8 審判者
「呪いの原因も犯人も、なぜこのようなことになったのかも今はまだ分かっておりません。とても民に慕われているお方ですが、皇帝というだけで命を狙う者はたくさんいます。そのため容疑者が絞り切れないのですよ。毒を盛った、刺客を向けたというようなタイプの暗殺未遂ならすぐに犯人が分かるのですが……力不足はこちらも痛感しております」
「そうですか……」
彼の言う通りだ。黒曜の側近達が主人の危機を知って何もしないはずがない。原因や犯人が分かっていればとっくに何とかしているだろう。動揺のあまり少し考えれば分かることばかり聞いてしまった。
宴の最中、霜が黒曜を凝視していたのは呪いが見えたからなのだろうか。式神だからといって人間とは違ったものが見えるというわけでもないはずだが……
「話を遮ってしまってごめんなさい。説明の続きをお願いします」
「はい。今代の皇后選定のテーマは『皇帝陛下の呪いについて』になります。これをどう捉えるかは皆様次第です」
これは何というか、随分とあやふやなお題だ。前置きから考えて『皇帝の呪いを解くこと』なのではないかと蓮華は予想したが、そうではないらしい。二年かかって解けなかったのだから皇后選定の短期間で解決するとは思えないのだろう。当然だ。
とはいえ、もう少し範囲を絞った方が公平ではあると思う。『呪いを解除すること』『呪いの原因を突き止めること』などと言わず、あえて自分で考えさせることで判断材料を増やそうとしているのかもしれないが……
「期間は一ヶ月を予定しておりますが、多少前後する可能性もあります。ご了承くださいませ。それでは健闘をお祈りしております」
本日はお集まりいただきありがとうございました、と拱手する黒曜の側近。袖で顔を隠したまま、自分の園へ帰って行く大輪の華を見送る彼の目は、皇帝と共に皇后に相応しい妃を見極める審判者の色をしていた。
「────華黒曜皇帝陛下。今代の華はどれも歴史に名を遺せる者ばかりです。個性も溢れている。どのような結果になるか、とても楽しみですね」
全員が去った後、顔を上げた黎邦は楽しそうに口角を上げたが、すぐに体調を崩している主人のことを思い出して気持ちを切り替え、その場を後にした。
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