志希、警察署デビュー
中国語版レアカードを詐欺で失った翌日。
志希は布団の中で丸くなっていた。
「……8万……返ってこない……
私の……超級閃光龍……」
そこへママが部屋に入ってくる。
「志希、昨日の件だけどね……
警察に相談したほうがいいわよ」
志希は涙目でうなずく。
「うん……行ってくる……」
警察署にて。
志希は事情を説明し、
担当の警察官は静かにメモを取りながら聞いていた。
「……なるほど。
“支払い前に発送してほしい”と言われて送ってしまった、と」
志希はうつむく。
「……はい……」
警察官は優しく言う。
「実はね、こういう相談、すごく多いんだよ。
あなたみたいに“演出に弱いタイプ”は特に狙われやすい」
志希は胸を押さえる。
「演出……刺さる……」
警察官は続ける。
「もしよければ、警察庁の“詐欺対策教材”の
ダメな例として協力してくれないかな?
若い人に向けて、実例を紹介したいんだ」
志希は目を見開く。
「えっ……私が……教材に……?」
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そして教材撮影の日。
志希は警察署の会議室で、
カメラの前に座らされていた。
スタッフ:「では志希さん、
“絶対にやってはいけない行動”を再現してもらえますか?」
志希:「……はい……」
タイトル:
『ネット詐欺に遭わないために 〜由希(仮名)さんのケース〜』
ナレーション:
「由希さんは、レアカードを高額で売ろうとしていました。
しかし、評価ゼロのアカウントから“先に発送してほしい”と言われ……」
志希(再現演技):
「8万!? これは勝ち確だよね!」
ナレーション:
「由希さんは発送してしまいました。
これは絶対にやってはいけません。」
志希(再現演技):
「……これ、なみえのせいだよね……」
ナレーション:
「違います。」
撮影終了後。
警察官:「志希さん、ありがとう。
あなたの例は、きっと多くの若者の役に立つよ」
志希は複雑な顔で言う。
「……役に立つのは嬉しいけど……
私、全国に“ダメな例”として広まるの……?」
警察官:「安心して。名前は出さないから」
志希:「……よかった……」
そして志希は配信をつける。
「みんな……聞いて……
私……警察庁の教材になった……
“詐欺に遭う人の例”として……」
コメント欄が爆発する。
「草」
「全国デビューおめでとう」
「志希、ついに公的機関に認められた」
「ダメな方向で認められたの笑う」
志希はふてくされながら言う。
「……でもさ……
次こそ当たる気がするんだよね」
リスナーは悟った。
教材になっても志希は変わらない。




