4 冬の妃は美しく輝く雪
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この度新たに入内した貴妃の瑞蓮華の歓迎、そして四夫人全員が揃ったことの祝いを兼ねた宴が始まった。上座に腰を下ろしているのは皇帝黒曜。
彼の両親である先帝と皇太后はすでに亡くなっている。皇太后は産後の肥立ちが悪く彼を産んだ約一ヶ月後に、先帝は約二年前黒曜が十八歳になる年の春に病気で。
そのため黒曜は若くして即位したわけだが、すぐに先代の後宮を解体して妃を総入れ替えしているため、入内の順による権力差などは今のところなさそうだ。
そんなわけで、現在宮殿で最も権力のあるお方の隣に座っているのは新参である蓮華。反対側に淑妃。そしてさらにその隣に徳妃と賢妃の席があった。
「はじめまして。二年前の冬、四夫人の中では二番目に入内しました。賢妃、雪璃でございます」
「ご挨拶ありがとうございます。わたくしは瑞蓮華と申します。新参者で至らぬ点も多いかと存じますが、どうぞよしなに」
各々挨拶周りや腹黒狸による化かし合いが始まった頃、ひとりの妃が蓮華の前に現れた。ここまでの時間で九嬪より下の者からは挨拶があったが、四夫人の中では彼女が最初である。
冬の妃と呼ばれることもある賢妃は彼女の禁色である白色の衣を着ていた。女性にしてはかなり背が高く見えるが、本人はそれを好ましく思っていないのか背は丸まっている。『雪』の文字が入った物静かな雰囲気の名前とは逆に、燃えるような真っ赤な髪と同じ色の吊り気味な目が特徴的だ。気難しそうな雰囲気を持っているな、というのが第一印象。
「お言葉ですがわたくし、あなたと仲良くするつもりはなくてよ。皇后の座を奪い合うライバルだから礼儀として挨拶に来たのです。せいぜい足元を掬われぬよう尽力してくださいませ」
「あらあら、それは残念です。でも後宮ですもの、お気持ちは分かりますわ」
「理解が早くて助かりますね。どこかの腹黒妖精とは大違い」
それでは、と喧嘩を売っておきながら律儀に頭を下げて去って行く賢妃に微笑み、蓮華は首を傾げる。『あの方、表面的な部分で誤解されることが多いのでは?』、と。まだ少ししか言葉を交わしていないので断言はできない。けれども蓮華は第一印象の通りでもあるが、同時に『律儀な人』と認識した。
「それにしても、『腹黒妖精』とは誰のことかしらね」
本当は分かっている。四夫人である彼女が同列のライバルとして見ている者など限られているのだから。その上で楽しんでいる蓮華は、後宮から出たいと言う割に陰謀渦巻く女の園で暮らすのに向いているように見えた。
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