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131 あしたてんきになあれ/フォーメーション、絶対防御っ!

「いや、迷いの森の脅威からだけでなく、あの色魔の魔の手からも、私は貴女をお守り出来るんですッ!」

 茶虎は強い口調で、千風にアピールする。

「色魔の魔の手?」

 何の事だか分らない千風は、小首を傾げながら茶虎に問いかける。

「あのパチンコ魔のはいからさんの事ですよ! 街の噂じゃ、かなりの変態らしいじゃないですかっ!」

「色魔でパチンコ魔のはいからさんって……伴内の事?」

「そうです! 中学校に上がったばかりのいたいけな少女と、常日頃ベッドを共にしていると噂されている、ロリコンで変態の伴内の事です!」

 その噂の出所は、言うまでも無く支那紋である。ミケが伴内のベッドに潜り込みたがって困るという、千風や白玉が口にした愚痴が、伴内がミケとベッドを共にしているという話に支那紋によってアレンジされ、猫街の一部に広まったのだ。

 無論、支那紋発信のこの手の噂など、信じる者は殆どいない。ちなみに、噂のもう一人の主体であるミケは、昴百式の助手席で眠っている。来る途中に車の揺れが気持ちよかったらしく、眠りの世界に入ってしまったのだ。

「中学生の少女に手を出すような、見境の無い変態色魔の伴内を、貴女と二人っきりで夏を呼びに行かせる訳には行きません! この私が、あの変態色魔の魔の手から、貴女を守り通してみせましょう!」

「――誰が見境の無い変態色魔だ!」

 昴百式の反対側のドアから出て、千風の元に歩み寄って来た伴内が、不機嫌そうな口調で茶虎に言い放つ。ジーンズに長袖のダンガリーシャツ、ハイカットのトレッキングシューズという出で立ちの伴内は、デニム生地のリュックを背負っている。

 リュックの側面には、普段伴内が携帯しているものより、二回りほど大きな金属製のパチンコと、巻かれたロープがぶら下がっている。

 大きなパチンコを携帯した伴内の姿を目にして、茶虎はたじろぐが、すぐに立ち直る。

「出たな! パチンコを手にした変態色魔っ! だが、今日の私にはパチンコなど通じないっ! フォーメーション、絶対防御っ!」

 茶虎の命令を受けた、執事達やメイド達……茶虎組の面々は、茶虎の周囲に展開しつつ、リュックの肩ベルトを取っ手にして、鉄板で保護されている部分を外側に向けて盾とし、茶虎を護ろうとする。盾としても使えるリュックを手にした茶虎組の者達を、自分の周囲に展開させて身を護るフォーメーションが、絶対防御である。

「どうだ! この鉄壁のフォーメーション……絶対防御は! 既に私にとって、貴様のパチンコ攻撃などは、恐れるに足らぬものなのだっ! さぁ、撃つがいい!」

 胸を張る茶虎を見て、伴内は困ったように呟く。

「いや、犯罪者とかならパチンコで情け容赦無く撃つけど、たかが悪口言われた程度の事なら、パチンコで人を撃ったりしないし……俺」

 伴内の呟きを耳にした茶虎組の面々は、不要だと理解したのだろう、絶対防御を解除して、茶虎の背後に下がる。


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