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志希、ママにお金をねだる

20万円をオリパで溶かし、配信で逆ギレしてしまった翌日。

志希(しき)は布団にくるまりながら、スマホを握りしめていた。


「……やばい。今月の生活費、ほぼないじゃん」


昨日のテンションのまま突っ走った結果がこれだ。

志希はため息をつきながら、連絡先の一番上にある“ママ”をタップする。


コール音が鳴る。

志希は心の準備をしながら、声を作る。


「……もしもし、ママ? あのね、ちょっと相談があってさ」


ママの声は落ち着いていた。


『どうしたの、志希。何かあったの?』


志希は一瞬ためらうが、勢いで押し切る。


「えっと……その……お金、貸してほしいんだよね」


『いくら?』


「……20万くらい」


電話の向こうが静かになる。

志希は慌てて言い訳を重ねる。


「いや、違うの! 必要経費っていうか! その……ちょっとした出費で……!」


『昨日の配信、見たわよ』


志希は固まった。


「……え、見てたの?」


『“リスナーのせいで負けた”って言ってたけど、あれ本気で言ってるの?』


志希は布団に潜りながら、声を小さくする。


「……半分くらいは本気……」


『志希。お金はね、感情で動かすとすぐ消えるの。

 あなたが困るのは見たくないけど、理由はちゃんと話しなさい』


志希は観念したように、ぽつりとつぶやく。


「……オリパで負けた。

 でも、当たる気がしたんだよ。

 みんな止めてくれたけど、なんか……止まらなかった」


少し間があって、ママは優しく言う。


『正直に言えたのは偉いわ。

 でも20万は出せない。

 その代わり、一緒に生活の見直しをしましょう。

 あなたが困らないようにね』


志希はしょんぼりしつつも、どこか安心したように息を吐く。


「……うん。ありがとう、ママ」


『それと、配信でリスナーさんに謝っておきなさいね』


志希は布団の中で顔を覆う。


「……わかった……やるよ……」



その夜。


志希はPCの前に座り、配信ソフトを立ち上げた。

画面が切り替わり、コメント欄がゆっくり流れ始める。


「お、来た」

「昨日の件か?」

「志希大丈夫?」

「荒れるかなこれ」


志希は喉が詰まるのを感じながら、マイクに向かって口を開いた。


「……あの、昨日は……ごめん」


コメントが一瞬止まり、すぐにまた流れ出す。


「素直でえらい」

「まああれは言いすぎだったな」

「オリパは魔物」

「次から気をつけて」


志希は胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。


「……うん。ほんとに、ごめん。

 みんな止めてくれてたのに、聞けなくて。

 なんか……当たる気がして……」


「わかる」

「生活費大丈夫?」

「無理すんなよ」


志希は苦笑しながら、正直に答えた。


「……あと……ママに怒られた」


「そりゃ怒られるわw」

「ママ正しい」

「ママに感謝しろ」


志希は肩の力が抜けていくのを感じた。


「……うん。ママがいなかったら、たぶん今もっとヤバかった。

 だから……これからはちゃんとする。

 オリパも……もうやめる」


コメント欄が励ましの言葉で埋まっていく。


「応援してるぞ」

「志希が元気ならそれでいい」

「また楽しく配信しよ」

「反省したならOK」


志希はようやく、心の底から息を吐いた。


「……ありがとう。みんな」


布団に潜り込むと、さっきまでの重さが嘘みたいに軽くなっていた。


「……明日から、ちゃんとしよ」


志希はそうつぶやき、ゆっくり目を閉じた。

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