47 解呪を始めましょう
◇
────それこそ、死の間際に立たされているかのように。ほんの一瞬でも気を抜けば蓮華の方が飲み込まれてしまいそうで。
四夫人、黒曜、そして黎邦に話した通りの作戦で、黒曜に掛けられた呪いを解呪するべく動き出す。芙蓉の強化能力だが、これはたしかに国内随一であること間違いなしだな、と思うほどに強力だった。恐らくすべての能力が通常時の三倍近くまで強化されている。朱夢鈴よりも位の高い淑妃に選ばれた理由が良く分かった。
賢妃雪璃の能力でこの場にいる全員をしっかり守護し、同時に黒曜の呪いを少しずつ引き剥がしていかなければならない。その方が効果が出やすいのではないかと言われたので、黒曜の肌に直接触れれば、前に触れた時と同じで蛇の紋様があるところだけひんやりと冷え切っている。彼の体温を全く感じない。
「なぜ、ここだけ熱を感じないのでしょうか……」
「さあな」
ちらりと視線を上げ、黒曜の方を見ればやはりその顔に表情はなく。……これは蓮華の予想だが、もしかすると彼は呪いを解呪できるとは思っておらず、早々に呪いについて考えるのをやめてしまったのかもしれない。だとしたらすごく悲しいな……などと思いながらそっと目を閉じる。
「そのまま手の位置を固定してください。大きく息を吸い込んで、ゆっくり吐きながら違和感を感じるところを探すのです」
雪璃の指示通り、深呼吸をしながら何かを探す。精神を安定させることも忘れずに。
蓮華は自身が持って生まれた能力を使うことで、他人の力を自分のものにできる。しかしそれは練習を重ねなければ使いこなせるはずもなく、だからこそ急ぐ今は使い慣れている者の言葉通りに能力を操るのだ。
芙蓉の『強化』は元々の力が強いのだろう。所有者の多い強化能力は蓮華も使ったことがあるので、その時の感覚を思い出すだけで上手くできた。しかし芙蓉ならばさらにこの倍くらいは効力を発揮できたのではないかと思う。芙蓉のすごいところは能力の『使いこなし』だから。
「……見つけました」
「では、その場所と手のひらで……そうですね……蛇の紋様を挟み込むように力を使ってみてください」
「はい」
今、雪璃が教えてくれているのは対象の物を引き剥がして閉じ込める方法だ。誰かを守る際に張る結界とは少し違う。彼女は初めてのことに迷いながらも簡単そうに指示するが、実行するにはかなりコツがいる。雪璃は普段、こんなに難しい能力を平気な顔で使っているのか。ただ結界を張るだけの何倍も難しいというのに。そもそも『違和感』を見つけること自体が難しかったし。
『んー、ちょっと違うかも。力の流し方が雪璃より下手だなぁ』
「ふんっ、当然よ。だってわたくしの能力だもの。何年も練習してきたわたくしと蓮華妃が同じレベルで使える方がおかしいわ」
「力の流し方、ですか?」
『うん。俺が希少種だからかな、たぶん他の式神には見えないものが見えるんだよ』
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