表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/33

志希、カードゲームを知らない

その日、いつものように志希(しき)がリビングでオリパ開封動画を見ていると、玄関のチャイムが鳴った。


ピンポーン。


ママが立ち上がる。


「来たみたいね。」


志希は肩をピクッと揺らす。


「……誰が来たの……?」」


ママは穏やかに微笑む。


「あなたに用があるみたいよ。」


志希はぽかんとする。


「えっ……なんで……?」



ドアが開くと、スーツ姿の男が立っていた。柔らかい笑顔なのに、どこか“業界人”っぽい雰囲気がある。


「志希ちゃん、はじめまして。」


志希は固まる。


「……誰……?」


ママはさらっと言う。


「この人はね、

 “お金の流れ”を作っている人よ」


志希は叫ぶ。


「お金の流れ!?なんで家に来るの!?」


男は言う。


「いやいや、志希ちゃんの配信……いつも見てるんだよ。ウチとしてはすごく……助かってる。」


志希はぱちぱちと瞬きをする。


「助かってる……?」


男は意味深に微笑む。


「まあ……いろいろね。」


男はさらに続ける。


「それにね……志希ちゃんには“ドラゴンズ・オブ・エタニティ”をもっと知ってほしくてさ。」


志希は小さく首をかしげる。


「……ドラゴンズ・オブ・エタニティって……あのキラキラのカードの名前?」


男は固まる。


「いや……カード“ゲーム”のタイトル……」


志希は真剣に言う。


「カードって……開けるものじゃないの?」


男はママを見る。


「……この子……カードゲーム知らないの……?」


ママはコーヒーを飲みながら言う。


「志希は“開封”しか知らないのよ。」


男は震える。


「開封しか……?」



しばらく固まったあと、男は気を取り直すように咳払いした。


「えっと……実際に遊んでみたほうが早いかもしれない。」


男はカバンからカードデッキを取り出す。


「じゃあ、簡単な対戦を──」


志希は勢いよく遮る。


「分かった! どっちが“レアを引くか”勝負ね!!」


男:「いや違──」


志希:「せーのっ!!」


志希はデッキをシャッと引き抜き、1枚をめくる。


「おっ! キラキラしてる!! 私の勝ち!!」


男は頭を抱える。


「志希ちゃん、それ“ゲーム”じゃなくて“開封”……」


志希は胸を張る。


「カードは開けたら勝ちでしょ?」


男はママに助けを求めるように視線を送る。


ママは微笑む。


「志希は昔からこうなのよ。」


男はため息をつきながら言う。


「……まあいいや。志希ちゃんが楽しそうなら……(ゲームの説明は……今日は無理だな……)」


志希はさらにカードをめくる。


「見て! またキラキラ! 私、強いね!!」


男は笑うしかない。


「うん……強いね……(ゲームじゃないけど)」


───────────────────────────────────


ママがコーヒーを飲み終え、カップをテーブルに置いた。


「そろそろ時間じゃない?」


男は立ち上がり、志希に封筒を差し出した。


「志希ちゃん、今日はありがとう。これ、少ないけど“お礼”ね。」


志希は封筒を見て叫ぶ。


「えっ……お礼って、お金!? 私、何もしてないよ!?」


男は笑う。


「してるよ。志希ちゃんが……“オリパを楽しんでくれてる”だけで十分だよ。」


男は帰り際に言う。


「それと……いつか“ドラゴンズ・オブ・エタニティ”をちゃんと遊んでくれたら嬉しいな」


志希は不思議そうにつぶやく。


「……カードって……遊べるんだ……?」


ママは肩を叩く。


「志希はゆっくり覚えればいいのよ。」


───────────────────────────────────


そして志希は配信をつける。


「みんな……聞いて……。

 ママの知り合いが来て……

 “ドラゴンズ・オブ・エタニティをもっと知ってほしい”って言われて……。

 カードゲームって……遊ぶものらしい……。

 私、ずっと開封のことだと思ってた……」


コメント欄が爆発する。


「志希、ゲーム知らないの草」

「開封=ゲームは新ジャンル」

「志希の影響力だけは本物」

「その男絶対運営」


志希は封筒を抱えながら言う。


「……でもさ……今日もキラキラいっぱい引けたし……次こそ当たる気がするんだよね」


リスナーは悟った。


志希は今日もブレない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