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174 風をあつめて/あ……いや、その……デートの方が良かったか?

 開いた窓から、風が流れ込んでくる。テーブルの上に置かれた、海苔のスチール缶に挿してある風車が、風に吹かれて少しだけ回る。鉛筆立てとして利用してる円筒状の海苔の缶に、伴内は仕事で余った風車を一本、挿しておいたのである。

 回る風車を見たせいか、二人の話題は風集めについての事に、切り替わる。

「晩御飯の時とかに、ドドンパ達から風集めについて色々と聞いたんだけどさ、風集めって自動車とかの乗り物、使っちゃ駄目なんだってね」

「参加者が多いんで、自動車とかを使っていい事にすると、交通事故が多発しかねないから、禁止されてるんだ」

「他にも、色々と風集めに関する話聞いたんだけど、光の風集めるのって、凄く大変だったんだな。成功する参加者って、毎年五人も出ないって話じゃん」

「簡単には成功するようだったら、成功した人の願いを叶える風の神様が大変だから、難しいのは当たり前だよ」

「千風は、何度も成功してるんだよね?」

「過去に三回程……」

「凄いな……。そんな千風と一緒に参加出来るんだから、心強いよ」

「伴内は初めてだもんな。俺が出来る限りサポートするから、頑張って一緒に光の風を集めて、風の神様に願掛けしようね」

「――千風は、頑張って光の風を集めて、風の神様に願掛けするタイプの参加者なんだ」

 伴内の言葉を聞いて、千風は不思議そうに小首を傾げる。

「そうだけど……何で?」

「ドドンパ達が言ってたんだけど、風集めに参加する猫街の若い連中は、二つのタイプに分かれるんだって」

「二つのタイプ?」

「願掛けを目当てに、真剣に光の風を集めようとするタイプと、パートナーと二人で夜のデートを楽しむのが主な目的で、光の風を集めるのは、あくまでデートのついでって感じのタイプ……」

 本心では少しガッカリしているのだが、伴内は表には出さない。

「まぁ、千風が俺をデートに誘う訳が無いから、千風が真剣に光の風を集めようとするタイプだって事は、予想がついてたんだけどさ」

「え? あ……いや、その……デートの方が良かったか? だったら、俺は別にデートでも……」

 千風は少しうろたえながら、伴内に問いかける。頬が少し、赤く染まっている。

「いいよ、無理しないでも」

「別に、無理するつもりは……」

「――願掛け目当てに、真剣に光の風を集めるのも、面白そうだしね」

「あ、うん……面白いよ。大変だけど」

「本当に風の神様が願いを叶えてくれる事も、あるって噂だし……。俺も叶えて欲しい願い事があるから、頑張って光の風を集めてみるさ」

 濡れたグラスの表面を撫でながら、伴内は呟く。 

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