黄色いチューリップ
初めての投稿です。
一生懸命書きました。
それ程長くないので是非読んでください★感想くれると嬉しいです。
わたしはおばあちゃんが大好きです。私の名前もおばあちゃんが考えてくれました。4月の桜が咲いている頃に生まれたので「さくら」と名づけてくれました。私はおばあちゃんと一緒に住んでいました。毎日がとても楽しい日々でした。おばあちゃんはいつも美味しい肉じゃがを作ってくれます。冬になるとマフラーを編んでくれます。私が泣いていると「なくんじゃないよ」と私の涙を拭いてくれます。大好きなおばあちゃんが長生きできるように私はおばあちゃんにしてあげられることは全部してあげたいです。
教室中に拍手が鳴り響く。
今日は学校の作文発表会。私は小学4年生のさくら。私は田舎のおばあちゃんのところに住んでいたけれどお父さんの転勤で都会に引っ越してきた。私は小さい頃からおばあちゃんっ子だった。おばあちゃんが近所の農家に野菜をもらいに行くと言ったらどんなに眠くても疲れていても着いていった。私の住んでた家はおばあちゃんの家から5分くらいの所にあった。学校が終わると自分の家ではなくおばあちゃんの家に帰っていた。
お父さんの転勤の話を聞いたのはつい2週間前のこと。私はとても悲しくつらかった。また会えるとわかってはいたけれど今まで一緒にいた人と離れることはつらかった。
今日もあまり慣れていない学校から家へと帰る。雨が私のことをぬらす。
「お母さん。私の作文どうだった?」
「とても良かったわよ。私の大好きな人という題名でお母さんの前でおばあちゃんの事を読むとはね」
「ごめんなさい」
私とお母さんは昔から仲が良くない。私がおばあちゃんの所ばかり行くもんでそれが気に入らなかったのかもしれない。私は3人家族だが私の朝ごはんはいつもパンの耳。お母さんとお父さんはパンの白いフワフワしている部分を食べている。だから学校でパンが出る日は嬉しくなる。
今日も何事もなく学校が終わりいつもの帰り道を歩く。今日は太陽が眩しい。
家に着くとポストに一通の手紙が入っていた。前に図書カードが当たるキャンペーンとかなんとかでハガキを送ったっけ。とハッキリ言ってどうでもいい気持ちで差出人を見る。手書き。ところどころ変な癖のある字。・・・おばあちゃんだ。嬉しくて嬉しくて封筒をビリビリに破いて中を見た。
さくらへ
そちらの生活はどうですか?おばあちゃんはさくらがいなくなってから話す相手がいなくてとても寂しいです。来週は学校が3日間おやすみと聞きました。もう大きいのだから一人でも来れるでしょう。おいしい肉じゃがを作って待っています。そうそう、チューリップの球根があるので一緒に植えましょう。
おばあちゃんより
2週間会っていないだけなのにこんなに懐かしい気分になるとは。なんだか不思議な気持ちだった。
今週は休みが三日ある。ここの小学校は勉強に力を入れていて、テストが近くなると土曜日日曜日にプラスして月曜日も休みになる。今週はおばあちゃんに会いにいこう。手紙を読むと今すぐにでも飛んでいきたくなるほどおばあちゃんに会いたくなった。
家に入るとすぐおばあちゃんの家へ行く準備をした。お母さんには準備が全部済んでから伝えることにした。
おばあちゃんの住んでいるところまで行くのはそれ程遠くはない。私も電車くらい乗れるから一人でだって行ける。おばあちゃんの住んでいる田舎は寒いから暖かい格好をしていかなきゃ。パジャマも冬用のでいいかな。おばあちゃんの為にお花を摘んでいこう。
久しぶりにこんなにワクワクしている。こんなに楽しい気分は久しぶりだ。
「お母さん、私おばあちゃんの家に行ってくるから」
「勝手にしなさい。テストで悪い点数取ったら承知しないからね」
「はい」
相変わらずお母さんは怖い。性格が合う気が一切しない。本当だったらこのまま家出してしまいたい。
電車の切符を買う。
切符を改札口へ通す。
電車の窓側の席に座る。
隣の人がタバコ臭い。
気がつくと見慣れた風景。
そして優しい立ち姿のおばあちゃん。
驚いた。おばあちゃんが立っている。私は急いで電車を降り、おばあちゃんの元へと駆け寄った。
「おばあちゃん!!どうしたの!」
「さくらが来てくれると思って待っていたんだよ」
「すごい!おばあちゃんと私の心が繋がっているみたい!」
私は少し感動して涙が出そうになったけど恥ずかしいから上を向いて涙を引っ込めた。
おばあちゃんの家に着くまでにたくさん話した。私のクラスの友達のこと。この前の作文発表会でおばあちゃんの事を読んだこと。楽しい時間はあっという間に過ぎておばあちゃんの家に着いた。
