散歩
ほぼ毎日一時間あまり散歩を続けている。
それは特に体のためではなく、一日の自分に対して振り返る時間という美しい表現としておこうか。
ここ10年間続けているのだが、ここ千葉県で連続的に始められたのは去年の10月からと少し新しく、昼と夜に見る情景がここまで違うのかとまた改めて感動しながら過ごしている。
毎日微妙に違う経路を選ぶのであるが、この季節、水を張る田に蛙の鳴き声がなり始めていた。
これは地元愛媛でも同じ感覚で少し懐かしく、水を張る田が天を移す光景など美しい景色を堪能できて感無量であった。
雨の後とあって独自の香りが胸に広がり、心も癒す。
懸命に生きた一日の癒しがこれであり、そんな中色々な想いを馳せながらその一時間余りを楽しんでいるのである。
新たな小説のプロットを考えつつ、これまでの事を憂い、これからの事を想う。この先の事を考えても致し方がないが、考えなければならない性分はいいのか悪いのか…。
悪いに決まっている。これから先の事など考えても仕方がないし埒が明かない。考えるだけ無駄な話で、なるようにしかならないのはこれまでも同じことだったではないか。
今を楽しむ。それだけ胸にあればいい。
そんな下らない事を改めて思い返しながら歩を進ませていた。
闇に移る風に揺れる林が美しく、さわさわとなる竹林と蛙の声。そしてのろのろと流れていく雲を眺めながらなんとなく思ったこと。
群青が見たい。
次の休みには海を眺めに行こう。昔は徒歩十五分の所に海があった為、あまりそのような衝動には至らなかったのだが、最近やけに海が恋しい。
生まれ育った環境にやはり想いが戻るのか。そんな衝動の中、今の生活がどう変わっていくのか。どう変えられるのか。
もしかすると私が持つこれからの課題はそこにあるのかもしれない。
目を閉じると浮かんでくる瀬戸内の海はこれから出会うすべての海よりも美しいと切なく想う日も近いのかもしれない。