128 あしたてんきになあれ/どうせ犯人は支那紋さ
「よう、伴内! 千風と一緒に、夏呼びに行くそうじゃないか!」
黄色いツナギに身を包んでいるドドンパが、運転席から伴内に声をかける。
「猫乃尾川の近くの人前で、自分で言っちまったようなもんだから、俺が行くって噂が流れているのは、おかしく無いけど、何で千風が一緒に行く事まで知ってるんだよ?」
右後ろのドアを開け、昴百式に乗り込みながら、伴内はドドンパに尋ねる。
「もう猫街中で噂になってるぜ。射的屋伴内が猫街王子と組んで夏呼びになって、迷いの森に入るって」
「――どうせ犯人は支那紋さ」
左後ろのドアを開けて、左側の後部座席に座った千風が、困ったもんだという雰囲気を態度に滲ませながら、言葉を続ける。
「伴内が夏呼びを引き受けたって噂を聞いた支那紋が、伴内だけで行くより、誰か一緒に行った方が話が面白いだろうからって、俺が一緒に行くって尾ひれを噂に付け足したんだろうよ。今回は珍しく、足した尾ひれが偶然に当たってただけの話で」
千風の推測通り、伴内と共に千風が夏を呼びに行くという尾ひれを噂に追加したのは、支那紋だった。ただ、今回の尾ひれは、偶然に当たった訳では無く、千風の伴内に対する感情を、ある程度支那紋が察していたが故に、伴内が行く以上、千風もついていくだろう事を推測出来たので、当たったのだ。
「オイラも一緒に連れて行けよ! 自動封筒、オイラも一回使ってみてえんだ! ちょうど自動封筒三枚に現金三百万、三人で分けるのにピッタリだぜ!」
「どうせ、連れて行かないって言っても、ついてくるつもりなんだろうが」
伴内の言葉を聞いたドドンパは、ニヤリと笑う。
「分ってるじゃないの、伴内!」
「理性や冷静さに欠けるドドンパじゃ、どうせ迷いの森に入った途端、すぐに悪魔の草にやられるだろうけどねぇ」
「伯母さん、酷ぇよ。オイラはそんなに頼りない男じゃ無いって!」
「どうだか……。とにかく、迷いの森に入るつもりなら、草が生えている高さを、絶対に見るんじゃないよ!」
「はいはい、分ってますってば! 悪魔の草を見なければ、迷いの森なんて、どうって事無いのよねーっと!」
気楽な口調のドドンパを見て、白玉は溜息を吐く。