46 あの時の蓮華と同じ
「私は断れるはずもありません。どうぞ蓮華様のお好きなように」
一番最初に頷いたのは淑妃、芙蓉妃だった。彼女は今までのことを償うためか、少しでも解呪に役立てるよう先ほどから協力してくれている。
「ありがとうございます。軽く流れを説明しておきましょうか。まず、黒曜様の呪いはかなり強力なはずですので、芙蓉様の力で剥奪したすべての能力を強化します。そしてここからが本番。雪璃様の守護でこの場にいる全員を守り、同時に呪いを結界の中に閉じ込めます。そして夢鈴様の状態変化で呪いを浄化。最後に……」
「構いませんよ。私が本当に解呪できているか確認します」
「ありがとうございます、黎邦様」
黎邦は探知能力を持っている。ならばなぜ黒曜が呪われているのかと言えば、探知能力が発動するのは基本姿を消しているもののみだから。呪いになった生物は姿を消すことなく黒曜に近付けるだろう。体も小さいので視界にも入りにくいはずだ。だからあっさり呪いをかけてしまう。
余談だが、黒曜の腹から心臓に掛けて浮かんでいる紋様が蛇なのは、最初に呪いに利用された生物が蛇だったからだろうと芙蓉が話していた。これは夢鈴が怪しまれるように考えたわけではなく、本当に偶然だったとのこと。それを聞いた夢鈴はかわいらしい笑みで芙蓉に圧を掛けていた。
「待て、蓮華。剥奪はお前の寿命を一年縮めるのだろう。借用では駄目なのか?」
「はい、駄目ですね。芙蓉様のお力ですべての能力を強化しなければならないくらいなのです。強さが半減してしまう借用では恐らく意味がありません」
「お姉様。私も陛下と同じ意見ですわ」
「失礼ながらわたくしも。芙蓉妃だって、ああ言っていますが気にされているのでは?」
……ここは本当に後宮なのだろうか。いや、後宮だからこのような事件が起きているのだろうが……だとしても、今代の四夫人はかなり良い関係が築けていると言って良いだろう。普通は殺し合いをするような場なのだから、命の心配なんてしてもらえないものだ。
「お言葉ですが。たとえ瑞家の女であろうと、妃より皇帝の命が優先されるのは当然のことです」
皇帝の命以上に優先されるものはない。何か言いたげな霜の視線も、今だけは見ないふりをした。黒曜は────最初のお渡りの日、『黒曜様に生きてほしい』と言ったその時、黒曜の瞳に写っていた蓮華と同じ顔をしていた。
「陛下」
「…………」
「分かりました。わたくしの能力も預けますわ、蓮華妃。必ず陛下の呪いを解いてくださいませ」
「……私も。本当は嫌ですが。お姉様の命を代償になんて、絶対嫌に決まっていますが……っ! それでも私は……朱家の人間なので……」
三人全員から、了承を得られた。黒曜はまだ苦い顔をしているが蓮華達が勝手に話を進めているのでもう止められないと悟ったのか、諦めの表情を浮かべていた。
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