127 あしたてんきになあれ/夏呼びの準備
結局、伴内は千風と共に、夏を呼ぶ為に迷いの森に行く事になった。二人は白玉に迷いの森や、夏を呼ぶ人類の遺産……シナツヒコに関する情報を教わりながら、迷いの森を進む為の荷物の準備を、ガレージの中で進める。
地図に雨具、タオルに懐中電灯、水筒に非常食などを、次々と伴内はリュックに詰め込むが、野山や森の中を歩く際、必須といえるコンパスは、今回は持って行かない。理由は、迷いの森の中ではコンパスがまともに動作しないと、白玉に教わったからだ。
コンパスだけではなく、ラジオや車などの精密機械は、迷いの森や……その上空では、使い物にならない。迷いの森の中から発せられている謎の波動のせいで、迷いの森の中及び上空では、機械が異常動作してしまうのが、その原因である。
それ故、迷いの森の中に車で入ったり、森の上空を飛行機で飛んで、シナツヒコに近付く事は不可能。夏呼びは迷いの森の中を、徒歩でシナツヒコを目指さなければならないのだ。
準備の最中、猫又学園の中等部から、部活動を終えて帰って来たミケが、自分も伴内達について行くと言い出したのだが、それは流石に白玉が断固として認めなかった。ミケは拗ねたように頬を膨らませながら、伴内の準備を手伝い始める。
「桑田さん達が猫街にいれば、前に夏呼びに成功した時の話を聞いて、参考に出来るんだけどねぇ……」
伴内達に持たせる道具などを準備しながら、白玉は残念そうに呟く。桑田家は梅雨前に、家族総出での長期旅行に出てしまったので、今は猫街にはいないのだ。
そして午後七時……準備を終えた伴内達が、ガレージの中で昴百式に、荷物を手にして乗り込もうとしている時、雨水を跳ね飛ばしながら土砂降りの中を突っ走って来た黄色い小型車が、ガレージの前で停車する。停車したのは、ドドンパの昴九十式だった。