おばあちゃんは休む間もなくエプロンをつけ料理の準備に取り掛かる。おばあちゃんは昔からとても働きものだ。少しくらい休んでもいいのに、と思うほどに。
おばあちゃんは冷蔵庫を開け材料を取り出す。
手を洗うのに蛇口をひねる。
野菜を切る音が台所中に響く。
私は居間のソファに座る。
飾られているおばあちゃんと私の写真を見る。
私は思い出す。
私が幼く、犬のことをワンワンと言っている頃。
「ねぇおばあちゃんはさぁ、魔法ちゅかいなの?」
おばあちゃんは、私がケガをすると「痛い痛いのとんでけ~」と言って私のケガを治してくれた。不思議なくらいに痛みは消えた。それが不思議でそう言ったのだろう。
「おばあちゃんは魔法つかいよぉ」
「ほんとぉ」
私はキャッキャしていた。本当におばあちゃんは魔法使いだと思った。そう思うと嬉しくて嬉しくて皆に自慢をして歩いたことも思い出す。でも今思うとおばあちゃんが子供の夢を壊さぬように言っただけの事だなと思う。
私はふざけておばあちゃんに尋ねる。
「ねぇおばあちゃんはさぁ、魔法使いなの?」
「おばあちゃんは魔法つかいよぉ」
何年か前のときと同じことを言っている。おばあちゃんは優しいな。私のおふざけにもノッてくれる。
「そっか!そうだよね!昔から言ってるもんね」
私はおばあちゃんが大好きだ。地球が終わる最後の日会いに行く人といったらおばあちゃんだろう。でもごめんね、おばあちゃん。あなたの言う魔法使いの話は信じる気持ちにはなれません。
気がつくと私は横になっていて私の体には毛布がかけられていた。
「起きたかい?」
いつもとは違う優しい声。そうかここはおばあちゃんの家だ。醤油の甘い臭いが私の食欲を誘う。
「うん。私おなか空いたな」
「よし、寝るのにも体力を使うから沢山食べれるねぇ。箸を持っておいで」
「寝る時に体力使うんだぁ」
だから朝起きたらお腹が空いているのか。夜寝ている時間が長いし。納得納得。そうしたら寝なければお腹は空かない・・・いやそれは違うな。
おばあちゃんは私の知らない事を知っている。そして教えてくれる。
キレイに掃除されている食器棚にある箸を取る。
席に戻る。
おばあちゃんを見る。
ニッコリと微笑んでいる。
私は胸がポカポカしてくる。
皿に盛られている肉じゃがに手を伸ばす。
芋がホクホクと熱い。
おばあちゃんの優しい味。
楽しい時間はあっという間。
いつも気づいたら朝。
こんな日々が続くのなら。
全部自分の思い通りにいくのなら。
どれだけの人が幸せになり
どれだけの人が不幸になるのだろう。
今日はとても天気が良い。最高気温らしい。
今日はおばあちゃんとチューリップを植える。おばあちゃんは帽子を被り、軍手をはいて私に向かって早く来るように、と手招きをしている。
「おばあちゃんの庭ってお花が沢山あるね。なんか赤い花ばかりだね」
「おばあちゃんは赤が好きなのよ。でもこのチューリップは黄色いのよ」
おばあちゃんは慣れた手つきで穴を掘る。私もおばあちゃんの手つきを見てそれを真似る。土は意外と固いものだ。掘るのにも結構な力がいる。
「球根を入れる時お願い事するのよ」
「なんでもいいの?」
「えぇ、願いが叶うとこのチューリップは枯れるんだって」
そんな不思議な花もあるんだ。私はもちろんおばあちゃんの長生きを願う。おばあちゃんが長生きしますように。球根を土に埋める。黄色いチューリップが咲いているのを想像しながら。
三日間なんてあっという間。帰ったらテストに向けて勉強か。おばあちゃんの家に住みたいな。おばあちゃんと暮らしたいな。
「何をボーっとしてるの?電車遅れるよ」
「あっうん大丈夫」
おばあちゃんは電車の駅まで送ってくれた。私はおばあちゃんが寂しそうな顔をしている様に思えた。
「またおいでよ」
そう優しく言ってくれた。
電車の切符を買う。
窓側の席に座る。
隣の人の香水の臭いがきつい。
「ただいまぁ」
「おかえり、どうだった?楽しかったか?」
お父さんだ。珍しい。こんな早く帰っているとは。
お父さんは会社の社長。朝早くに出て行き、夜遅くに帰るから滅多に会えない。毎日素晴らしいほど一生懸命に働いている。さすがおばあちゃんの息子だ。といつも感心する。
「とっても楽しかったよ。おばあちゃんの肉じゃがは何回食べても飽きないね。お父さんはこんなに美味しい料理を毎日食べてたのよね。いいなぁ」
「ベタ褒めだなぁ」
お父さんは少し照れた様な顔で笑っている。お父さんもおばあちゃんが大好きなんだ。
「ねぇ、私さ、おばあちゃんに魔法使いなの、って尋ねるといつも「そうよ」って答えるんだよね」
「あぁお袋は昔からそうだよ。意外とノリが良いんだよな。もしかしたら本当にそうなのかもよ?」
