6 美と才が集う園
宴も終盤になり、先ほどから少しずつ退出する人が増えてきた。四夫人は最後まで残るよう皇帝の側近から言われているので、蓮華もまだしばらくここにいることになるだろう。
────賢妃、雪璃の後に声を掛けてきた徳妃の夢鈴。彼女は蓮華よりも二歳年上らしいが、とても小柄なのでどちらかと言えば蓮華の妹に見える。それを本人も分かっているのか、初対面で『お姉様』と呼ばれた。朱色の混ざった金髪にルビーの瞳で、頭には代々徳妃に受け継がれている冠や、繊細で美しい金木製の飾りも付けている。身に纏っているのも徳妃の禁色である朱色の衣。
容姿は言うまでもなく、話し始めたら彼女の世界に引き込まれてしまうような美しい鈴音の声も持っている。『甘えん坊で末っ子気質』。これが彼女の武器なのだろうが、蓮華から見た感じだと計算八割、素が二割と言ったところ。しかし何だかんだ言って最後はみんなにかわいがられていそうだ。
「蓮華様、入内早々他の四夫人に絡まれているようですが大丈夫ですか?」
「問題ないわ、面白いから。それに見かけがどうであれ、あの皇帝陛下が選ぶほどの方なのだから全員馬鹿じゃない」
『それどころか今代の四夫人は国内きっての才女が集っているようだ』
「淑妃様は書、徳妃の夢鈴様は楽器、賢妃の雪璃様は舞が得意だったかしら? そしてわたくしは能力」
そして笑顔と体を動かすこと。他の四夫人のように貴族女性の嗜みは特に突出したものはないが、代わりに能力だけは名を持つ朱夢鈴より上の位に選ばれるほどの淑妃よりもさらに強い。笑顔は偽物感がなく面倒なことやその時誤魔化したいことを自然に乗り切ることができる程度で、運動は田舎住みの自他共に認めるお転婆だから得意だ。皇后不向き選定ならば四夫人に限らず、後宮内すべての妃を集めても優勝できると思う。
「また妙なことを考えておられますか?」
「どうかしらね。そろそろ時間だし、あなたはもう春麗宮に帰っていなさい」
「はい。霜様、蓮華様をよろしくお願い致しますね」
『任せろ』
ここからは四夫人と皇帝、そして皇帝の側近一名のみの時間となる。常時傍にいる式神は例外だ。そのため背後に控えていた侍女長を下がらせなければならない。余計な意味を含んでいるであろう言葉にムッとしたが、他の妃の前で醜態は晒せないため表面上は得意の笑顔で取り繕っておいた。
関係者以外が退出し、話を始めようとひとつのテーブルの周りに妃達が集められる。しかし、指示をする側近の耳元で皇帝黒曜は何かを囁いた。驚いた側近が一瞬、黒曜の爪先から頭のてっぺんまでを確認する。そして黒曜は自分と同じように口元を隠して何かを伝える側近に頷いた後、何も言わずに式神の龍を連れて宴の会場を出て行ってしまった。
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