39 ここは断罪の場である
「それで、蓮華様。蟲毒は呪術でしょう? この世界にそのようなものが存在するとは思えませんが」
最初に指摘したのは淑妃の芙蓉だ。夢鈴や雪璃も頷いており、その意見に同意していることが分かる。
「これはわたくしの予想ですが、恐らく蟲毒には能力も使用されています。この世界の人々が持つ能力は自身の式神と同じもので、式神は『神』の名が付く通り神聖な生き物。呪術というのは強い念や神秘的な力を利用したものだそうで、それはつまりわたくし達が所有する能力も含まれるのではないかと思います」
「言われてみればたしかに……強い念、というのは今回の場合陛下に対する恨みや憎しみの感情でしょうか。あれほど素晴らしいお方も中々おりませんのに、ふざけたことをする者もいるのですね。しかも陛下に近付くことのできる、わたくし達四人の中の誰かである可能性が高い、と……」
「本当は疑いたくありませんけれど、こればかりはこうして取り仕切ってくださっているお姉様も容疑者に含まれますわよ」
「ここにいない者の可能性もゼロとは言い切れませんが、その線は限りなく薄いですからね」
「ええ。それはわたくしも良く分かっております」
しかし今回の件については蓮華は犯人じゃない。蓮華はすでに黒曜に呪いを掛けた人物を知っている。悲しいことに四夫人のひとりだ。当然、証拠もすべて出揃っている。
まだ言っていなかったが、ここは断罪の場。今は涼しい顔をしている彼女も内心では焦っていることだろう。バレてしまっていた場合、どうやってこの場を切り抜けるか必死に考えを巡らせているはずだ。隠していたはずの壺を見つけ出されてしまっては、すでに逃げも隠れもできないようなものだが。
「ですがわたくし、ここにいるひとりが犯人であることを知っているのです。この壺が証拠にもなるでしょうしね。ですからひとつずつお話ししましょう?」
「……なぜそのように焦らすのです?」
「それは先に犯人の名を口にして、証拠もないのにと騒がれては面倒極まりないからです。それから陛下と黎邦様がここに来られるのを待っております。解呪方法を共に考えましょう、とお声掛けしまして」
疑いの視線を向けてきたのは、この後宮に来てからずっと蓮華を嫌っている様子の雪璃だ。せっかくの断罪なのだから、証拠も今の状況も経緯もすべて話し、完全に外堀を埋めてから犯人を明かしてやりたい。この国で最も尊ぶべき人物を何年もかけて苦しめてきたのだ。絶対に逃がさない、許すはずもない。覚悟してもらおう。せいぜいこの逃げ場のない密室で突破口を探してみるがいい。
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