176 風をあつめて/猫街って、積極的な女の人が多いのか?
その後の四日間は、伴内も千風も休みを入れる事無く、働き続けた。伴内は猫街中を風車で飾って回り、千風は引き受けていた調査の仕事を続けていた。
仕事の合間などに、偶然……だったのかどうかは分らないのだが、出会った女友達や女性の知り合い数名に、伴内は風集めのパートナーになって欲しいとの誘いを受けた。しかし、パートナーという訳では無いのだけれど、千風と共に参加する事になっていると言って、その全ての誘いを断った。
ハジキからは、かなり際どい色仕掛け気味の誘い……というよりは誘惑を受けたのだが、伴内は理性を総動員して、何とか誘惑を拒絶する事に成功した。ハジキに連れられて入った個室の料理屋から、乱れた服装を直しながら逃げ出しつつ、伴内は自分で思っていた以上に、自分が欲望に流され難い人間だと、自覚したりもしたのだ。
「猫街って、積極的な女の人が多いのか?」
風祭りを翌日に控えた夜の仕事帰り、立ち寄った甘味処でイチゴシロップのかかったカキ氷をスプーンで崩しながら、伴内はドドンパに尋ねた。
「おめーが、そういう女に好かれやすいだけの話だってば」
メロンシロップのかかった、緑色のカキ氷の山を崩しつつ、ドドンパは笑いながら答えを返した。
「一夫多妻制にしないと女が余っちまう程度に、猫街は女の方が多いから、三十路近くになると、婚期を逃すまいと、矢鱈に積極的になる女もいるが、普通は男から誘うもんだぜ」
自分を誘って来た相手の年頃を、伴内は思い浮かべてみる。最年長でも二十五歳前後で、三十路近くという程では無い。
(まぁ、焦って積極的にという訳じゃないのかな)
心の中で、伴内は呟く。
「ドドンパは、自分から誘ったのか?」
「誰も誘いやしねーよ、オイラは風の神様に願い事を叶えてもらう為に、風集めに参加するんだから」
「ちなみに、どんな願い事?」
「借金完済!」
「――そいつは冒険者らしい、夢に溢れた願い事だな」
「皮肉言うなっての! 冒険者の夢……冒険に関する事は、神様に叶えてもらっちゃつまらねーから、冒険以外で解決した方がいい問題について、神頼みするんじゃねーかっ!」
「成る程、お前にはお前の美意識ってもんが、一応はあるんだな」
伴内は妙な感心の仕方をする。