表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/31

志希、オリパで散る

志希(しき)は普段から外に出るのも一苦労で、

生活の多くを家族──特に仲の良い弟に頼っていた。

そんな彼女が、珍しく気分が上向いた日があった。


「今日は……なんか、いける気がするんだよね」


弟はソファに座りながら、志希のスマホ画面を覗き込む。


「またオリパ?……まあ、付き合うけどさ」


志希はカードショップのオンラインオリパを開く。

画面の向こうでキラキラ光る“当たり枠”が、

彼女の胸を少しだけ高鳴らせた。


最初の1万円。

「まあまあ、こんなもんだよね」


弟はポテチをつまみながら言う。


「志希、こういうのは最初は出ないって」


次の1万円。

「うーん……でも、まだチャンスはあるし」


弟は眉をひそめる。


「いや、もうやめとこ? 絶対後悔するって」


しかし志希の指は止まらない。


気づけば3万、4万と吸い込まれていく。

志希は途中で止めようとするけれど、


「ここまで来たら……当てたいよね」


その気持ちが指を止められない。


弟は頭を抱える。


「志希……完全に沼ってるよ……」


そして5万円。最後のパックを開いた瞬間——


画面に出たのは、見慣れた“ハズレ枠”の銀色。


志希はしばらく固まっていた。

怒るでも泣くでもなく、ただぽつりと、


「……あはは。やっぱり、運って逃げ足速いんだね」


弟は心配そうに横を見る。


「志希……大丈夫?」


志希は肩をすくめて笑った。


「でもさ、ちょっとだけ楽しかったよ。

 負けたけど、今日は“挑戦できた日”だったから」


その笑顔は、勝ち負けとは別の意味で、

確かに前を向いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