫌だね!」
「キーーー!何時か聖獣を奪い取って、絶対に仕返ししてやるんだから~」
「ふっ!負け犬の遠吠えだな」
「ムキーーー!本当にムカつく!お前達、これを何とかしなさいよ」
「「無理ですよ!」げすよ!」
「アハハハハ!じゃあ又な。もう追いかけて来るなよ」
「ま・待ちなさいよ~~~・・・…」
その後も連中は何やらギャーギャーと喚いていた様だけど、俺達はその隙に逃げ出した。
慌ただしく宿に戻った俺達は、本当ならば護衛依頼でもしながら次の町を目指したかったが、仕方がなくその日の内に次の町目指して飛び出したのだった。
俺達が今目指している町はラウの町だ。
ラドの町から東の方に向かって2~3週間くらいの距離の町だ。
ラドの町がラウの大森林の西の入り口拠点ならば、ラウの町はラウの大森林の東の入り口拠点であり、ラドの町同様に冒険者の町として栄えているらしい。
ラウの町を目指す理由としては、ラドの町に一番近い大きな町であり、尚且つ冒険者稼業として少し稼ぎたいと云うのが主な理由であるが、実はラウの町の南方にはラウの滝がある。
ラウの滝とはウララ大山脈から流れ出る水が高さ100mから落ちる大滝であり、世界の絶景スポットの内の一つとしても有名な滝なのだ。
世界を見て旅するつもりならば、是非にでも見なければなるまい。
そう云う理由もあって、俺達はラウの町を目指しているのだ。
家族だけの旅が始まって3日目。
11月下旬とあって道中は寒い。
それでも、レッドベアの変異種の皮で作った外套に忍ばせてあるホッカイロの様な魔石のお陰で身体は暖かい。
寒いのは顔だけだ。
家族だけの旅路は、護衛依頼の時とは違ってとても気楽だ。
他人に気遣う必要もないし、休み休み自分達のペースで進む事が出来る。
危険を察知しながら旅をしなければならないのは同じなのだが、俺達にはイナリがいるし、何かあれば馬型鉄人君の俊足で逃げれば良い。
道中、狩りや薬草摘みをしながらと進ん行く俺達。
空に流れる雲の様に俺達の旅路もゆっくりとしている。
この3日間、小さな村を2つほど通り過ぎたけど、俺達は村に泊まる事はせすに野宿をして来た。
ラドの町であまり稼げなかった事もあって出費を抑える理由もあったけど、たぶんダリア一家が追って来ているので、身を隠す意味合いの方が理由としては大きい。
3日もあれば野宿をするのは慣れました。
土の精霊術で作る簡易的な竪穴式住居は、見た目は完全に自然に溶け込んでいるので敵からは目視ではそう簡単に分からない様になっている。
広さは四畳半くらいあるので一晩寝るだけなら快適な広さだし、壁は厚くて頑丈な土壁なので耐久力も問題ない。
まぁ、ハンナ師匠直伝の魔物除けの薬も撒いてあるし、たとえ何者かが近付いて来たとしてもイナリの鼻と耳で先に察知する事が出来るので特に心配していない。
不意打ちで襲われる事自体は全く皆無であろう。
そう云う理由から、夜は安心して睡眠出来てい・・・ないかな。
エッチな事を毎晩しているので、どちらかと言えば寝不足気味です。
野宿でもエッチをするって、やっぱり俺は猿なのか・・・
旅の途中の食事は、アイシャが懐かしの前世の味の手料理を振舞ってくれるのでとても嬉しい。
あまり凝った物は出来ないけど、俺の舌を感激させてくれる物ばかりだ。
昨日、お昼に食べた焼きおにぎりは、余りの懐かしさと美味しさで涙が出て来ちゃったよ。
米もどきや調味料のお陰じゃのう。
重たい物をワザワザ持ってまで旅をしている甲斐がるってもんさ。
そんな訳で衣食住になんら不自由しない家族だけの旅路を満喫している俺達であった・・・
次回『第99話:気配』をお楽しみに~^^ノ