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001 猫街より/変な封書

 生暖かい風が寂れた街を吹き抜ける、初夏の午後。小学校から帰って来たばかりの、やんちゃ坊主という表現が良く似合う、Tシャツに半ズボンという格好の男の子を、臙脂色のエプロン姿の母親が出迎え、声をかける。

「バンナイ!、あんた宛てに変な封書が届いてるんだけど……」

 そう言いながら、母親は息子にレトロな風合いの封筒を手渡す。

「変な封書?」

 バンナイと呼ばれた少年……大瀧伴内おおたきばんないは、母親である大瀧千鶴(ちづる)から受け取った封書を、しげしげと観察する。封書を包む封筒は、色褪せたセピア色の野暮ったいデザインであり、古い時代の映画でしか伴内は目にした事が無いタイポグラフィで、飾られている。

「確かに、何か見たことがない……珍しい感じの奴だね。レトロというか何というか」

 本来、切手が貼られている筈の部位には、魔法陣のような文様が描かれたシールが貼られているのに、伴内は気付く。

「切手じゃなくて、変なシールがはってあるし」

「見た目や切手のとこも変わってるけど、一番変なのは差出人なのよ」

「差出人?」

 千鶴の言葉を聞いて、伴内は封筒の裏面に記された、差出人の名前を確認する。確認して、伴内は驚きの表情を浮かべる。千鶴の言う通り、記されていた差出人の名前は、伴内にとって有り得ない筈の名前だったのだ。

「クロキチ?」

 封筒の裏面には、クロキチ……黒吉という名前が、差出人の名として記されていた。黒吉という名前には、伴内は一つだけしか心当たりが無い。

 焦ったように封筒の封を剥がし、伴内は中から一枚の便箋を取り出す。封筒と同じ、セピア色の便箋を。

 伴内は早速、便箋に目を通し始める……。



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