志希、オリパで散る
志希は普段から外に出るのも一苦労で、
生活の多くを家族──特に仲の良い弟に頼っていた。
そんな彼女が、珍しく気分が上向いた日があった。
「今日は……なんか、いける気がするんだよね」
弟はソファに座りながら、志希のスマホ画面を覗き込む。
「またオリパ?……まあ、付き合うけどさ」
志希はカードショップのオンラインオリパを開く。
画面の向こうでキラキラ光る“当たり枠”が、
彼女の胸を少しだけ高鳴らせた。
最初の1万円。
「まあまあ、こんなもんだよね」
弟はポテチをつまみながら言う。
「志希、こういうのは最初は出ないって」
次の1万円。
「うーん……でも、まだチャンスはあるし」
弟は眉をひそめる。
「いや、もうやめとこ? 絶対後悔するって」
しかし志希の指は止まらない。
気づけば3万、4万と吸い込まれていく。
志希は途中で止めようとするけれど、
「ここまで来たら……当てたいよね」
その気持ちが指を止められない。
弟は頭を抱える。
「志希……完全に沼ってるよ……」
そして5万円。最後のパックを開いた瞬間——
画面に出たのは、見慣れた“ハズレ枠”の銀色。
志希はしばらく固まっていた。
怒るでも泣くでもなく、ただぽつりと、
「……あはは。やっぱり、運って逃げ足速いんだね」
弟は心配そうに横を見る。
「志希……大丈夫?」
志希は肩をすくめて笑った。
「でもさ、ちょっとだけ楽しかったよ。
負けたけど、今日は“挑戦できた日”だったから」
その笑顔は、勝ち負けとは別の意味で、
確かに前を向いていた。




