41 『私はすべてを受け止める』
「芙蓉様」
「…………」
「分かりました。では、他の証拠もいくつか提示しましょうね。この壺、発見した場所は清夏宮の床下です。蟲毒に使用した生物は、庭園のお花畑と小さな森の境目付近に生息していたのでしょう。式神の霜から清夏宮に怪しい場所があるというような報告を受けまして、調査させたのです」
蟲毒の効果は短期間なのではないかと蓮華は予想している。なぜなら同じような蟲毒に使われた痕跡のある壺が、見つけ出せただけで十、清夏宮から出てきたからだ。証拠となる物を破棄しなかったのは常にそれだけの呪いを作り続けていたからではないのか。
「また、芙蓉様が入内した時期と陛下が呪いにかかった時期は完全に一致します。そのため雪璃様や夢鈴様の犯行はあり得ない。当然わたくしも。雪璃様が言及してくださった通り、名を持つわたくし達と違ってあなた方は入内前に陛下とお会いすることはできない。そうでしょう?」
きっと芙蓉は入内してすぐ、最初の呪いを黒曜にかけた。それから完全に効果がなくなってしまう前に、何度も何度も重ね掛けをしたのだ。
「……芙蓉様」
「あなた正気……?」
「芙蓉様、何とか言ってください。それとも反証でもございますか?」
何を躊躇っているのだ。ここまで来たらもう隠すこともないだろうに。
終始血の気の引いた顔で手のひらを握りしめ、何か言いたげにしていた芙蓉。蓮華だけでなく夢鈴や雪璃にも軽蔑の視線を向けられた時、彼女は小さく微笑んで見せた。
「もし私が犯人ではないという証拠がある……と言ったら、蓮華様はどうしますか?」
「さらなる証拠を提示するだけです」
「……そうですか。瑞朱華国の後宮に来て、蓮華様はずっと私と仲良くしてくださっていましたよね。このことを知ってどう思いましたか?」
……それを。その話を、他でもない芙蓉が持ち掛けるのか。蓮華の初めての友人であった、芙蓉が。
言いたいことが溢れそうになり、ぎゅっと唇を引き結ぶ。口を開けば震えた息が漏れ、一度ゆっくり深呼吸した後にもう一度芙蓉を見れば、彼女は何の穢れもない透き通った瞳で、すべてを受け止めるとでも言わんばかりに真っすぐ蓮華の目を見ていた。
「わたっ……わたくし、は。確実な証拠を手にする直前まで、あなたを信じていました。わたくしが見てきた芙蓉様は誰かを傷付けるような人ではなかったから。最初に見つけた証拠は蟲毒に使われた痕跡のある壺です」
「…………」
「どう思ったか、ですって……? そんなものは、『悲しい』以外にあるはずがないでしょう……!?」
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