表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/250

188 風をあつめて/変態かと思ったら……

「――やぁ、猫街の諸君、お久し振りだね!」

 突如、朗々とした声が、夜空に響き渡る。声を発したのは、まるでテノール歌手のような良く響く声の持ち主だった。

 人々……煙によって視界を奪われていない人々は、一斉に声の発せられた方向に目をやる。声が発せられていたのは、神風神社の社殿の屋根の上である。

 屋根の上には、紫色のタキシードに身を包み、紫色のマントを羽織り、紫色のマスクを被った、背の高い猫人がいた。アイマスクで顔の上半分が隠されているが、二十代の青年に見える猫人である。

「諸君の前から、私が姿を消してから、結構な月日が過ぎ去っているので、ひょっとしたら私の事を、忘れてしまった人もいるかもしれない! 故に、一応は自己紹介をしておこう!」

 その紫色にこだわりがあるらしい猫人は、気取った態度と口調で、話を続ける。

「私は怪盗紫蝙蝠! 世界最高の大泥棒さ!」

「――何あれ? 趣味悪いファッション! 変態かと思ったら……あれが怪盗紫蝙蝠?」

 支那紋は呟くが、拡声器を手にしているので、その呟きは神風山全体に木霊する。

「あ、悪趣味? こ、この私が?」

 紫蝙蝠は一瞬、支那紋にファッションセンスを貶されて狼狽するが、すぐに自分を取り戻し、話を再開する。

「暫くの間、猫街を離れて世界中の街を巡り、お宝を盗み続けて来たが、猫街が恋しくなって来てね、戻って来たという訳なのさ!」

「いや、戻って来なくていいんだけど、誰もあんたなんか、有り難がって無いし」

 支那紋の呟きが、拡声器を通じて神風山に木霊する。境内にいる人々は同意するように頷き、紫蝙蝠は再度、精神的なダメージを受けて、たじろぐ。

「――とにかく、猫街に戻って来た記念として、この風祭りの夜に、光の風を集めるという言い伝えがある、神風神社のお宝……山吹車を頂戴して、私のコレクションに加えさせて貰う事にした訳なのだよ、猫街の諸君!」

 直後、風が神風神社の境内を吹き抜ける。風は祭壇周りの煙を吹き飛ばし、紫蝙蝠が手にしている、光り輝く風車を回転させる。他の風車は回転しても光っていないので、今の風が只の風である事と、只の風に吹かれているだけなのに光り輝いている、紫蝙蝠が手にしている風車が、山吹車である事は、誰の目にも明らかであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