「お父さんまでぇ」
こんな風に仲良く話すのは何日ぶりだろう。
私は夢を見た。おばあちゃんが病気になってしまう夢。正夢にならない事だけを願う。
電話が鳴っている。誰だろう。ベルが一回、二回そして三回目が鳴る。誰かとってよ。あ。今この家には私一人か。いけない、いけない。早く出なきゃ。
「もしもし」
電話の向こうの声はお父さんだ。とても焦っている。まさか・・・
「おばあちゃんが倒れた」
頭の中は真っ白だ。
昨日は元気に笑っていたおばあちゃんが倒れた―――
倒れたってどういうこと―――
倒れただけだよね―――
「今から向かえに行くから準備しておけ」
電話は切れた。
病院の人は一人でも多くの人を助けようと朝から晩まで動きっぱなし。病院の人はすごいと思う。命という大きなものの責任を背負い、その責任と戦っている。
おばあちゃんは階段で足を滑らせ落ちてしまって、骨折した。自分で救急車を呼ぼうと動いたがうまく動けず倒れて頭を打ったそうだ。
お父さんと先生が話している。まったく耳に入ってこない。聞いてたとしても私の頭じゃわからないような難しい事だらけだろう。
先生との話が終わったようだ。お父さんが難しい顔をしながらこっちへ来る。
「おばあちゃんすぐ治るんでしょ?」
「・・・骨折の方はすぐ治るって」
「方は、って何?頭だってぶつかっただけでしょ?また前みたくお話沢山できるんでしょ?」
お父さんはそれから一言も話さなかった。小学生の私でもこの状況はなんとなく読み取れる。
けど私は信じない。私は頑固な性格だ。自分の意見は絶対曲げない。いくら偉い人が何を言おうと私は自分の考えしか信じない。
おばあちゃんは入院することになった。病院の先生もおばあちゃんの病気を治すために全力を尽くしてくれる。私もできることはなんだってする。
私は学校が終わるとまずおばあちゃんの家へ行って私達の植えたチューリップに水をあげる。
早く咲くように。と。あの願い事が叶うように。と。
そして病院へと向かう。
患者の命を預かる責任と戦っている人達のいる病院へと。
おばあちゃんは三日間寝ているだけだ。きっと疲れていたんだろう。またすぐに目を覚まし私にニッコリと微笑んでくれる。私は毎日おばあちゃんの手を握り願っている。
おばあちゃんの手が少し動いた気がする。そして目がゆっくりと開く。
「さくら?」
私はニッコリ笑ってうなずいた。
今日も学校が終わりおばあちゃんの家へと向かう。
そして私達の植えたチューリップに水をあげる。
そして目を覚ましてくれたおばあちゃんのいる病院へと向かう。
おばあちゃんは頭を強く打ったせいであまり上手く喋れない。
だから私がメモ帳と鉛筆を持っていってお話をしている。
でも病院の人が喋れるようにリハビリをしてくれているから時々言葉を話す。
早く前のように話せるようになればいいな。
私の病院通いの生活が三ヶ月間続いた。
おばあちゃんは昔のように言葉を話せるまで回復した。
「さくら、ごめんね。おばあちゃん病気しちゃって」
「大丈夫だよ。すぐに治るから。そしたらまた肉じゃが作ってね」
おばあちゃんの優しい笑顔が私を元気にしてくれる。
今日も私はチューリップに水をやる。
黄色い蕾が顔を出した。
この前一緒に植えたチューリップ。
できれば二人で水をやりたかったな。
病院へと向かう。
「おばあちゃんはさぁ、魔法使いなんでしょ?じゃあおばあちゃんの病気治せないの?」
私はなんでこんな事を言ったのだろう、と後悔した。
「おばあちゃんはねぇ魔法使いだけど自分の体を治すことはできないんだよ・・・でも長生きできるようにきっと凄い魔法を使うよ」
おばあちゃんは毎日病気と闘っている。生きたいという強い気持ちと共に闘っている。
そんな強くて前向きなおばあちゃんが大好き。
今日はお父さんも病院に来ている。また先生と話があるみたいだ。
そしてお父さんが前と同じ様な顔をしてこっちへ向かってくる。
そして何かを話そうとしている。
私に難しい話しても無駄だからね―――
「あのな、おばあちゃんは足は完全に治った。今は喋れる様にもなった。ここまでの回復は普通の人ではあり得ない程まで回復したらしい」
「やっぱりね!だっておばあちゃんだもん!」
「でもな、頭を打ってしまったばかりに病気が悪化するかもしれないんだ。そして頭が麻痺してしまってついには体が動かなくなることもあり得るんだ」
「まだ起こってもいない事なんだから心配する必要なんてないでしょ。私はそんなの信じないから。今日だっておばあちゃんとお話したし」
「あぁ・・・。そうだな」
私に話してくれたのは先生から聞いた話じゃないんでしょ?
