志希、再びオリパ沼へ
ママとの電話の翌日、志希は黙って天井を見つめていた。
「……20万は出せない、かぁ」
しばらく落ち込んでいた志希だが、数時間後には
“ピコン”とスマホが鳴る。
『志希、やっぱり少しだけ振り込んでおいたから。
困ったら言いなさいね』
志希は布団の中でガバッと起き上がる。
「……ママ、やっぱり優しい……!」
通知を見ながら、志希の頭の中で何かが弾ける。
「……これ、ちょっとだけなら……オリパ、いけるよね?」
“ちょっとだけ”
その言葉は、志希にとって魔法の呪文だった。
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志希はまた配信をつける。
「えへへ、今日はね……ママが“応援資金”くれたから、
ちょっとだけオリパ回すよ」
コメント欄はざわつく。
「また!?」
「志希ちゃん、昨日の反省は!?」
「ママ止めて……」
しかし志希は聞かない。
「いやいや、今日は違うの。
“勝てる気がする日”なんだよね」
その言葉、昨日も聞いた。
1万円。
「まあまあ、ウォーミングアップだし」
3万円。
「うーん……でも、まだ大丈夫」
5万円。
コメント欄が騒ぎ始める。
「志希、やめよ」
「ママのお金だよ!?」
「絶対後悔するって!」
志希はむっとする。
「なんでそんなに止めるの?
応援してよ、せっかくママがくれたんだから!」
リスナーは頭を抱える。
そして10万円。
画面に出たのは、またしても銀色の“ハズレ”。
志希は固まる。
コメント欄も固まる。
数秒の沈黙のあと、志希は小さくつぶやく。
「……ママのせいだよね、これ」
コメント欄が一斉にツッコむ。
「いや違う!」
「完全に自分で回したでしょ!」
「責任転嫁の天才か!?」
志希はふてくされたように椅子に沈む。
「だってさ……ママが優しいから……
つい、やっちゃうじゃん……」
その言い方が妙に子どもっぽくて、
リスナーは怒るより先に笑ってしまう。
「……でもさ、次こそ当たる気がするんだよね」
このセリフが出た瞬間、
リスナーは悟った。
この親子、永遠にループする。




