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志希、運だけの女

その日、志希(しき)はいつものように、

オリパで当てた戦利品のカードを机に広げていた。


「これが300円で……

 これはハズレで……

 これは中国語版だから価値低いし……」


完全に“金額”しか見ていない。


そこへ弟が通りかかり、カードをちらりと見て足を止める。


「志希、そのカード……ちょっと見せて」


志希はカードの束を適当に放り投げる。


「いいよ。どうせ全部安いやつだし」


弟はカードを手に取った瞬間、固まった。


「……志希、これ……

 大会で禁止が噂されてるカードだよ?」


志希はポテチを食べながら気の抜けた声で返す。


「え、そうなの?

 でも価値ついてないし……」


弟はさらに別のカードをめくり、顔色を変えていく。


「これも……これも……

 なんでこんなの持ってるの……?」


志希は首をかしげる。


「だってオリパで出たから……

 価値なかったから箱に突っ込んでただけだよ?」


弟は声を張り上げる。


「価値じゃなくて“性能”がヤバいんだよ!!

 志希、これ全部合わせたら“最強デッキ”作れるよ!!」


志希はぽかんとして呟く。


「え……そんなにヤバいの……?」



そこへ、昨日来た例のスーツの男がふらっと現れた。


「志希ちゃん、カード整理してるのかい?」


志希は気軽に答える。


「うん! 価値低いカードばっかりだけどね!」


男は一枚のカードを手に取り、目を細める。


「……これは……

 前回大会優勝者がメインデッキに採用していたカードだよ」


志希は思わず叫ぶ。


「えっ!? これ50円って書いてあったよ!?」


男は愉快そうに笑う。


「価値は“市場価格”じゃなくて“使い方”で決まるんだよ。

 君は……とんでもないものを持っている」


弟も真剣に頷く。


「志希、これ……

 普通にプロレベルのデッキ組めるよ……」


志希は震える。


「え……私……強いの……?」



男は少し声を落として志希に向き直る。


「志希ちゃん、今度の大会に出てみないかい? 優勝賞金は10万円だ」


その瞬間、志希は椅子から身を乗り出した。


「10万!? 出る!!」


横で聞いていた弟が慌てて止める。


「志希、ルール知らないだろ!」


志希はまったく気にしていない様子で胸を張る。


「大丈夫! なんとかなるよ!」


男はその無根拠な自信に、どこか楽しげな笑みを浮かべた。


「フッ……その自信、嫌いじゃないよ」


───────────────────────────────


大会当日。


志希はテーブルに着き、周囲を見回しながら不安げに口を開く。


「……あの……

 このゲームって……どうやって始めるの……?」


弟は頭を抱える。


「だから言っただろ!!」


周囲のプレイヤーがざわつく。


「え、あの子……“アルマ=ゼロ”持ってる……?」

「なんでそんなカード持ってるのにルール知らないの……?」

「大会運営の知り合いの子らしいぞ……」

「それはそれですごいな……」


志希の先攻で試合が開始されるが、まずターンの進め方がわからない。


「……これってどれを出せばいいの?」


対戦相手は困惑しながら答える。


「いや……相手の手札を見るのは禁止なので……」


志希はイライラし始め、声を荒げる。


「だーかーらー! どれ出せばいいか教えてよ!!

 初心者には優しくするのが役目でしょ!!」


一向に試合が進まない状況に耐えかねて、対戦相手がジャッジを呼ぶ。


審判は手札を確認し、静かに告げる。


「……志希さんの勝ちです」


志希は目を丸くする。


「えっ!? 勝ったの!? なんで!?」


審判は淡々と説明する。


「《零刻竜アルマ=ゼロ》と、

 《断ち割れた牙》《逆巻く尾骨》《虚ろなる心核》《折れた王角》。

 この5枚が手札に揃った時点で特殊勝利が確定します」


志希は驚いて叫ぶ。


「そんな強いの!? 50円だったのに!?」


弟は叫び返す。


「だから価値じゃなくて性能だって言ってるだろ!!」


ギャラリーのざわつきがさらに大きくなる。


「1ターン目に揃うの初めて見た……」

「完全に運だけで勝ってる……」

「いや、そういうゲームじゃねえから!!」


志希は気まずくなってその場から逃げ出した。


────────────────────────────────


そして志希は配信をつける。


「みんな……聞いて……

 私……価値ないと思ってたカード……

 全部めちゃくちゃ強かった……

 なんか……怖い……」


コメント欄が爆発する。


「志希、運だけで最強デッキ完成させてる」

「価値じゃなくて性能を見るべきだった」

「ママの知り合いがカードの流れまで操ってる説」

「志希、ルール知らないのに勝つの草」


志希はカードを抱えながら言う。


「……でもさ……

 強いカードいっぱいあるし……

 次こそ当たる気がするんだよね」


リスナーは悟った。


志希は今日もブレない。

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