021 春らんまん/人類は、俺独り?
「言っておくが、あたしの耳も尻尾も、偽物では無いぞ。あたしも千風も、仮装して他人を騙す程、暇人では無いからな」
「それは分ってます。さっき千風に尻尾を触らせて貰って、本物だって確認しましたから」
「千風に尻尾を触らせて貰った? ふーん、成る程ねぇ」
白玉は口元を歪め、意味深な笑みを千風に向ける。千風は、気まずそうに目線を白玉から逸らす。少し頬を染めながら。
「つまり、俺が生きていた時代からすると、遠い未来である……この時代の地球は、猫人の世界になっている訳? 人類は、俺独り?」
伴内は衝撃を受けながら、白玉に問いかける。過去から人間を輸入するという計画が頓挫し、猫を人類同等に改良する計画によって地球が再生された以上、人類は滅亡したまま、新たに補充されていない事になるからだ。
幾ら人間同等の猫人がいるとはいえ、地球上に人類が自分独りという状況に置かれるのは、伴内にとってはショックであった。
「いや、そんな事は無い。過去から人類を輸入する計画が頓挫した際、実験として開いた過去の時空との通路を、神々は閉鎖したのだが、その閉鎖作業が不完全でね。結果として、世界の様々な所に、著しく時空が不安定な空間が発生してしまったんだ」
窓の外に見える猫神の森を指差しながら、白玉は続ける。
「この辺りでいえば、あの猫神の森とかが、時空間が不安定な空間の代表例だね。この手の時空が不安定な場所では、突発的に過去の時空との通路が繋がり、こちらの時空のモノが過去に流されたり、こちらの時空に過去のモノが流されて来たりするんだ」
「猫神の森の場合、過去のモノが流されて来るのを猫神招き、こちらの時空のモノが過去に流されるのを、猫神隠しって言うんだよ。伴内の場合は、こちらの世界で言う所の、猫神招きに遭った訳だね」
千風が、白玉の説明を補足する。




