44 四夫人の能力
「……皇帝陛下。謝罪したくらいで許されるとは思っておりません。ですが……私の勝手な復讐心で大切な御身を傷付けてしまい、大変申し訳ございませんでした」
席を立ち、拱手するのではなく床に膝を付いて頭を下げる芙蓉。首を差し出すようなこの姿勢は、本来四夫人がするものではない。それどころか罪人でもなければこうはしないだろう。それでも今の彼女は罪人となった。そのため今できる中で最も正しい行動と言えるのだろう。
「謝罪はいい。それより、解呪の方法は」
「…………」
「芙蓉?」
「……わ、分かりません……っ!」
呪いを重ね掛けするくらいなのだ、解呪するつもりなど毛頭ないだろうから分からないのは当然。しかし彼女が分からないなら、他の人はもっと分からない。
「私は強化能力を使って蟲毒の毒性を強めていたのです。で、ですから本来の蟲毒よりもさらに強力だったはずで……普通なら一度目の呪いで即死していたと思います。陛下の場合、最初は何の影響もなかったと聞きましたがこの際ハッキリ言わせていただきますと、恐らく蟲毒の呪いをかける前からどこか異常ですね……」
私の能力がいかに優れているかはご存知のはず、と若干の怯えを含んだ表情で話す。もしかするとこれはずっと思っていたことなのかもしれない。一切の遠慮もなく告げている。
悪く言えば人間として異常、良く言えば人間の域を出るレベルのタフさ。こんなところだろうか?
蓮華も蓮華で皇帝のことを評しているとは思えないような失礼なことを考えているが、こちらは口に出していないので問題ないのだ。言葉にしなければ相手には伝わらない。
「呪いが強力ということは、つまり解呪も……」
「……難しい、ということになりますわよね」
パラパラとページを捲り、それぞれ持参してもらった蟲毒に関する資料を見るも、『蟲毒は解呪できない』『蟲毒に使った生物を殺す』などしか載っておらず、後者に関してはとっくに死んでいるので誤情報となる。きっと芙蓉の能力が強すぎて生物の方が耐えられなかったのだろう。
「ここだけの話で、絶対に他言無用で。夢鈴様と雪璃様がお持ちの能力も教えていただけませんか? 誰かの能力が役に立つ可能性もありますので……」
できればわたくしの能力は最終手段にしたいのですよ、と二人に能力を聞いてみる。すると彼女達は大々的に明かしているわけでもないが隠してもいないらしく、すんなり頷いてくれた。
「私の能力は『状態変化』というもので、具体的には悪い『気』を浄化したり、対象を破壊・再生することができます!」
浄化は回数制限はないが一時的に自分が痛みに苦しむことになる。一時的に、というのは何を浄化するかにもよる。破壊・再生はそれぞれ一日に一度まで、命を奪ったり蘇らせることはできない。
「わたくしは『守護』。使用制限はありませんが、精神を安定させないと結界が壊れてしまいます。また、能力者と相手の力量によっては物理的に壊されることも。わたくしの場合……そうですね、蓮華妃の式神ほどの大きさの熊が、五頭同時に襲い掛かってきたら壊れてしまうくらいでしょうか」
そして芙蓉は強化、黒曜は豊穣、黎邦は探知。恐らくだが、これらの能力を使って黒曜の呪いを解くことは不可能だろう。せめて組み合わせることができれば……そう考えたところで蓮華は諦めを含んだ溜め息を吐き、一瞬悩んだ後に彼らの顔を見渡した。
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