54 お披露目の宴
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皇后選定開始からちょうどひと月が経過した今日、宮廷内では朝から多くの人物が駆け回っていた。それは蓮華の侍女達も例外ではない。今宵開かれる宴の主役のひとりである蓮華は全身余すことなく完璧に磨き上げられた。
今日の宴は皇后選定の結果をお披露目するものだ。一週間ほど前、黒曜の呪いを解呪した後蓮華達だけ先に結果を聞き、内密にだがすでに宮を移る準備も終わっている。結果を聞いた蓮華は解散の合図を聞いた後、それぞれ能力を返すと同時に後日礼の品を届けさせると伝えた。彼女達がいなければ解呪は難しかっただろう、ということで。
もちろん最初は遠慮されたが、そこは蓮華だ。持ち前の押しの強さで無事に了承、と頷かせて見せた。余談だが、蓮華の言葉に一番喜びを見せたのは雪璃の式神の緋月である。
『蓮華。緊張しているか?』
「ええ、少しだけ」
『……後悔は? もしもしていると言うのなら、我はいつでも蓮華を攫ってここから逃げ出せるぞ』
宴の会場に続々と人が集まってきているのが見て分かる。今日の参加者は下女も含む、宮廷内で働くすべての人。それから妃全員に重鎮。重鎮と言うことは当然、蓮華の家族も来ているはずだ。瑞家と朱家は万が一皇族たる華家の血が途絶えた場合、代わって皇族になることのできる唯一の存在だ。当然、皇族に次ぐ権力を持っている。
一ヶ月前と同じような景色なのに全然違う雰囲気を纏っている会場を見渡した蓮華は、ややあって姿を消したまま隣に座っていた霜に視線を向ける。
「大丈夫。これはわたくしが自分で選んだ未来だもの。けれど……そうね、百年後くらいかしら? まだ生きていたらお願いすることがあるかもしれないわね」
百年後と言えば、蓮華なら百十八歳になる。この国でそこまで長く生きた人は過去にいなかった。それでもその歴史を自分自身が塗り替えることがあったなら、愛する相棒との残された時間をこの鳥籠の外で堪能してみるのも楽しそうだ。だからそれまでは……愛する人の妃として、この後宮にいたいと思う。
「────これより、瑞朱華国の皇后及び四夫人のお披露目を始めます」
黒曜の側近、黎邦が会場全体に向けて声を掛ける。今日の司会進行は彼の仕事なのだそう。
実を言うと、すでにこの会場内にいるすべての者が結果を知っている。なぜなら今日は公式の場にも関わらず位の高い四夫人が先に入場しており、誰がどの席に着いているかが最初から見えていたからである。
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