本当はもっと複雑で危ない状況なんでしょ?
でもお父さんの考えは正解だね。
私にいくら本当の事を長々と説明しても私は少しも信じなかったから。
そうしたらお父さんの話損。
時間の無駄でしかなかったもん。
今日もいつもと変わりない。
私の歩く道も私の考えることも。
今日の空は雲ひとつない。
おばあちゃんの家の庭には黄色い花が咲いていた。
嬉しくて嬉しくて涙がこみ上げる。
二人で願いをこめて植えた花。
花が咲いた。
真っ赤な花たちの中に二本の黄色い花。
私は早く枯れることを願う。
誰もが不思議がることだろう。
花が枯れろなど気持ち悪い考えだろう。
でも私は自分の考えを貫き通す。
これから私の願いに
早く枯れますように
と、追加される。
私は病院へと向かう。
いつもと変わりない私が
いつもと違う嬉しいニュースを持って。
「おばあちゃん!」
思いっきり扉をあける。返事はない。
寝てたのかな。こんな大きい声出したら起こしちゃう。
おばあちゃんの側へと寄る。
とても気持ちよさそうに眠っている。
なんだろう。紙に何か書かれている。
「ごめんね」
なんでだろう。
どうしてだろう。
信じていないよ。
何も悲しくなんかないよ。
だっておばあちゃんは絶対に死なないもん。
なんでだろう。
涙が溢れだしてくるよ。
おばあちゃん。
早く目を開けて「なくんじゃないよ」って涙を拭いてよ。
私は夢を見た。
黄色い1本のチューリップが枯れている。
きっと願いが叶うんだ。
そうだよね。おばあちゃんが死ぬはずないもんね。
目を開けようとする。
夢から覚めようとする。
私の泣いている声が聞こえる。
私だけじゃない。皆の泣き声や鼻をすする音が聞こえる。
でもどうして私はないているの。
私は今悲しくもないし泣いていないよ。
どうして皆泣いているの。
おばあちゃんは死んでしまったの?
お坊さんの声がする。
桜田ちえさんの葬式・・・
おばあちゃんの名前だ。
私は目を開けようとする。
しかし開ける事が出来ない。
どうして?
早くおばあちゃんを起こさなきゃ。
だから早く夢からさめなきゃ。
私はふと思い出す。
「でも長生きをするためにきっと凄い魔法を使うよ―――」
今なら信じられます。
あなたが魔法使いだということを。
そして今ならわかります。
「ごめんね」の本当の意味を。
おばあちゃんは本当に心の底から長生きしたかったんだね。
私はおばあちゃんが長生きするためにしてあげられることをしたんだね。
きっとこれでよかったんだよね。
皆はおばあちゃんが死んでしまったと思うでしょう。
そしてそれを信じない人なんていないでしょう。
私ではない私を私だと思うでしょう。
おばあちゃんは今も生きている。
私の丈夫な体と一緒に。
やっぱり私の考えは当たっていたんだ。
おばあちゃんは絶対に死なない―――
「ねぇ、おばあちゃんはさぁ魔法使いなの?」
「おばあちゃんは魔法つかいよぉ」
赤い花たちの中に一本の黄色い花が咲いている。