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039 空いろのくれよん/どう見ても泥棒だな

 それは、猫暦九百七十年四月二日の午前十時ジャスト、伴内が白玉研究所の事務室で、書類の整理をしていた時の事だった。突如、研究所の外にあるガレージの方で、鉄板をハンマーで叩くかのような、けたたましい物音がし始めたのだ。

(シラタマさんは研究室の中にいる筈だし、千風は仕事に出掛けてる筈だから、いる筈が無い……って事は、まさか泥棒か?)

 伴内は緊張に身を震わせつつ、後ろのポケットから愛用のパチンコを取り出して、グリップを左手で握る。そして右前のポケットから、パチンコの弾として集めた小石を幾つか取り出し、何時でも小石を撃ち出せるように、ゴムの中央に小石の一つを装填する。

 物音を立てているのが泥棒であった場合、伴内はパチンコで撃退するつもりなのだ。パチンコは射程距離こそ長くは無いものの、短距離なら結構な威力と速度を誇るし、伴内の腕は、百発百中といっていい程の精度を誇るので、泥棒を撃退する程度の役目は、パチンコを手にした伴内には、果たせる自信があった。

 伴内は窓から、外の様子を窺う。かなり大柄……背の高さこそ千風と同等だが、かなりでっぷりと太った感じの猫人が、ガレージのシャッターを、ハンマー……というよりは、巨大な木槌のようなもので叩き壊そうとしている光景が、伴内の目に映る。

(こりゃ、どう見ても泥棒だな)

 真っ赤なアロハシャツを着た、灰色の髪の毛の猫人を、泥棒だと判断した伴内は、物音を立てないようにドアを開けて、研究所の家屋から出ると、植木に身を隠しながら、忍び足でアロハシャツの猫人に近づいて行く……背後から。

 気配を完全に消しつつ、背後から近付く伴内に、アロハシャツの猫人は気付かない。木槌による攻撃が間違っても届かないだろう、十メートル程の間合いを取った上で、伴内はパチンコを構えて、アロハシャツの猫人に声をかける。

「動くなっ! 動くと撃つぞ!」

 伴内の鋭い声で威圧され、アロハシャツの猫人は、びくっと身体を震わせる。

「――ちょっと待った! オイラは怪しいもんじゃないって!」

 アロハシャツの猫人は、慌てふためいたように後ろを振り返り、伴内に目をやる。

「く、熊?」

 伴内はアロハシャツの猫人を見て、驚きの声を上げる。伴内が熊と表現したのは、アロハシャツを着た太った猫人は、顔だけでなく全身が、熊のように毛だらけだったからである。まるで巨大な、目の細い猫のように。

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