盗賊は最低だという奴らに対抗して最強になってみた
なあ、この世界で一番嫌われてる職業ってなんだと思う?
魔王?邪教徒?暴君?
いや、ただでさえ悪役臭溢れるこいつらでさえ嫌う職業がある。
それが、盗賊という職業だ。
それ職業なのかよ、とか、
ランクが一気に下がったな、とか、
いろいろ言いたい事もあるだろうけど、俺たちの世界じゃナンバーワン不人気、ワーストな職なわけだ。
嫌われてる訳はいろいろあるけど、一番の理由としてこんなもんがある。
なんか、やることが小さい、らしい。
そりゃあ、やることといっちゃあ盗むだけよ。ときどき商人の馬車襲ったりしてるけど、基本盗むだけだから。
魔王みたいに侵略をせず。
邪教徒みたいに邪神の復活を望んだりせず。
暴君みたいに圧政を強いたりしない。
なのに、こいつらより盗賊の地位は低い。
悪いかよ、やること小さかったら悪いのかよ!!
魔王よりましだろうがっ!!
邪教徒よりまともだろうがっ!!!!
暴君より正常だろうがぁぁぁぁっ!!!!!!
そんな世界に反抗するため、俺は最強になってみた。
「で、今現在百万人の兵士の注目の的です。ホントにありがとうございました」
いやね、最初はちょっとした遊び心だったんだ。
鍛えに鍛えた隠密で城にどのくらい潜入できるかなって、そう思った結果がこれだよ。
もうね、笑うしかねぇよ。
だってさ―――
たかが百万で(・・・・・・)、この俺を捕らえられると、おもっていることが。
「―――本当に、爆笑もんだぜ」
軍団はもう目と鼻の先。でも、これをやらなきゃ締まらない。
ゆっくりと、ゆったりと、腕を開き歩を進める。
「さあ」
仕事の、時間だ。
「略奪しよう、強奪しよう、窃盗しよう、強盗しよう。これから始まるのは戦いじゃない、争いじゃない。だからお前らに残るのは」
「薄汚ねぇ下着だけだ」
《盗賊王》グレイは、こうして今日も盗みを働く。