志希、商業展開でコケる
ある日、志希がリビングでオリパサイトを眺めていると、
玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン。
ママが立ち上がる。
「来たわね。志希、ちょっと来なさい」
志希は嫌な予感を覚えながら玄関へ向かう。
そこには、例の“知り合い”のスーツの男が立っていた。
「志希ちゃん、久しぶりだね。
今日は君にプレゼントがあるんだ」
志希は首をかしげる。
「えっ……プレゼント……?」
男はスーツの内ポケットから、
新品のカードパックを取り出した。
『LEGENDS OF FORTUNE
(レジェンズ・オブ・フォーチュン)』
志希は眉をひそめてカードパックを見つめた。
「……何これ?」
男は得意げに答える。
「君のために作った“新カードゲーム”だよ」
「えっ!? 私のために!?」
志希は思わず声を上げた。
「もちろん。君の“運だけで勝つ才能”を見てね……
これは絶対に流行ると思ったんだ」
志希は震える。
「……私、そんな才能あったの……?」
弟が横から口を挟む。
「いや、あれはただの運だろ……」
そして新カードゲームのプロジェクトが始まる。
男は完全に本気だった。
その瞬間から、いくつもの作業が同時に動き出した。
・専用の公式サイト
・豪華なPV
・スターターセット
・大会予定
・プロモーションカード
普通なら数ヶ月かかるはずの工程なのに、
すべてが“異常なスピード”で準備されていく。
志希はただ、その流れを呆然と見つめるしかなかった。
「……なんか、すごいことになってる……」
ママは満足げに言う。
「あの人に頼めば、このくらいはすぐ動くのよ。昔からそういう人だから。」
志希は震える。
「……ママの人脈、怖い……」
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迎えた発売初日。
志希はワクワクしながらSNSを開いた。
「どれくらい売れたかな……?」
しかし、トレンドにはこう書かれていた。
『レジェンズ・オブ・フォーチュン、誰もルールを理解できない』
『カードの効果が長すぎる』
『スターターセットの時点で複雑すぎる』
『遊ぶ前に心が折れる』
志希は固まる。
「……え……?」
弟がスターターを開けて言う。
「志希、これ……
ルールブック100ページあるぞ」
志希は叫ぶ。
「100ページ!?
私、10ページでも無理なのに!!」
男は焦りながら言う。
「いや、志希ちゃんは“直感で”できると思って……」
志希は既に涙目。
「直感で100ページは無理だよ!!」
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そして発売記念大会の当日。
会場には……
3人しか来なかった。
会場を見渡した志希は、思わず声を漏らした。
「……えっ、3人……?」
男は額に手を当て、信じられないというように首を振る。
「……おかしいな。宣伝は完璧だったはずなんだが……」
弟はスターターの箱を抱えたまま、ため息をついた。
「いや、ルールが複雑すぎるんだよ」
志希は震える。
「……私のために作ったのに……
私が一番できないゲームになってる……」
そして志希は配信をつける。
「みんな……聞いて……
ママの知り合いが私のためにカードゲーム作ってくれたんだけど……
ルールが複雑すぎて……誰も遊べなかった……
大会も3人しか来なかった……
なんか……申し訳ない……」
コメント欄が爆発する。
「志希のために作ったのに志希ができないの草」
「100ページのルールブックは無理」
「ママの知り合い、方向性がズレてる」
「商業的にコケる未来しかなかった」
「志希の運ゲー特化を理解してない」
志希はふてくされながら言う。
「……でもさ……
オリパは簡単だし……
次こそ当たる気がするんだよね」
リスナーは悟った。
志希は今日もブレない。




